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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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86 ゴスロリ 3

「ルイザちゃん、ちょっとさ、試着してみない?」


 ステラはルイザが本当は欲しがってると思っている。

 少しずつその気にさせていけば欲しくなってみんなの提案を受け入れてくれるだろう、そう思いながら試着を勧めた。

 ステラとケミーはルイザを励まして喜ばせたいという気持ちと気兼ねなくエリンプスでもルイザと接触できるように恩を売っておきたいと言う思惑があった。


「……いいですわ、試着だけですわよ」


 ルイザは少し渋った後、やはり興味があったのだろう。試着に向かった。


(よし!)


 ステラは頭の中でひとまず喜んだ。


「着替えてきましたわ」


 いつもの見慣れた姿を披露したルイザにみんなは口を揃えて似合ってると褒めた。

 ルイザは照れ臭そうに口をムズムズとさせ、全身を見回す。

 サイズはちょうどルイザにぴったしのようだ。

 しかし尻尾はスカートの中に隠れているのか見えない。


「ルイザちゃん、欲しくなったでしょ?」


「前のは少し窮屈になってましたし、ちょうど買い替えにはいい時期かもしれませんわ」


「じゃあ私達が買ってあげるよ!」


「……でも気持ちだけ頂きますわ。みんなありがとう」


 ルイザはニコリと笑った後、寂しそうな顔で試着を終え、白いシャツと紺のロングスカートに戻った。

 私としてはゴスロリじゃないこっちの服も似合ってるな、という印象だ。顔と体型が良ければ大概の物は似合うんだからズルいな、と思う。

 と、私が思っても別にいいよね? エルフの中では私は普通だったし。


(どうしよう、ルイザちゃんどうしても受け取ってくれない……)


(諦めたら? 無理にあげても喜ばないと思うよ)


 引き際も肝心。みんなはルイザのために何かしてあげたいと思っていても、ルイザ本人としては数日過ごした程度の相手から高価な物を貰うのは抵抗があるんだろう。

 美味しい話には裏があることもあるしルイザくらい慎重な方が私としては好感が持てる。


 ステラは諦めきれないのかルイザの元へ近づいて行き、ゴスロリ服を元の位置に戻そうとするルイザからその服を取り上げた。


「ちょっと借りるね」


「え、ステラ?」


 ステラはレジまで持って行きその服を躊躇なく購入した。


「な、なんで?」


 ルイザが困惑しながら尋ねる。

 するとステラはそのゴスロリ服を両手で広げるように持ち、ルイザの方に押し出す。


「頼み事してもいい?」


 ルイザはその後の言葉が予想できたのか返事を一瞬溜めた。


「……内容次第では聞くのですわ」


「じゃあさ、この服を着て欲しい」


 ルイザは答えず服を見つめる。


「エリンプスに着くまででいいよ。その後は私が学校を卒業するまで預かって欲しい。あ、もちろんその間も着たかったら着てもいいから。ちなみにこれは私が欲しくなって買っただけだからルイザちゃんが気にすることは無いよ。……それでこのお願いは聞いてくれる?」


 ステラは緊張した顔をルイザに向ける。

 ルイザが贈り物としては受け取ってくれないから預けるという作戦に出たというわけか。

 しかもその間は着てもいいという条件付き。

 

 以前のルイザなら確実に断っていることだろう。でも今はステラに対して負い目があるし、この服を欲しがっているように見えたので頼みを聞いてくれるかもしれない。


 しかしルイザは不快そうに眉を寄せた。

 駄目か、と思ってると一転、彼女はふぅと息を吐き、呆れつつも嬉しそうに笑い始めた。


「ルイザちゃん?」


 不安そうに見つめるステラにルイザは笑顔を向けた。


「つまりあなたが学校を卒業するまで私はあの町から出られないと言う事ですわね。元から出ないつもりでしたし、そのお願い……聞いてあげてもいいのですわ。もし、破けたりしてしまったらその時は弁償しますわ」


 ルイザは照れ臭そうにステラのお願いを受け入れた。そしてルイザからもステラに要求した。


「私からのお願いも、その、いいかしら?」


「う、う~ん……内容次第かな……」


「学校を卒業したら絶対預けた服を取りに来ること、それが条件ですわ」


「それだけ?」


「それだけですわ。でないとあなたの願いを受けるわけにいかないのですわ」


「分かった。でもそんな約束しなくても取り返しに行くのに」


「それじゃ駄目ですわ、その……そう! 私にこの服をあげるためにわざと取りに来ないなんてことされたら困りますし」


「あ、そういうことならもう1つ追加するね。私が卒業するまでルイザちゃんはエリンプスにいること! ってこれはちょっとやりすぎかな?」


 ルイザは少し考え込んだ後、答えた。


「言われなくてもそのつもりですわ。それではこれで取引は成立、でいいかしら?」


 ステラは満面の笑みで頷き、ルイザは照れ臭そうに小さく笑った。

 ケミーとアニータは何も出来てないことに焦ったのかルイザに他に欲しい物を尋ねた。やはりルイザは断り、特にアニータに対しては鬱陶しそうに対応した。

 それでも諦めきれない二人はルイザに贈るための物を各々で考えて探し始めた。

 ルイザは困惑しながらもケミーについて行き、ケミーの負担にならない様に安い金額の物を自ら選んだ。

 その後、鳥バス内で摘まむためのお菓子をみんなでお金を出し合って買った。

 ステラ達は用事を済ませるとまだ贈り物を探してるアニータを放置してギルドへと戻った。

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