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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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113 エドガーが手紙を受け取った後の話 2

 エドガーもそれに対して不満を訴える。


「いやいや、わざわざ俺は凄い仕事があるからって別の仕事を早めに切り上げてまで戻って来たんだけど?」


「そうですよ! エドガーを呼びに行けって言ったのはリーザさんでしょ? 私達無駄な時間を過ごしたことになるんだけど、お詫びの一つくらいはあってもいいんじゃないですか?」


 カリンもエドガーに同調し、お詫びを要求した。

 リーザは慣れてるのか顔色一つ変えずにすぐさま切り出す。


「ではこうしましょう。エドガー様を無事に連れて来たことに対する報酬を払います。本来予定していた依頼の半額になりますがこれでよろしいですか?」


 カリンはお詫びとしてキャンセル料的な物でも貰えればと思っていたが想定してた金額以上が提示されたことに驚く。


「は、半額も? 何もせずにそんなに? ……分かった、これで手を打ちます」


 半額とはいえ非常に大きな金額に対し思わず「そんなにはいらない」と言いそうになったのを飲み込み、それを受け入れた。

 リーザは相手が納得したのを確認し、予め用意してた札束を渡した。


「200万ルドかどうかしっかりご確認なさってください」


 200枚の紙の束、ピッタリ合ってたためリーザと男は店を出て行った。


「エドガーを呼ぶだけで200万ルドをポンっと払うなんて、あの人達は一体何者なんだ?」


 エドガーの仲間の20代後半ほどの男は、普通の仕事を1年働かないと得られない金額を躊躇なく出すリーザ達に興味と恐怖を抱いた。


 エドガーは若さゆえか大金が入ってラッキーくらいにしか思わなかった。そんなことよりも、とカリンに目を合わせる。


「ところでよ、依頼の話を聞かせるために俺も呼んだんだろ? あらかじめどんな内容かは聞いてなかったのか?」


「集まってから話すと言われてたから分からないよ。まぁ半額とはいえ全員集まっただけでお金貰えたし、よし! この話は終わりにしよう」


「なんだよ、聞いてなかったのか。半額でそれなら満額だと400万ルドだよな。それってランクAくらいの仕事だろ? 俺いらなくね?」


 エドガーはカリン以外にも顔を向けて反応を見てみるがなんとも曖昧な態度だけが返された。

 この話を終わらせたいカリンは話題を変えようとしてエドガーの食べかけの食事に目を付ける。


「そうだとしてもなくなった仕事の話をしても仕方ないよね。ってかさっさと食べないとそれ不味くなるよ」


「おっと、じゃあいただきます」


 エドガーはステラと親睦を深めるという仕事に影響が無さそうなことに安堵するとようやく料理に手を付け始めた。


 * * * * *


 リーザと男は店を出た後、少し歩いて近くの何かしらの専門店に入った。


「いらっしゃいませー」


「おはようございます」


 二人は客がいる中、店員に挨拶するとカウンターを通り、店の奥に堂々と入っていく。店員は止めない。なぜなら関係者だからだ。

 奥の地下に続く人気ひとけのない階段を下り、通路を進み、何もない壁で立ち止まる。


 リーザが壁に顔を近づけるとそれだけで壁は左右に開いた。二人は中へ入っていく。


 さらに進んで行くと、殺風景な広い空間が二人の前に現れた。


 二人は適当な場所で立ち止まるとポケットから小さな機械を取り出してそれを起動し、空中に表示された画面に文字を記し、任務が完了したことを伝える報告文を送信した。

 少し待つと新たに受信した文章に目を通す。


「エイルは今ステラと接触中の様です。上手く行ったみたいです。しかし私にはまだ次の指示はないみたいです」


「俺にも次の指示は来ていません」


 二人の任務はエドガーをステラから引き離すこと。カリンにエドガーを呼ぶための手紙を書かせ、その手紙をリーザがステラに会いに行くエイルへ渡し、そしてエイルがステラと一緒にいるエドガーに手紙を渡して引き離す。


 カリンは最初、手紙なんかよりも仲間で手分けして探して呼びに行くと言って書くことに難色を示したが、リーザが手紙を書くことに対しても高額の報酬を提示してきたためにカリンは怪訝に思いながらも書くことにした。


「もし、手紙なんか無くてもエドガーに上手く頼みごとをすればきっとすぐあの場を離れてくれたでしょう。それでも駄目ならステラが魔王エデルの影響下にあるかどうかなんて別の日に試せばいいだけです」


 この場にいるリーザと男もエイルや公園にいた撮影スタッフと同じく人間と違いが分からないほどにそっくりに作られた人型の非生命体である。ヒューマノイドと言えばいいだろうか、何者かに作られた存在である。


 人間とほぼ同じ質感をしており触っても違いは分からない。

 彼らに性別はなく感情はそれっぽく見せてるだけで存在しない。

 痛覚や触覚などの感覚は存在せず数字としてしか認識しない。痛覚の数字が大きければ痛そうに振る舞うなど人間らしい反応を示すこともできる。


 平常時はそうしている。


 エイルに命令を下したアルも同じ存在である。

 エリンプスにはそのような存在が数万体ほどが一般人に紛れ巡回警備をしており、戦闘能力は闇の勇者級で魔王級の脅威を警戒している。


「もしエイルが負けた場合、光の勇者の出番が久々に来るかもしれませんね。エデル以外の魔王級を相手にするのは彼らの役目。私達の役目は首都を狙う魔王級を発見することであり戦闘で勝利する事ではありません」


「なら次の指示は通常任務か、首都防衛のどちらかか」


 通常任務とは町人に紛れ込み、異変の察知や情報収集を行う事である。エイルやリーザ達は警察とは違うため犯罪などの取り締まりは基本的には行わない。


「指示があればすぐ動けるようにしばらくここで待機しましょう」


 二人はロッカーを開き、お互い目の前で私服のように見える服に着替え始める。二人は外見上は男と女に見えるが性別というものがなく恥ずかしいという感覚も無い。


 しばらくして通常任務の指示が出た二人は別々の出口から外に向かった。

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