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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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104 剣術初心者のルイザ 1

 ルイザは素人丸出しなただ走って近づくだけという動きを見せ、ふらふらとした剣をステラに向けた。


 ステラは余裕を持って受けるけど、予想以上の力で押されてしまい目を見開く。


「ぐっ!! ルイザちゃんって魔術だけが凄いんだと思ってたけど力もあるんだね」


「え……? あっ?! ごめんなさい、忘れてたのですわ!」


 ルイザは何かを思い出して剣を引いた。


「冒険者ランクEからは身体能力に補正が掛かってるのでしたわ」


「えーと、つまりは?」


「ステラの2倍近い身体能力を有しているかもしれない、という事ですわ」


「えぇっ?! 冒険者になるとそんなに身体能力上がるんだ? だからか~。オウロンよりも押しが強いから本当にびっくりしちゃったよ」


「オウロン?」


「剣術同好会で1番力のある男子だよ。私と同じ学年だよ」


「とにかく力に差があったら公平じゃないですわよね。ステラも身体強化で筋力を――」


「身体能力まで同じにしちゃったら技量が上の私が勝っちゃうからこのまま続けようよ。あっさり勝てるようだと上達出来ないし」


 ステラが向上心を見せるとルイザは優しい笑みを浮かべた。


「ふふっ、分かりましたわ」


 そして再び二人は打ち合い始める。ルイザは素人の動きだけど優位な身体能力を武器にステラ相手に互角に近い戦いを見せる。


 ステラは力が劣るため強引に体勢を崩されながらも技術を武器にルイザに攻め入る。二人とも剣が直接顔などに当たったりしているけど痛がる素振りは一切みせない。


 痛みが無いからかルイザは楽しそうな表情を見せた。一方ステラはそんな余裕は無さそうだった。


 5分毎に休憩を入れ、計15分ほど二人は無我夢中で打ち合った。


「もうこの辺でいいのではないかしら?」


 ルイザは疲れは見せていないけど終わりにしようと言って来た。


「そうだね。疲れて来たし、そんな状態でやっても意味ないよね」


 ルイザと違い明らかに疲れが見えるステラは同意し、剣を近くの剣立てに置いた。試合結果はちゃんと点数を数えてないので不明だけど、ステラが少し優勢だったように見えた。


 長年剣術をやって来たステラだけど、圧倒的優位で勝てなかったことが悔しそうに見える。


「技量では私が勝ってるのに身体能力に差がありすぎるとこうなるとは……」


 ルイザは冒険者になり立ての頃に講習で数時間ほど剣術をかじった程度らしい。


 全くの初心者ではないけど魔術が強い彼女なら剣術を使う機会はまず無いだろうし、腕前はステラより未熟なのは動きを見てれば明白だ。


 身体能力はステラの倍近いと言ってた。これほどの力の差があればステラの技量ではちょい優位程度の差にしかならないのだろう。


 ステラは2年以上の剣術をやっていながらこれだ。身体能力の差がつくにつれ技術が意味をなさなくなるのが見て分かる。


「私相手じゃ訓練の相手にならないのではないかしら?」


 ルイザからの攻撃を受ける時は力を上手く受け流したりと一つ一つの行動に繊細さが求められたけど、逆にステラが攻める時はルイザが上手く受けられないことが多くあっさりと決めていた。


 攻めるという点では訓練にならない気がする。


「今までに相手にしたことがないタイプだから戸惑うことも多いけど、圧倒できなかったから初心者のルイザちゃん相手でも意味はあると思うよ! だから、いつか休みの日にまた相手をお願いしてもいいかな?」


「そうですわね……私が少し不利でしたけどちょうどいい勝負になったので楽しかったですわ。体を動かすってのはいいものですわね。是非次もお願いしたいですわ。あ、あの、ところで……デシリアは剣術はできるの?」


 ルイザはもじもじとしながら尋ねてきた。ステラと交代した私はその質問に答えた。


「ステラとは比較にならないくらいの腕前だよ。ルイザ程度なら余裕で勝てると思う」


 勝てると断言しないのはステラの素の身体能力に慣れてないからだ。まぁでも今の打ち合いを見てれば勝てる気しかしない。


 そう思いながらも負けると恥ずかしいので曖昧に濁しはしたけどね。


 私の発言に対してルイザは興味深そうに目を大きくする。ステラに対する時と違い明らかに強い関心を見せている。


「もし良ければデシリアさんともやってみたいのですがよろしいですか?」


(あ! ルイザちゃんズルい! 私だってデシリアとやってみたいのに!!)


 私はステラの体を使ってるのでステラと剣を交えることは不可能だ。魔法で疑似的に人形を動かそうと試みたことがあったけどビデオゲームのコントローラーよりも操作が難解でまともに動かすことはできなかった。

 なので私がステラと試合をすることは永久に来ないだろう。


「まぁ試合をやってもいいけど、ルイザはステラくらいの相手がちょうどいいんじゃないの?」


「それはそうですが、どれほどの差が出るのか興味があったので」


 ということで先程と同条件――身体強化は防御のみ――でルイザと試合をすることになった。

 疲れがあるステラの体は少し動かしづらかったので魔法で疲労を少し和らげることにした。

 でも魔法で疲労を軽減するとステラの体力が付きづらくなるので今日だけの処置だ。


 試合場の中央で互いに剣を構える。


「私から攻めちゃうとルイザは何もできないと思うから、先攻はルイザからどうぞ」


「分かりました。では、参ります!」


 ルイザはステラとの試合の時と同様の、ど素人な動きで攻めて来た。


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