14 私の名前は夕餉です 1
「じゃあ頼みがあるんだが俺達の援護をしてくれないか? すっげぇ魔術使えるんだろ? 戦力は多い方が助かるんだ」
完全に高ランクの魔術士だと思われてるっぽい。確信すらされてる。
キメラには興味あるけど、こいつらの援護はやだなぁ。
しかし今の服だと子供達の関係者だと一発でバレるし、危険だからと他の冒険者にギルドに連れ戻されそうな気がする。
とりあえずステラに意見を聞いてみると是非参加して欲しいそうだ。姉が冒険者なので、冒険者が実際にどんなことをするのか見ておきたいらしい。当然ながらステラではなく私が戦う事になるけど。
この男達程度の実力でも討伐できるなら私が参加しても多分問題ないだろう。
(私は参加しても構わないよ、あまり目立つのは良くないけど男達がほとんどやってくれるでしょ)
(デシリアには迷惑かけてごめん)
(私もキメラには興味あるから気にしないでいいよ。私がいれば大丈夫だしステラは大船に乗ったつもりで見てればいいから)
(この人達少し嫌だけどデシリアがいるから安心できる)
あれだけされても嫌な気持ちは少しだけなのか。でもまた何かあったら私が返り討ちにするけどね。
「討伐に参加してもいいけど、条件出していい?」
「報酬のことだろ? 冒険者だったらギルドから受け取って欲しいところだが、お前は違うから俺が出す。だからあんまり出せないがいいか?」
「え? はい」
すっかりお金の事忘れてた。いくらくらいだろ?
「その前に私は子供達のこともあるからずっとは参加できないですよ。討伐終わる前に離脱するかもしれないけどいい?」
「ああ、そういうこともあるか。何日くらい参加できそうか?」
「3日くらい」
そう言うとディマス達は少しだけ相談を始めた。
「1日3000ルドなら雇える。それでその間に全部討伐できたら合計で40000ルドだ」
(4、40000!!!)
ステラが興奮している。
今頃頭の中ではアレが買える、コレが買えると欲望渦巻いてるんだろうな
駄目な子にならないように私がお金は管理してあげよう。
それにしてもその額って高いのか安いのか分からないな。
私にとっては危険性は低いし安かったとしても今は貰えるだけありがたいか。
「えと、途中で離脱はすると思うけどいいんですか?」
「え? あ、あぁ、……まぁそれは仕方ないな。で、お前からの条件はそれだけか?」
「服がこれしかないので別のが欲しいです。こんな格好で討伐ってのも変ですし」
「それくらいは自分で用意して欲しいんだが、お金ないのか?」
「ちょっとしかないです。多分買えません」
ディマスは怪訝な表情を浮かべた。
なんだろう、本当にお金ないんだけどな。
「そんな凄い魔術士がなんで金欠なんだよ! ほら、これで買って来てくれ。良い物は買えないと思うがお前ならその服でも問題ないとは思うし大丈夫だろ」
ディマスから5000ルド受け取った。
本当は服なんてどうでもいいんだけど、今は顔を目立たない程度には隠したいからね。
「ありがとう」
「他にはもうないか? これ以上のお金は今すぐは用意できないぞ」
「もう大丈夫です」
「じゃあ俺達は明日の午後から番だから昼までに俺達の所に来てくれ。ギルド入口付近の待合室で待ってるからよ」
「分かりました、明日はよろしくお願いします」
そう言って食堂を出ようとするとまた呼び止められた。
「ちょっと待った、たびたび悪いが最後にもう1つだけ聞かせてくれ。お前の名前はなんていうんだ?」
まだ名乗ってなかったっけ? というか名乗りたくない。
でも私を呼ぶとき困るよね。
……偽名でもいいかな?
まだステラは冒険者じゃないし、この男達とはどうせ今回だけだし。
ステラに偽名を名乗ることを伝えると変な名前にしないようにと念を押された。
さて、どんな名前にしようか。
辺りを見回し、良さそうなのが無いか考える。昨日の夕食時にディマス達と揉めたことを思い出し、閃いた。
「私の名前は、えーと、じゃあユウゲって呼んで」
(え? ちょっと待ってデシリ――)
「なんだその名前? まぁそう呼んで欲しいならそうするけどよ」
本名じゃないのは察して貰えたようだ。というか偽名でもいいのね。
(ちょっとデシリア! なにその名前!?)
ステラは不満があるようだ。




