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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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116 カタリナ 2


「ケミー待って。汗臭いのが移ると困る」


 ステラは両腕を突き出し、抱き着こうとするケミーを拒絶した。


「あ、そうだよね」


 ケミーは触れる直前で立ち止まると自身の脇の匂いを嗅ぎ始めた。


「そういうのは離れてからやってよー」


 ステラは心底嫌そうに、じと目を向ける。

 ピンク髪の女もこちらへ近づくとケミーに顔を向ける。


「ケミーちゃん、汗をいっぱい掻いたんだし水を飲んだ方がいいよ」


 その発言の後、キディアは椅子に置かれている液体の入った容器をケミーに渡した。


「これ飲んで」


「ありがとうキディア」


 ケミーは水を飲み始める。

 その間、ピンク髪の女はステラに視線を向けると恐る恐るといった感じで口を開く。


「……小さいね。何歳?」


 そりゃステラは子供だから小さいのは当然だと思うけど?

 ケミー達と同じ年だと思われてるのかな?


「11歳です。お姉さんは?」


「あ、そうだね、私も言わなきゃだね。私は27歳だよ」


「名前は? 私はステラ・プリマディオル、ケミーの友達です」


 ステラがそう言うとケミーが嬉しそうに大声をあげた。


「ステラちゃん! 私もステラちゃんのこと友達だと思ってるから!」


「う、うん。ありがとう」


「ケミーって明るくて面白いよね」


 ピンク髪のお姉さんは嬉しそうな笑顔と視線をケミーへ向けた。

 ステラがお姉さんの回答を黙って待っていると、お姉さんは謝ってから名乗った。


「あっごめん、自己紹介だったね。私はカタリナ・オーム。よろしくね……ス、ステラちゃん」


 カタリナは何故かステラの名前はむず痒そうに言った。


「よろしくお願いします。カタリナさん」


 ステラは握手を求めて手を差し出す。


「……小さい」


 カタリナはステラの手を握るとまたもそう呟いた。

 小さい言ってるけど、カタリナも大人な割には小柄な方だと思うけどね。


「ケミーちゃん、今日の稽古はもう終わりにする? まだ続ける?」


 カタリナはケミーに問いかける。

 ケミーはステラをチラッチラッと見て唸ってから答えた。


「うぅぅ……続ける!」


「じゃあ休憩した後で再開ね。私はちょっと昼ご飯食べに外に行ってくるよ」


 カタリナはそう言って門から出て行った。


「ごめんねステラちゃん。せっかく来てもらったのに……」


 ケミーが困った顔でステラに謝るとキディアがフォローを入れる。


「大丈夫だよケミー。私がステラちゃんの相手するから、ケミーは稽古に集中してもいいよ」


「ありがと、お願いね」


 少しでもケミーと一緒にいられるようにと休憩終わるまでの短い時間、3人で雑談などをした。


「ケミーちゃん、そろそろ稽古はじめようか」


 戻って来たカタリナがケミーに告げた。


「ステラちゃん、また来週ね」


 ケミーはステラに早めの別れの挨拶をすると稽古を始めた。


「ねぇステラちゃん、今日は何をしようか?」


 キディアが尋ねる。


「少しだけケミーの稽古を見させて」


 ステラは少しだけ稽古を見ることにした。

 ケミーが打ち込むとカタリナが容易く受け、次はカタリナがケミーに打ち込む。

 カタリナはケミーの駄目だった部分を指摘していく。


「ステラちゃん、ケミーは上手いかな?」


 キディアはステラに尋ねる。


「今のところは私の方が上かな。何年もやってるからね」


「ステラちゃんの動きも見てみたいなぁ、今度ケミーと試合するんだよね? 楽しみにしてるね」


「あんまり期待しすぎないでね、デシリ……じゃなくってもう一人の私と違って本物の私は年相応だしケミーと大して変わらないから」


 キディアは私がステラの中にいることを知っているけど、デシリアという名前を知らないためステラはもう一人のと言い直した。


 しばらく試合を見た後ステラとキディアはせっかくお互い休みが揃ってるため、出かけることにした。


 * * * * *


 先週も訪れた図書館に再び来た。


「わ~、中は涼しくて気持ちいいね」


 キディアはそう言うと暑そうにしていた表情が落ち着いた。

 一方ステラは感覚調整が出来るのでずっと平然としている。


「じゃあステラちゃん、私ちょっと本を取って来たいんだけど一緒に来る?」


(そういえばデシリアって世界地図が見たいとか言ってたよね?)


(でも別行動しちゃうと貴重なキディアとの時間を奪う事になるけどいいの?)


(本を取って来るのなんて一瞬なんだからいいよ)


(じゃあお言葉に甘えるね)


 私は私の故郷エルヴェクスタのある場所とエリンプスの町の場所を地図上で把握しておきたい。ステラが冒険者になった時にいつか訪ねてみたいと考えてるからだ。


 ステラが学校で使ってる教科書にはエリンプス町の案内図みたいのしか載ってないので書籍が大量にある図書館ならきっと世界地図が見られると思う。


「私も探してる本があるから、本を見つけたら合流しよ」


 ステラはキディアにそう伝えるとお互い別々に動き出した。

 ステラは図書館の職員に地図の本の場所を教えてもらい、本棚から本を取り適当な机に座った。

 ステラと交代した私は本をめくり、世界地図が記されたページで手を止める。


 世界の形は幸いにもパッと見では100万年前と形は大して変わってない。これならおおよそのエルヴェクスタの場所は分かりそうだ。


 まずはエリンプスを探すとしよう。


 地図には国境線らしき線が引かれ国名が大きく書かれている。エルヴェクスタはアレスティア国にはないようだ。


 国名以外には小さく主要都市の名称が大量に記されているけどエルヴェクスタという文字は見つけられなかった。


 ちなみにエルヴェクスタの大まかな位置はエイセントラールという国の北の方だ。その国はアレスティア北西に位置し隣国ではあるけども、山脈によって隔てられているっぽいので直線で行くのは難しいかもしれない。


 強引に直線で行こうと思えば行けなくも無いけど迷子になる可能性が高いだろう。


 行き方については後で考えるとしよう。


 本を元の位置に戻し、少し待つとキディアが本を持って戻って来た。

 ステラとキディアは本を読み合い楽しんだ後はまた町に繰り出していった。


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