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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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104 剣術初心者のルイザ 2

 ルイザは先程のステラとの試合での成功体験から初撃は同じように打って来た。


 私はそれを受けずタイミングよく剣を横に振り相手の腕に先に当てた。


「はい、私の得点だゲフッ」


 私が先に点を入れたからといってルイザの振った剣が急に止まることもなく私の顔面にめり込んだ。


 痛みは無いので大丈夫だけど、顔面に何かが迫る感覚はちょっと怖い。


「え? あ、でも実戦なら今ので私が勝ってますよね?」


「実戦形式が良かったかな?」


「あ……私は実戦でしか使わなそうだけど、点数形式でも役に立ちそうなのでそのままで大丈夫です。ステラもそっちの方がいいと思いますし」


(ルイザちゃんが私に気を使ってくれてる!)


 ステラは気を使われたことに浮かれた。

 気を使ったというよりはルイザにはどうしても剣術の必要性がないというだけだろう。


 試合を仕切り直し、次もルイザから先に打ち込ませることにした。

 どの方向から剣が来ても私は受けることすらせず相手の腕に当ててあっさりと点を重ねていく。


 ルイザは私の動きに全くついて行けてない。というかこちらの動きを予想していないように見える。


「人体の動きを熟知しているような動きですわ……ですね」


「喋りやすい方でいいよ。ステラの時みたいに変えない方がこちらとしては都合がいい」


 私と話してるからかルイザの言葉遣いが普通になってる。いつも通りの“ですわ”の方が私としてもルイザとしてもやりやすいだろう。


「分かりまし……分かったのですわ。じゃあ次はデシリアから打ち込んで見せて欲しいのですわ」


「ステラ相手で上手くできてないのに私が打ち込んだら……あ、そうか。勝ち負けじゃなくて私の実力が見たいんだったね」


 今度は私から打ち込みに行く。ルイザは受けようとするけど私は剣の軌道を変えてルイザの腕を狙う。ルイザはそれに気づき、動きを変えて受けようとするけど反応が遅い。またも私に得点が入る。


「やはりステラとはレベルが違い過ぎますわね。同じ身体能力とはとても思えないのですわ」


 仕切り直した後、再び私から攻め、またも同じような展開になり私に点が入る。


 その後も何度も似た展開になりルイザは私から点を取ることはできなかった。


 と、ここで興味本位なのかは分からないけどルイザはこう提案してきた。


「私だけ身体強化をフルにしてみてもいいかしら?」


「いや……それだとルイザが勝っちゃうと思うよ?」


 ただでさえ身体能力が上のルイザがさらに強化されたらどうにもならないのは見なくても分かる。間違いなく試合にならないだろう。


「いえ、勝つためではないのでこちらから攻めることはしないのですわ。強化すれば手も足も出なかったデシリアの剣に対処できるか確認してみたいと思ったのですわ」


 身体強化をすれば動体視力、反射神経も上がるため私の動きにあっさり対応できるだろう。

 ルイザの提案にステラは興味を示した。


(興味ある! デシリアやってみてよ)


(いくら私でも身体能力がステラのままじゃ成す術もないとだけ言っておくね)


 私はステラにそう伝えるとルイザを見据え、剣を構える。

 ルイザも構えた。彼女は身体強化をしているものの構えは先程と変わらず素人みたいに隙が見える。


 その姿からはさきほどのようにあっさり得点できそうな気はするけど、そうはいかないだろう。


「さぁどうぞ。準備はできてるのですわデシリアさん」


「ええ、行くよ」


 私はゆっくりと足を進めながらルイザが対処しづらそうにしてた場所へ狙いを付ける。それに気づいたルイザは構えをそれに合わせて来た。なら、と私は進む足のテンポを少し変え狙いを微妙にズラす。ルイザはその微妙な変化にすぐ気づいたようでまたも構えをズラした。


 先程までのルイザなら当たる直前までやらなかった動きだ。今は難なく対応するくらいに私の動きが遅く見えてるのだろう。

 それに加えてルイザはこちらよりも早く動けるはず。私の剣はどこを狙っても止められるだろうし、力任せに弾かれることだろう。


 どこを狙っても駄目な気がしたので間合いに入った瞬間、私はとりあえず剣を振った。一振り目は高確率で弾かれることだろう。なので弾かれた後が勝負の始まり。


 そして予想通りあっさりと弾かれた。


 弾かれた剣は私の手から外れるほどの衝撃があり部屋の壁にぶつかりカランカランと大きな音を立てた。


 弾かれた後に挽回すればいい、と思っていたけどその前に勝負は決してしまった。


(え? デシリア手加減したの?)


(いや、してないよ)


 剣術における技術が『優れてる』は無駄な動きを極力減らし力や速度を最高効率で出すことだ。剣術以外でもきっとそうだろう。


 つまりは今のステラの素の身体能力と私の技量を足しても身体強化したルイザには届かないということだ。


 身体強化というものがある以上、剣術を実戦で使う分には限界まで極める意味は薄いと言えるだろう。


「デシリアさん、手加減はしていないのですわよね?」


「ステラも同じことを言って来たけど手加減はしてないよ。ステラの身体能力では技術をどう磨こうとも強化したルイザには勝てないだろうね」


「ステラ相手だとどうなるか見てみたいですわ」


「ステラは私より弱いからやる前から目に見えてるけど?」


「ですわね。勝ち負けよりも拮抗状態の実力差をどれほど覆せてるのかに興味がありますわ」


 ルイザは交代を要求してきた。

 ステラもやりたがったので疲労を魔法で排除してあげてから交代した。そしてステラは、強化したルイザに挑んだ。

 ステラの剣は何度もあっさりと受けられ、弾かれ、押し返され、ルイザに触れることは無かった。


「どう動いてもすぐ弾かれるからどうすればいいかさっぱり分からないよ。剣術同好会の誰よりも強かった。身体強化ってズルすぎない?」


 ステラはルイザのあまりの変貌に呆れた。


「でも剣術大会では身体強化は禁止されていますし、冒険者は身体能力に補正が掛かってますのでランクごとに参加が制限されてますわ。だから大会に出る場合は技術が無駄になることはないのですわ」


「へぇ~、そうなんだ」


(剣術やってるステラが知らないってどういうこと?)


(学校に身体強化使える子なんていないから知るわけないでしょ! 大会だって先生が申し込みしてるから私は細かい規定なんか考えずに試合に出てるだけだし知りようがないよ)


 なるほど。まぁ私には試合のことなんかどうでもいいし、ステラが冒険者にさえなってくれればそれでいいし。


「ありがとうステラ、デシリアさん。満足しましたわ」


「こちらこそわざわざ付き合ってもらってありがとうね、ルイザちゃん!」


 剣術の訓練が終わった後は、他に特に予定のないルイザと自由な時間を過ごした。

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