107 ケミー達と町を回る 2
「恋愛感情ねぇ~」
ケミーは空を見上げ考え込む。
何かに気づいたようでニヤりとし、ステラをからかうような視線を向けた。
「ステラちゃんって、もしかして好きな人いるの?」
前にルイザと話した時のステラみたいだな。あの時とはステラの立ち位置が逆になってる。
「へ? いや、さっきそういう人はいないって言ったでしょ」
「照れくさくて隠してるんじゃないの? じゃないとそんな話振らないよね?」
「隠してないし、いないってば! というか私の質問に答えて!! ケミーはどうなの?!」
ステラは声を荒げながら催促する。熱気のあるステラに対して少し冷めた様なケミーは少し悲し気に語り始める。
「今はいないかな。昔住んでた場所にはいたんだけど、その人どこかに行っちゃってさ。時間が経つとなんかどうでもよくなっちゃって冷めちゃった」
「……その人ってのは、男だよね?」
ステラは恐る恐る確認する。
ケミーは意味が分からなかったのか笑いながら答える。
「何言ってるの、当たり前でしょ! 私、女の子なんだから男の子しか好きにならないよ」
以前サービル村でケミーから異様な好意を感じたけど私の勘違いだったということか。てっきりステラに恋をしてるのかと思っちゃった。
だとするとステラがルイザに憧れを抱いてるみたいなのをケミーも持ってるということだろうか。ステラも気持ち悪いくらいにルイザに執着してたからね。きっとそうに違いない。
ステラはケミーに恋愛感情を持たれてないのを知ってホッとため息を吐いた。その後、ケミーのその発言に何か問題があったようで注意を始める。
「ケミー。今度からその女の子だから男が~とか言うのは止めてね」
ケミーは意味が分からず首をかしげた。ステラは理由を付け足す。
「それが当たり前じゃない人もいるし、怒って絡んでくる人もいるからだよ」
普通じゃないことを誇る人もいれば、劣等感を抱く人もいるということらしい。そう考えると普通という言葉は中々扱いに困るなぁ……。
怒って絡んでくる人という言葉であの女の姿が思い浮かんだ。ルイザにラブレターを送ってきたアニータ。
本当に彼女がルイザのことを好きかは分からないけど、もしそうなら、あの人の前だとケミーは面倒臭い目に合うかもしれない。
ちなみにケミーにはラブレターの内容は教えていない。ルイザが言わなかったので勝手に教えるのもどうかと思ったからだ。
「えぇっそうなの?! でも女は男を、男は女を好きになるのは当たり前でふごごごぉぉ――」
驚いたケミーに慌てたステラは大声でかき消しつつケミーの口を手で強く塞いだ。
「わーーーっ!! それ大声で言わないで!!」
「も、もぎょっぎゃ!」
ケミーは何度も頷いた。ステラはそれを確認してから手をどかした。
「恋愛の話題だとうっかり言いそうだからその時は美味しい苺ケーキのこと思い浮かべることにするよ」
「なんでケーキ? まぁとにかく気を付けてよね」
話が終わり沈黙が訪れる。
少しするとキディアが口を開きルイザの話題を出した。どうやらケミー達はルイザの所にも行こうとしてたようだ。ステラはルイザがギルドの仕事で遠征に行った事を伝えるとケミーは残念がった。
「ルイザちゃんいないんじゃギルドに行く意味なくなったね。じゃあ、暑いしどこか涼しい場所に移動しない? ステラちゃん、オススメの場所とかあったら教えてよ」
ケミーは暑いからか手で顔を仰ぎながらステラに案内を頼んできた。
「困った時はとりあえずあそこに行けば暇を潰せるよ、ついてきて」
ステラは自信ありげに言うと様々な施設が入居する城のように大きな建物に向かった。
目的の建物の中はステラの自宅のように涼しく快適で、そのためか大勢の人で賑わっている。町の特に規模の大きい商業施設だからか周辺の建物と比べても綺麗でしっかりとしてるように見えた。
でも――
(こんなに凄いのにギルドの建物と比べると見劣りするって、ギルドって国が運営してるのかな?)
町の恐らく最先端の技術が込められたであろう建物でもギルド未満ということは、首都じゃないとギルド並の商業施設がないのだろうか。
(ただの商業施設だし、冒険者ギルドほど重要じゃないからじゃないかな?)
ステラの考えにとりあえず納得しておくことにした。
「ケミー、キディア、行きたいところある?」
ステラは地図が描かれた案内板という金属の板を指差す。
ケミーも自分の意見よりもステラとキディアに意見を求めた。結果キディアの意見が採用され図書館に向かう事にした。




