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15 優しくしとこ 1

「じゃあ私の秘密を教えるからキディアも隠さないで教えて」


 キディアは困惑の表情を浮かべた。


(デシリア? 何を言おうとしてるの?)


(私とステラの関係を話そうと思うけど、キディアはどういう反応すると思う?)


 ステラは少し黙った後、微妙な反応をした。


(あー、うん。多分、私のこと心配されそう。今以上に怖くなって関わってこないかも)


(え、なんで、どういうこと?)


(頭のおかしい人だと思われそうだし)


(じゃあ言っても大丈夫そうだね)


(どこが?!)


(キディアに心が許せる相手と思わせればそんなの小さいことだよ。どうせ教えたところで言い振らせる相手もいないし、言い振らしたところでただでさえ印象の悪いキディアの印象がさらに悪くなる。ステラが頭のおかしい人と思われるのはキディアにだけだから何も気にすることはないよ)


(うーん、じゃあ大丈夫か。というかキディアはもう反省してるし放置してもいいんじゃないの?)


(今の彼女は心が揺れ動いていてちょっとしたきっかけでまた悪い道に行くかも。だから孤児院に行くまでの間は彼女の心を繋ぎ留めておいた方がいいと思うんだ)


(そう、じゃあ頑張ってね!)


 ステラはどうでもいいという態度で丸投げしてきた。

 許可は得られたということでいいかな?


「あ、あの……ステラの秘密って?」


 キディアは恐る恐る聞いてきた。


「秘密だから他の人には言わないでね」


「う、うん。それを聞いたら私は脱走を阻止しようとした理由を言えばいいんだよね?」


「お願いね。じゃあ私に先に言わせてね」


 まだ引き返せる。

 やっぱり悩むなぁ。言わなくてもいいんだけど、でもキディアになら大丈夫。


「11歳程度の子供があの屋敷を一撃で壊せるほどの力を持ってる理由――」


「11歳なんだ。背が小さいからもう少し下かと……あ、ごめんなさい」


(ぐぬぬぬぬ)


 ステラは小さいと指摘されるのが嫌なのか呻いた。


「このステラの中には2つの人格が入ってるって言ったら信じる?」


 私は胸に手を当てて問いかける。

 キディアは言ってる意味が分からないのかポカンとした。


「ステラには幽霊が取り憑いていて、今話をしているのはステラではなく幽霊の方なの。つまり私は幽霊で名前は……」


「あーあー!! 言わないで!!」


 キディアは遮るように声を発し、聞きたくないのか手で頭の兎耳を抑えた。


「分かったから、信じるから。あなたの名前までは言わないで」


 やっぱり頭がおかしいと思われて呆れられたか?


「待って! 嘘じゃないよ、本当だよ。別に馬鹿にしてるわけじゃ――」


「信じる。凄くしっくり来た。だって11歳とは思えないから。それで、本物のステラはどういう話し方をするのかな? 私の声って本物のステラにも聞こえてるの?」


(聞こえてるよー!)


「ええ、ステラにもちゃんと聞こえてるよ。もしかして幽霊の方には、興味無い?」


「えーと……よく分からない。でも名前は知らない方がいいかなって思った。秘密なんでしょ?」


「うーん、そうだけど、なんていうか不完全燃焼とでも言うべきか、今言ったことだけで本当に信じる?」


「信じる。秘密ってことは、うっかりもう一人の名前で呼ばれたらマズイでしょ? 私、呼んでしまうかもしれないから、だからこれ以上は聞かない方がいいと思った」


「じゃあ名前は言わないでおく。それとステラじゃない方の私は大人だからね。あとこれも言わせてほしい。私はあなたの気持ちが……多分よく分かる」


 私にはキディアと状況は違っても、比較にならない重い罪を背負っている。


「だって私も――」


 言おうとするとキディアの言葉に遮られた。


「ありがとう、私に寄り添ってくれるだけでも凄く嬉しい。だからこれ以上秘密は言わなくていい。それじゃあ、私も理由を話すね」


 キディアは目に溜まった小さな涙を拭き、小さく笑みを浮かべると一呼吸してから話し始めた。


「ステラの言う通り、脱走の妨害をすることで見返りがあった。でも脱走して逃げ切ることができれば私もあんな場所から解放されたんだけどね。脱走しても阻止しても見返りと同じ結果にはなったと思う」


「やっぱり見返りがあったんだね」


「私もみんなと同じようにどこかから連れてこられた。そしていつかはまたどこかに運ばれていく。怖かった。だからゴードンに取引きを持ち掛けた。脱走をした者がいたら仲間のフリをして途中で邪魔をする、と。見返りとしていつか私を解放すると約束してくれた」


 その約束を守る保証も無いけどね。

 恐怖でまともな判断が出来なかったか。


 でもそのおかげで今があると考えれば正しい行動だったとも言える、彼女にとっては。


「あなたの方から持ち掛けたって……それ話して大丈夫? 私に信用されなくなりそうだけど?」


「もう……言っちゃった。……やっぱり私の事嫌いになったよね?」


 キディアは後悔したのか困惑した顔を浮かべる。それと同時に気持ちが晴れたのかちょっとだけ清々しさも見える。


(うん、嫌いになった。でも反省してるならいいんじゃないかな?)


 ステラは本音を漏らしつつもキディアを許せるようだ。


「ステラはキディアのこと嫌いになったみたいだけど反省したなら許すと言ってるよ」


(ちょ、ちょっと勝手に私の考えを言わないでよ!)


(ご、ごめん)


 うっかりステラの意見を口に出してしまった。

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