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13 30歳じゃありません

 私達にキレ散らかしていた男は床に座ったまま指を差してきた。

 そして立ち上がるとすぐさま私に仕返しとばかりにビンタを飛ばす。


 グーパンチじゃないのは子供相手と思って手加減してるからだろう。

 私は相手の手首を捕まえて防いだ。


「あ? なんだ。ふんっふんっ!」


 男が必死に掴まれた腕を動かそうとするけどビクともしない。


「おいガキ、いやお前、まさか高ランクの魔術士か? こんな細い体でこれほどの馬鹿力は身体強化の魔術じゃねぇと出せるわけねぇよな」


 魔術士? 魔術? 私は魔法を行使する魔法使いだ。

 と、そんなこと答える必要はないね。

 そんなことよりも私はまず子供達がうるさかったことを謝罪する。


「私が子供達に代わって謝ります。みんな攫われて不自由な環境に囚われていて、やっと逃げ出して解放されて浮かれてたのだと思います。うるさくしてすみませんでした。後でみんなには注意しておきます。ですので許して頂けますか?」


 そう言った後に私は手に力を込める。

 許してくれないと握り潰すという脅しだ。


「いたたたたたた分かったたたたたた許すから離してくれでででで」


 私は力を緩めるけど手は離さない。


「な、なんだよ、まだ何かあるのか?」


「私に水をぶっかけたことも謝ってちょうだい」


 そしてまた力を込める。


「あああーーーだだだだ、ストッットッップ、ああああごめんごめんごめーん!!」


 男は痛みに膝をついた。

 ちょっとやりすぎたか。手首の骨に少しヒビが入ったかもしれない。

 大げさな様子に男の仲間が私との関係を疑う。


「おいおい、さっきから大声だして大げさすぎるだろ。お前らもしかして本当は知り合いだったのか?」


 私は首を横に振って否定する。

 やってることは手首を強く握ってるだけだから地味かつ何が起きてるか分かりづらいのだろう。


「謝ったので許します」


 私は回復魔法をこっそりかけてから手を離す。


「いだだだ……あれ? もう痛くない」


 男は不思議そうに手首を見ている。回復魔法を使われたことには気づいていない。


「お、おいディマス、マジで痛いのか?」


 仲間の猫人ねこびとの男が疑う。

 痛がってた男の名前はディマスというようだ。


 仲間達は冒険者の大人の男が子供に力で負けるというのは信じられないのだろう。

 私も同じ立場ならきっと信じないだろうな。


「あ、ああ……、いや俺よりヤバいぞこいつ。魔術を使ってるとはいえ俺の手首を握り潰せる子供なんてありえねぇ。もしかして勇者候補生ならあり得るのか? いや、そもそもこんな場所にいるわけないか」


 また出て来た勇者という言葉、有名なのだろうか?

 いったい何をする人達なんだろう。


 それよりも私のことを言いふらされたくないので口止めしよう。


「あの、私がやったことを他の人に言いふらさないで欲しいんだけど」


「なんでだ?」


「目立ちたくないからです」


「分かった、気を付ける」


 ディマスが頷き、これで私がしたいことは無事完了した。

 部屋へ戻ろうかと思っていると仲間の男達が興味深そうに私を見つめながら言い合う。


「それにしてもこんな子供が怪力って、信じられねぇな」


「そういえば俺達この女の子にビンタ1発で気絶させられたんだったな」


「いくら油断してたとは言ってもランクBのディマスが子供からのビンタで気絶はありえないな」


 私が子供にしては凄いという話になってきたので面倒なことになる予感がしてきた。

 余計な詮索をされたくないのでさっさと戻るとしよう。


「あのお兄さん達、次からは私達も気を付けます。でも子供達がうるさいと感じていてもまだ子供だし優しく注意してあげてくださいね」


 私は不機嫌そうに告げた。


「ああ、分かった。水をぶっかけたのは本当にすまなかった、昔のことを思い出してカッとなってやってしまった」


 私は素のステラの力でビンタをした。


「いってぇ、なにしやがる!」


「水を掛けられたのを思い出してついカッとなってやってしまいました、すみません」


「ぐぬぬ……ああ、そういうことか。今度からは気を付けるよ」


 これで次にカッとなっても今回のことがよぎって思い留まってくれるだろう。

 とにかくもう私達には絡んでこないだろうし戻るとしよう。


「じゃあ今回のことはこれで終わりということで。もう絡んでこないでね。さようなら」


 そう言って戻ろうとするとディマスに腕を掴まれて止められた。


「ちょっと待った。お前、子供じゃないだろ? 何歳なんだ?」


「はい? ……口説いてるの?」


「そうじゃねぇよ、よくよく考えたらお前レベルの身体強化の魔術を使えるヤツが子供なわけがねぇんだよ」


 魔術のことは分からないけど魔法ならいるんじゃないかな?

 生前の記憶を思い返してみるけど子供でこのレベルは………………


 いなかった。


 まぁ世界は広いし昔と今は状況も違うだろう。子供でもきっといるはず。

 だからステラの年齢をそのまま答えることにした。


「11歳です」


「いやいや、嘘つくんじゃねーよ。本当は30歳くらいだろ?」


 中身は1000歳超えだけどそれを答えるわけにも行かない。


「いえ、11歳です。もう行きますよ?」


「待て、じゃあ11歳ということにしといてやる。それでお前はキメラ討伐で来たのか?」


 キメラには興味はあるけど冒険者じゃないから討伐の機会はないだろうな。


「いえ、冒険者じゃないですし、この村には攫われてた子供達の保護を求めて来ただけなのでやりません」


「冒険者じゃないのか……」


 男は少し考え込んだ後、頼み事をしてきた。


「……強そうだし大丈夫だろう。頼みがあるんだが、キメラ討伐の時の援護をしてくれないか? すっげぇ魔術使えるんだろ? 戦力は多い方が助かるんだ」


 完全に高ランクの魔術士だと思われてるっぽい。確信すらされてる。

 キメラには興味あるけど、こいつらの援護はやだなぁ。

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