表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
209/283

106.5 ステラの姉は何してる? 1

 ステラが夏休みに入る直前。

 未だに彼女が救出されたことを知らずにその行方を探し続けている者がいた。


 ステラの姉のミレラである。

 

 ステラと違い髪の色はオレンジではなく赤色をしており冒険者ランクBの彼女は妹を救出するためだけに所属していた冒険者チームをあっさりと抜け、どこにいるかも分からず探し続けた。


 少しずつ情報を集め、ステラという名前の子供が収容されてる犯罪組織の建物を襲撃するものの当然ながら探し求める『ステラ』はおらず、空振りが続いていた。


 また新たに犯罪組織の収容所を見つけたミレラは乗り込もうとしていた。


「おい、そこにはステラがいるんだろうな?」


 殺意の混じる鋭く冷えたミレラの声がすぐ近くの犯罪組織の一員である男に向けられる。

 今いる場所は薄暗い森の中。彼女の目の前には塀で囲まれた立派な建物があった。人がたくさん収容されてるようには見えない外観をしている。


 そこに妹のステラはいない。

 既に自由の身の妹は今頃はエリンプスで夏休みを満喫している。


 男はミレラの問いに答える。


「そこまでは俺も知らないがここには連れ去られた人が子供問わずたくさんいる」


「ふん、ステラなんて名はありふれてるからな!」


「ぐぁっ」


 空振りが続き苛立つミレラは腹いせに男を蹴り飛ばす。

 男が抵抗しないのは既にミレラに仲間を葬られてしまい力量差を把握してるからだ。今生かされてるのは道案内のためだ。


「帰りの運転手は必要だからお前はここで待ってろ」


 ミレラは男の手足と口を頑丈な縄でガチガチに縛って鳥車内で待機させた。


 そして老若男女問わず収容されている建物へ向けて歩き出した。


 玄関の入口のすぐ横には縦長の小屋があり、ミレラは受付らしき透明な窓に近づく。

 誰もいないように見えたが深く覗き込むと門番らしき男が横になって寝ていた。


 ミレラは無視して勝手に入ればいいものを何故か起こすことにした。


「起きろぉおお!!!! 玄関の扉をさっさと開けろぉお!!!」


「うわぁっ!! ……な、なんだ? お前誰だ?」


「誰でもいいだろ!! さっさとしろ!!」


「良くねーよ! なんなんだこいつは……それで何しに来た? 名前は? アポは取ってるんだろうな?」


「妹を迎えに来た! 私の名前はミレラだ! アポは取った!」


 アポは取ってない。


「確認するから少し待ってろ。……来客予定にミレラという名前は無いぞ。日にちを間違えたんじゃないのか?」


「うるせーな、んなことはどうでもいいだろ! 開けてくれないなら勝手に入るからな!!」


 無理だと悟ったミレラは男に頼るのを諦め、入口に移動した。

 男は玄関扉が力づくで開けるのが難しい事を知ってるため、とりあえず様子を見守る。


 ミレラは扉に手を掛けると横に引っ張る。

 壊れるようなバキバキという音と共にあっさりと開いた。

 そして中に入るミレラ。


 男はとんでもないことが起きたことに遅れて気づく。


「うわああああ、なにやってんだお前ぇぇぇ!!!」


 簡単には壊れないはずの扉が壊されたことに危機感を覚えた門番の男は異常を知らせるための警報を流した。

 これにより中を巡回する者達が玄関付近へと集まり始める。駆けつけたのはスーツ姿の犯罪組織の構成員が4人。


「そこの人間の女、止まれ」


 ミレラは立ち止まると用件を伝える。


「私の妹がここにいるかもしれない。ステラを解放しろ」


「何の話だ? ステラという者はここにはいない。不法侵入で捕まりたくなければ今すぐ立ち去れ」


「じゃあ本当にいないか調べさせてもらう」


 ミレラは構わず歩き出す。

 構成員は何故かそれを止めず、ミレラの後ろをつけ始める。


 止めようとしない彼らにミレラは特に何も思わず無視しながら堂々と建物内を捜索し始める。


 しばらく探すものの構成員らしき人以外は見つけられないまま、ミレラは怪しげな地下への階段を見つけた。


「ここだな、絶対ここに人が収容されてるに違いない」


 下りると薄暗い空間がミレラの視界に広がる。格子の扉が複数目に入り、その中にはたくさんの人がいた。


 ミレラは急いで格子の扉に駆け寄ると、その隙間から部屋の奥に視線を走らせステラがいないか探し始める。


 後ろをつけていた構成員が上階への階段を閉じた後、ミレラを扇状に4人で包囲した。

 そして彼らは告げる。


「ここに人が集められてることを知られた以上、お前の命の保証はない」


 黙って付けていた理由はここで始末しようと考えていたからだ。

 この収容所の場所を知られた以上は帰すつもりはなかった。


 冒険者は死亡してもギルドで蘇生が可能ではあるが、死亡したことを証明しなければならない。つまりはその証拠を隠滅してしまえば蘇生は不可能になる。

 ミレラがここで負ければ蘇生されることはないだろう。


 構成員4人が一斉に襲い掛かる。

 全員が冒険者ランクAで共に魔術士ランクは3。魔道具を装備しており、その効果は身体能力を上昇させるもの。

 そのため普通のランクAとは比較にならない強さを誇る。


 ちなみに冒険者であっても犯罪組織に属すことは可能だ。犯罪がバレれば捕まるリスクはあるがバレなければ問題はない。

 捕まったとしてもそれだけで冒険者資格を剥奪はくだつされることもない。


「俺達4人は冒険者ランクAだ。その4人を相手にして生きて帰れると思うなよ!」


 一人目が戦意を挫くための言葉を飛ばし、ミレラに斬り掛かる。


 ミレラは冒険者ランクBで魔術士ランクは1、彼女も魔道具により身体能力が強化されている。

 とはいえ目の前の構成員はランクによる補正と魔道具による補正、さらに魔術による補正のいずれもミレラより強く掛かってるため、普通に考えればミレラに勝ち目は無かった。


 ミレラは一人目の強気な言葉を聞き、おかしくて笑った。

 過去に犯罪組織の収容所を襲った際に何度か聞いたセリフだった。


「はっはっはぁーっ!! そのセリフは死亡フラグだぞ!」


 何度も聞かされた言葉にも拘わらずミレラは生きていた。


 ミレラは叫びながら腰に差してた剣を振る。

 動いてないかのような刹那の一閃は目の前の敵を両断し絶命させた。


 他の構成員はあっさりやられた仲間に戸惑いながらもとりあえず魔術や魔導銃で遠距離から攻撃を仕掛ける。

 ミレラは魔導銃から放たれた青白く細い直線の光を避けつつ敵に一瞬で近づき、また一人あっさりと斬り伏せる。


 彼女のあまりの常識外の速さに勝てないと悟った残りの2名はようやく戦意が喪失し始めた。


「ま、まずい。いきなり二人もやられるとは想定外過ぎる。ボスに助けを求めよう」


 そう言ったと同時にさらに地下に続く階段から男と女が姿を表した。


ミレラ

ステラの姉 人間 女性 18歳

冒険者ランクB 魔術士ランク1


1章の時点では17歳、3章の途中で18歳になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ