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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
3章 小さき者の大きな力
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96 幽霊として目覚めた時の記憶 1

 * * * * *


「あ、目が覚めた? えーと……デシリアだっけ?」


 目の前には耳が横に細長く伸びてる女がいた。


 ああ、“あいつ”か。


 ということはここは夢の中だな。久しぶりに寝たからいつもと違う風景にステラが攫われたのかと思ってビックリしちゃった。


 周りを見渡すと明らかにステラの家とは違うものが置かれていた。レンゼイ村のタイムマシン研究所にあるような謎の機械類が規則正しく並べられている。


 突然、私の意志に反して視界が勝手に動き出した。これは夢ではあるものの過去の記憶の映像がそのまま映し出されているだけのようだ。


 この時の映像は私が幽霊として目覚めた時のもののようだ。最初に目に入ったのはこの女だった。100万年ぶりの再会、とはいっても私にとっては体感100年くらいである。人間で例えると体感1年ってところかな。


「名前はデシリアで合ってる? ねぇ聞こえてる?」


 イスに座りながら返事を催促してくる彼女の名前はレナス。生前からの知り合いで私よりも遥か大昔に生まれたエルフだ。


 彼女はこの異質な雰囲気の場所――古代遺跡に私が生まれる前から住んでるらしい。私が生前に会った時には彼女は5万歳は超えていた。

 エルフの寿命はせいぜい1~2万年程度なので普通に考えればありえない。


 でも私は信じた。


 この古代遺跡の存在を私は聞いたことが無かったし、文献でも見たことがなく、様々な学者に尋ねても一切耳にすることがなかった。古代遺跡と言えば朽ちたお城などが定番なのだけど、この遺跡は全く朽ちておらずよく分からない装置が無人で稼働していた。

 そんな誰も知らない高度な文明の遺跡に一人で住み、どうやって動いてるのか見当もつかないような様々な装置を使いこなす姿を見てしまっては彼女の5万歳以上という年齢も信じるしかないだろう。


「えーと、まさか、デシリアでは……ない?」


 レナスは私の事を知ってるはずなのになぜか朧気おぼろげだった。その時は不思議に思ってたけど100万年ぶりだとそういう反応になっても仕方が無いと今になっては思う。むしろよく名前が出て来たものだと感心する。


 夢の私はレナスの問いにまだ答えずに周囲を見回す。滑らかに加工された板を規則正しく張り付けた壁、その壁に埋め込まれた棒状の照明が室内を柔らかく照らしている。

 この遺跡は古代という割には一切朽ちておらず、古臭さも感じられず、むしろ先進的に見える。


「え? あ、ああ……デシリアだけど、あなたはレナスでしょ? 久しぶりだね。というかなんで私ここにいるの?」


 夢の私はようやく問いに答えた。真下にあるツルツルとする硬質な台に触れたり周囲をキョロキョロと見回す。あの時の私は状況が分からず混乱してるように見える。

 レナスは名前が合ってることに安心したのかホッと息を吐き、私の問いに答える。


「最後にあなたと会ってから何年が経ったかな。ああ、そうそう100万年くらいだね」


「……は?」


「驚いたよね、でも本当なの。ところで立てる?」


 言われるまま従った私はレナスに誘導されて移動を始めた。

 長い通路を歩きながらレナスは話しかけてくる。


「デシリア、あなたはね。幽霊になったの」


「えーと? でも体は特に透けてるように見えないんだけど……」


「生きてる人には目に映らないはずだよ。それと幽霊は物が持てないの。ほら、これ持ってみて」


 そう言ってレナスは近くに飾ってあった透明な花瓶から造花を取り出すと私に放り投げた。

 私は受け取ろうとするけど――


「え、あっ、えぇ?」


 それは手のひらを貫通し床に軽い音を立てた。


「ね? でも安心して、私も幽霊だから」


 レナスは造花を自身の頭上に掴み放り投げる。そして掴もうとするけど、掴めず体をすり抜けて真下の床にポスッと落ちた。


「え、えーと? 幽霊はすり抜けるというのならどうやって持ったの?」


 幽霊になると体が空気のようになり、物は貫通する。レナスは幽霊が物を持つには魔法を使うしかないと説明してくれた。


「物が体を貫通するけど、でも私達は壁をすり抜けることは出来ない。もし壁をすり抜けられるなら地面を延々と落ちていくことになったでしょうね。ほら着いたよ」


 細長い通路を進み扉を開け中に入る。先ほどと大して変わらない雰囲気の部屋が出迎えてくれた。


「ここまで連れて来てなんだけど、どうする?」


 レナスは軽い調子で私に尋ねてきた。

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