8 子供の冒険者 2
ステラとそう変わらないであろう歳の冒険者の猫耳少女は得意げに語り始める。
「この村の周囲にいるキメラの討伐に私も来たのですわ。魔術士ランク5もあるから冒険者ランクEの子供だけど討伐の許可を貰えたの」
ランク?
よく分からないけど子供だしきっと低いランクなんだろう。
彼女は真っ直ぐな杖を取り出すと私の前に腕を突き出し得意げに見せつける。
その杖には何か小さな四角い枠がいくつか付いていて、穴になってたり何かが填まってたりしてる。
何なのかよく分からないけどこれで魔術とやらを使うのだろうか。
私が使う魔法とは違うのかな?
彼女は途中で訝しげな顔に変わった。
「ところであなたのその恰好はなにかしら?」
村人らしからぬ格好はこちらもか。
ステラって囚われてた時の服のままだったね。
「そんな立派な剣を腰にぶら下げてるのに、なんでそんな貧相な服を着ているのかしら?」
ステラは町で親と暮らしてたはず。町ということは余程の貧乏でもなければそれなりの服を着ていたと思うけど、今の服はその辺の村人よりもみすぼらしい。
(あの屋敷に連れて行かれる前に何回か着替えさせられたり髪を切られたりしたよ)
服の事をステラに尋ねるとそう答えてきた。
攫われたときのままの服装だと身元が分かりやすいからかな。
何かしらの追跡を振り切るためにそうさせられたのかもしれない。
今更そんな話を聞いてもしょうがないけどね。
さて、相手のことを聞いたのだからこちらの事情も話すことにしよう。
「悪い人達に捕まって監禁されて、さっき逃げ出してきたばかりなんだ」
「まぁ、大変でしたわね。だからまともな服を着てなかったのですわね」
私は頭を縦に振る。
「可哀そうだからって服なんか買ってあげないのですわよ?」
「いや、別にそんなこと頼んでないよ」
「で、その剣は?」
「この剣は、囚われていた場所で拾ったの」
「それ、さっさと処分した方がいいんじゃないかしら!? 町でも見かけないような凄い見栄えしてるし、そんなヤバい所にあった剣なんか持ってたらその組織の関係者に狙われるかもしれないですわよ!?」
私がいるから狙われたところで簡単に殺されることもない。でも面倒事は避けたいね。
「私には少し荷が重い剣だと思ってたから売って処分しようかなって思ってたの」
「そうですのね、とにかく私は店の人じゃないから分からないのですわ。あと、もうそろそろ暗くなるからさっさと家に帰った方がいいですわ。それといくら良い剣を持っていても扱いきれないのは鬼に金棒ですわよ」
鬼に金棒? 宝の持ち腐れとかそんな感じの事が言いたかったのかな。
「鬼に金棒って強いものがより強くって意味ですよ」
「は? あああああ……ま、まぁ、とにかく気をつけなさいよね……」
そう言ったあと彼女は少し距離を開けて店の商品に視線を移した。
横顔は少し赤くなってた。赤というかピンク色だ。
というかこの剣を使うつもりは無いって言ってるんだけど、使わない様に釘を刺してくれたのかな?
「買い物の邪魔をしたみたいでごめんなさい」
私は謝った後、ちゃんとした店の人に声を掛け剣の買取ができないか話をしてみたけど、ここでは買取自体していなかった。
ゴードンのナイフも売ろうかと思って持って来たんだけどね。
一応ゴードンの銃? も持ってはいるけどそれはいざという時に役立ちそうだし売る予定はない。
さて、これからどうしようか。
店の商品をもう少し眺めてみたいけど金もない、時間も遅いから明日にしようかな。
あ、そうだ。冒険者が町中を巡回してるみたいだし、残りの時間は直接買い取ってくれるか交渉してみるとしよう。
帰ろうとしてふと店を見回すと黒づくめの女の子はまだ品定めをしていた。
何を買うのか気になったけど私は店を出ることにした。