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14 私の名前は夕餉です 2

(え、駄目だった?)


(駄目過ぎるよ! もういい、私が決めるからそれで呼んでもらって)


 ということでステラが決めた『コットン』という名前で呼んでもらうことになった。

 ディマス達からはさっきよりはマシと言って貰えた。


 呼び名も決まってもう話すこともなくなったので部屋に戻ることにした。


 * * * * *


 部屋に向かう途中、2階の廊下の窓際にキディアが立っていた。兎耳は少し元気がなさそうに垂れている。


 私のは細長い横に伸びたエルフ耳で気持ち悪かったからキディアの可愛い耳が羨ましい。


 耳の話は置いとくか。


「キディアさん、ご飯はちゃんと食べた?」


 声を掛けてみた。

 キディアが食べ残したものはマリアに頼んで運んでもらった。


「え、うん。食べたよ」


 キディアはこっちを向くと戸惑いながらも返事をした。

 表情はちょっと暗い。


 部屋にいないのはみんなと仲が悪いからなのかな?

 私はみんなと別行動ばかりしてるからどういう関係になってるか分からないんだよね。


「ご飯食べたんだ。じゃあ美味しかった? 私は……えぇと……美味しかったよ」


 私は食べてないけど美味しくなかったと答えるのは作った人に失礼だよね。


(ステラは美味しかったでしょ?)


(え、うん、普通? かな)


 それはそれで失礼だな。作った人の前で言ってないからいいけど。


「わ、私も美味しかったよ」


 キディアは美味しかったようだ。


「そうなんだ、なら良かった」


 少しの沈黙の後、キディアは視線を窓の外に向けた。


 外は真っ暗だけど民家から漏れ出る灯りで村の形が目を凝らせばなんとなく分かる程度には明るい。


「キディアさんは部屋の中には入らないの?」


「一人の方が落ち着くの。そ、それにみんな私のこと怖がるだろうし寝る時間には行くつもり」


 実際みんなが怖がってるかは私には分からなかった。

 私の見えないところではそうなってるかもしれない。もしそうだとしてもみんなに怖がらないでと言うわけにも行かない。


 もしキディアがまた誰かに危害を加えてしまったときにステラのせいにされてしまうのは避けたいので私からあれこれと言えない。


「少なくとも私は怖くないよ、キディアさんは私の事が怖いかもしれないけどね」


「そ、それは……そう、確かに私はステラの事、怖い。あ、ごめんなさい」


「キディアさんが悪い事何もしなければ私も何もしない。だから何も悪い事考えてないなら怖がる必要もないよ?」


「そう……だね、もう私は何もしないから怖がらなくても……いいんだよね? でも……ううん」


 キディアは言葉を詰まらせた。色々思うことがあるのだろう。


「……あの、これは言いたかった。私はステラに感謝している。助けてくれてありがとう。あと名前に『さん』は付けなくていいから」


 キディアは私に気まずそうにチラチラと視線を向け、感謝の言葉を述べた。


「それと、あの時は怖くて……本当にごめんなさい」


「なんで、あんなことしたの?」


 私の背中を刺した理由が気になる。その問いにキディアはまたも謝る。


「……ごめんなさい」


「もう終わったことじゃないの? まだ組織と関係あるの?」


 キディアは顔を強く横に振る。


「なら言えるでしょ? みんなには秘密にしてあげるよ?」


「ほ、本当に言わない?」


「うん、絶対言わないよ。もう終わったことだしね。もしかして脱走を邪魔したのは組織から何か見返りがあるから……かな?」


 キディアが大きな反応を示した。

 しかし、反応はそれだけで頭を縦には振らない。私の予想は合ってるんだろう。


「じゃあ私の秘密を教えるからキディアも隠さないで言って」


 キディアは困惑の表情を浮かべた。

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