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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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112 凍る湖 1


(ぎゃああああああ、デシリアー! なんで私、投げ飛ばされてるの~?!)


(私だって知りたいよ!)


 私は高速回転しながら公園から遠ざかっていく。視界はグルグルと回るけど平気だ。女が湖面を走って追いかけて来る姿が見える。シュールで面白い。


 私は陸地が遥か遠くにうっすらと見えるほど飛ばされ、徐々に水面に寄せられていく。湖に体が触れる直前、水面が一気に凍結した。


 私は回転した状態から器用に手足を動かし姿勢を整え、綺麗に着地する。


 女の姿を探すと目の前にすでに到着しており、私を見つめて立っていた。


 私は話しかける前にちらりと周囲を見回すと湖は視界に映る全てが氷の地面に変わっていた。おそらく目の前の女の仕業だろうけど魔術でやったのかな?


 というか投げ飛ばした相手にこんなに早く追いつくとはどれだけの実力があるのやら。


「湖が凍ってるけどお姉さんがやったの?」


「そうよ、やはり全然驚かないのね」


「お姉さんが私の実力に感づいてなかったら驚く演技くらいしたけど、その必要も無さそうだからね」


 普通の人なら視界いっぱいの湖が一瞬で凍れば驚くことだろう。でも私も同じことができるので驚くわけがない。ステラは驚いてたけどね。


「もしこの程度で驚かれるなら私がステラに構う必要などなかったわ。さっきも言った通り、あなたのその得体の知れない力の出所が知りたいの」


 女は淡々と言った。

 さすがに今日会ったばかりの怪しい人に私のことを知られたくないんだよね。信用も出来ないわけだし。だから今の所は教えるつもりは無い。


「お姉さん、魔法って知ってる? 私、魔法が使えるの。私が天才的な使い手なら魔法であの爆発を防げてもおかしくないよね?」


 私は手から一瞬だけ家を1軒飲み込めるほどの巨大な炎を出す。

 それを見た女の反応は薄い。


「なるほど、魔法なら力の理由に説明が付くわね。だがそれで納得するわけがないでしょ?」


「じゃあどうやったら納得するの?」


「私に大人しく殺されてくれれば納得してあげるわ!」


 直後、女は凄い勢いで飛び込んできた。

 そして私の目の前に手のひらを向け、光線を放つ。詠唱が無かったので魔法かな?


 私はそれを難なく避ける。食らったとしても身体強化してるから大丈夫な気はするけど、一応避けてみた。


「死ねと言われて死ぬ人なんかいないよ!」


 私はツッコミを入れながら瞬時に女の腕を掴んで背負うように投げ、氷の地面に優しく叩き付ける。

 女は叩き付けられても効いてないとばかりに表情など一切変わらない。


「それに力の出所がーとか言ってるけどさ、そんなもの戦って分かるものなの?」


 私には分からないけどこの女ならもしかしたら分かる方法があるのかも。

 私は女に追撃はせず距離を置き様子を見る。女はすぐに立ち上がると質問に答えた。


「戦った所で力の出所なんて分からないわ」


「はい?」


「でも例外がある。あなたがその例外なら私の本気をぶつければその力の正体が分かるわ、きっとね!」


 女は距離を開けると右手の手刀を空に向け構え、そして手の先から光る刃の様な物を出現させる。


 その光の長さは10m近くあるだろうか。それを私目掛けて高速で振り回し始める。氷の地面は切り裂かれ氷の粉塵が舞う。


 それと同時に足場が一瞬だけ揺れ動き地面は形を大きく変える。しかしすぐに凍って固定されるため大きくは揺れない。


「さぁ、正体を表しなさい!」


 女が叫ぶけど私の正体を明かすわけにはいかない。

 私は迫る光の刃を紙一重で避けていく。余裕で見切れる速度なので焦る必要も無い。


 魔王シェダールよりも圧倒的な速度の動き。それだけで殺意がハッキリと伝わる。ってことはこの女、闇の勇者以上の実力があるかも?


 もしかしてこの女も勇者なのか?


 そんなことを考えてると女は私のことをこう予想してきた。


「なぜ私の攻撃を避けれる……やはり、お前はエデルの……」


 女は予想というか確信してるみたいだけど、私はエデルじゃないから外れだ。どこを見てそう思ったのやら。


「私、エデルとかいう人じゃないから!」


 私は否定はするけど反撃はせず攻撃を避けていく。すると女はもう片方の手からも光の刃を作り出し、2本の刃を振り回し始める。

 キラキラ光る粉塵が霧のように視界を染めていく。


「あなたがエデルじゃないことくらい知ってるわ」


「じゃあもう解放してよ、何がしたいのさ!」


「見てれば分かる」


 女は私から距離を開けたまま、光の刃を振り回し続け、意味不明な事を言い続ける。


「愚かなエルフはもういない! この意味が分かる?」


「分からない」


 ステラはエルフの事を知らないためその意味をしる以前の問題だ。だから私はそう答えざるを得ない。

 じゃあエルフである私はその問いの意味を理解できてるかというとそうでもない。


「無駄なのよ、あなたが戦う意味はもう無いわ」


 戦いを仕掛けて来た側が私にそう言った。

 仕掛けて来たのはそちらのはずでは???


「お姉さんさっきから何を言ってるの?!」


「あなたには言ってないわ」


 ということはステラにではなく取り憑いている私にか? でも私の名前はまだ出て来ていないし、私は戦争の経験が無いから関係ないはず。

 ということは私以外の誰かに呼び掛けてる?


 チッピィにも私みたいな恐らく人族が憑依していたし、もしかしたらそれと同じようなのが戦争の時代に居て、しかも今の時代も存在していてまた戦争を起こそうとしているってこと?


 その人の名がエデルってこと? でもさっき私が「エデルじゃない」と否定したら「そんなことは知っている」と言っていたし私がエデルではないことを知ってるってことだよね?


 あああ、なんか頭が混乱してきた。


 とにかくさっさと終わらせたい。女を倒すか? いや、倒したらステラはこの町で平穏に生活できなくなるかもしれない。

 女が納得するまで付き合うしかないか?


「力の正体を知ったらどうするの? お姉さんの予想しているのとは違うと思うよ?」


 私は超高速の斬撃を躱しながら不安定な氷の地面を駆け回る。


 さて、どうしたもんか。

 攻撃を楽々と受け止めて力の差を分からせれば相手の諦めが付くかも? などと思いながらとりあえず返事を待つ。


「だが、それ以外は考えられない。いや、それ以外の可能性も……あるのか?」


 女はそう自問自答しつつも攻撃の手を緩めない。が、これ以上激しさを増すことも無い。


 私は手に纏った障壁魔法で相手の刃を受け止める。障壁に僅かに食い込むくらいの威力はあったけど体には全く届かなかった。


「この程度じゃ私には勝てないよ。手加減してるの?」


 これで本気なら時間の無駄だ。だからさっさと終わらせたいと思ってる私は女に告げた。

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