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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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110 尋問 1

「レンゼイ村は覚えてる?」


 女が見せたその写真は私が魔王シェダールと戦った時に出来たものだと思われる。


 なぜそれを持ってるのか? 

 なぜそんなことを聞いてきたのか?


 面倒事に巻き込まれる予感しかない。


「レンゼイ村? うーん、ごめんなさい知りません」


 ステラは苦笑いで答えた。

 レンゼイ村といえば様々な研究施設やクロエのいた村だ。


 2日くらいしかいなかったし名前だけ言われてもステラは思い出せなくて仕方がないかもしれない。


(ねぇデシリア。あの写真ってアレを思い出すよね。前に魔王とかいう変な人と戦った時の)


 魔王シェダールと戦った際、相手の自爆で出来た大穴のことを言ってるのだろう。そして女がレンゼイ村と言ってる辺りアレを私がやったのではないか? と疑ってるのかもしれない。


(ステラ、私の事は絶対口に出さないように、力のこともね)


(分かった)


 私は女に視線を向ける。

 女は新たに写真を取り出し、こちらに向けた。


 次の写真はステラ、ルイザ、ケミー、キディアの4人。顔までハッキリと映っており周囲の建物から場所はレンゼイ村だというのが分かる。


 細かく言うとドミニオンという何でも売ってるお店に向かう途中にある坂道だ。


 なんでこんな写真を持っているんだろう?

 私達に気づかれずにどうやってこれを作ったんだろう?


 ステラもそう思ったのか写真を訝し気に見つめる。

 女は質問を続ける。


「その写真の場所に見覚えあるでしょ?」


「はい、見覚えがあります」


「レンゼイ村には様々な研究施設があるのだけど、覚えはない?」


「え、えーっと……あ! あそこか!」


「思い出してくれた?」


「はい! ……あの、その村がどうかしたんですか? というか私がその村にいたことを知ってたんですか?」


「村自体はどうでもいいわ。最初の写真に戻すわね」


 女は大穴の空いた大地の写真を再び見せる。


「これはレンゼイ村で見つかった大穴。夜中に大爆発が起きて出来たらしく、真っ暗な中での出来事だったから目撃者はいないみたい」


「は、はぁ……」


「この爆発を起こしたのはあなたでしょ?」


「え?! ち、違う違う、違います! 私じゃないです!」


 ステラは目が泳ぐほどの焦りを見せ、強く否定した。


「なぜ慌ててるの?」


 女は冷静に指摘した。


「え、あ、だってその爆発を起こしたのは――」


「知ってるのね?」


「え? あっ……」


 ステラは回答にしくじったことを自覚し言葉に詰まる。知ってる者がいないはずなのにステラが知ってたら不自然だ。


 もし正直に答えれば相手はどんな反応を示すだろうか?

 私がどう対応すればいいか考えていると私が指示を出す前にステラは答えた。


「いえ……知らないです。噂で聞いただけなので本当かは分からないですよ?」


 どうにか誤魔化した。


「なぜ本当の事を隠すの?」


 疑いの目を緩めない女は片方の手をこちらへと伸ばしステラの腕を掴んだ。


「へ?」


「目撃者がいないというのは嘘よ。だからあの爆発を起こしたのがあなたじゃないのも知ってる。でもね、爆発の中心にあなたがルイザと一緒にいたのは知ってるのよ?」


「え?」


 女は困惑するステラの首を掴み力を込めた。

 私は身体強化で守りだけを固める。


「な、なんでこんなことするの? 離して!」


 ステラは相手の腕を掴み外そうと試みるけど腕力までは強化してないので外れない。ステラが同年代の子達より力があるとはいえ大人に勝つのは厳しいようだ。


(デシリア!)


 ステラが筋力も強化しろとばかりの強い語気で訴えて来るけど周囲には撮影スタッフがいるので力を見せたくはない。

 

 ……っていうかこっちは首を絞められてるのに何で誰も止めに入ろうとしない?


 どうやらこの女と周囲に撮影スタッフは繋がっているようだ。ちなみに一般人は誘導されたのかそれらしい人は近くにいない。


「あなたはただの子供じゃない。ルイザもね。さて、いくつか聞かせて欲しいのだけどレンゼイ村であなたが戦った相手は誰?」


「え? えーっと……」


(デシリア、私忘れたから代わりに答えてくれる?)


 私はステラと交代した。何かあったときにすぐ対処できるからその方がいいだろう。


 さて、この女が何者で目的も分からないけど、とりあえずはステラの裏に隠れている私のことを口に出さないようにしよう。


「あの、私が戦ったのはなんとかスライムっていう魔物だけですよ?」


「そんなはずはない。村の名前を忘れることはあってもあれだけの規模の戦闘を忘れるはずがないでしょ。さぁ答えなさい。答えなければ最悪死ぬわよ?」


 女は手に力を込めていく。しかし私の身体強化による防御を崩すには程遠い。


「なんでこんなことをするんですか? あなたは何者?」


「その質問に答える必要は無い。あなたは私の質問に答えるしか助かる道は無い」


 手に力が込められていく。


「さぁ、答えなさい。あなたが戦っていた相手の名前を」


「……」


「なぜ答えない?」


 女の手に力が込められていくが私にはまだ全く効果が無い。


「これだけ力を込めてるのに手応えがないのね。並の人ならとっくに頭と胴体が切り離されるほどの力なのだけど……予想通りただの子供ではないようね」


 言ってることが本当ならこちらの実力が相手には見抜かれているということになる。


 目の前の黙って見ている撮影スタッフ達もそうかもしれない。つまりステラが大声で助けを求めても周囲にいるのは女の仲間なので誰も助けてはくれないのだろう。

 遠くで撮影を眺めている野次馬に助けを求めても撮影中なので演技だと思われて放置されそうだ。


 ちなみに私が助けを求めたい理由は力を見せずにこの状態を脱したいからであって自力でどうにかできないからではない。


「ねぇ、何が目的なの?」


 私が質問するけど女は無視し、こちらに質問を繰り返す。


「さぁ、答えなさい。あの時あなたが戦ってた相手のことを」


 とりあえず何か返して反応を見るか。


「戦ってないから知らない」


「嘘を吐いても無駄よ?」


 より力が込められていく。

 こちらの実力は把握されてるみたいだし力づくで解除して逃げるか? 逃げた所でまたどこかで追い詰められるかもしれないことを考えるとここでどうにか収めた方が後々面倒事にならずに済むか。

 私は諦めて質問に答えることにした。

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