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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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66 キディア、武器を買う 2

 キディアは今日のためだけに武器を買うのはお金が惜しいと思った。


(でも身体強化は使えないし、武器がないと魔物を倒せないし――)


 キディアは非力だ。女であり子供であり魔術は使えずろくに鍛えてもいない筋肉の少ない貧弱な体つき。

 そんな彼女が魔物を倒すならどうしても武器が必要になる。


 だが、どうしても倒す必要性は無い。

 目的の魔物は危険性が全くなく、放置しても誰も困らないからだ。


 ルイザ達が魔石を集めるのを眺めるだけでもいい。

 お金は少しでも惜しく、魔石を集めても費やした金額以上に稼げないかもと不安がある。


(でも自分だけ何もしないとケミーに何を言われるか……)


 ケミーとキディアの間には溝がある。密猟おばさんのせいでそれはさらに深くなってしまった。何もせずボーっと眺めてるだけだとケミーに嫌味を言われるかもしれない。


 キディアはこれ以上嫌われるのが怖かった。


 だから過剰なまでに悩んだ。


 じーっとナイフを見つめるキディアにルイザはそこまで悩むならと、優しく言葉を掛ける。


「キディア、そんなに悩むことなのかしら? お金を節約してるなら無理しなくてもいいですわよ、別に魔物を倒す必要はないのですから」


 そうは言われてもキディアが気にしてるのはルイザではなくケミーのことだ。

 ルイザの言葉では心は動かない。


 キディアはその言葉とは関係なしに突然あの事を思い出した。密猟おばさんとの交渉の時にお金を選んだケミーに不満をぶつけたときのことを。


 そして今の自分はお金をとるかどうかで悩んでることに気づいた。

 まだお金はたくさんあるのに多少の金額で悩んでどうする、と武器を買うことに決めた。


 しかしここから武器を選ぶのではなく別の所に移動を始める。


 移動先は武器とは関係の無いのだが、商品棚からいくつかある内の1つを手に取りルイザに尋ねる。


「このナイフでも大丈夫かな?」


 主に果物の皮を剥ぐための短いナイフだ。500ルドと特に低価格だったため懐をできるだけ痛めたくないためにこれで決めたい。


「大丈夫ですわ、以前私は身体強化で素手でも倒せましたし、そのナイフならきっと大丈夫ですわ」


 ルイザはこれにお墨付きを与えた。

 本当に? と少しだけ疑うがキディアは自分の判断よりはマシだろうとルイザを信用することにした。


「じゃあこれにする」


 キディアは『くだものナイフ』を購入した。

 超近距離でしか使えないが何の危険も無い魔物とのことでこんなものでも大丈夫なのだろう。


 用事を済ませたので次は店内を物色中のケミーを待つことになった。


 少し待つとケミーは買い物カゴを手に、1つだけ商品を入れて戻って来た。


「ねぇルイザちゃん、飲み物は持って行った方がいいかな?」


 四角く細長い紙の箱にリンゴの絵が描かれた物を手に持ち、ルイザに見せる。

 リンゴ味の飲料水だ。


 ルイザは少し考え込んだ後、答える。


「そうですわね、ケミーとキディアには必要だと思いますわ」


「ルイザちゃんはいらないの? 私がおごろうか?」


「私は魔術で水はすぐに用意できるからいらないのですわ」


 そう言われたケミーはキディアには気にも掛けず1人分だけを購入した。


 キディアは自分も飲み物が必要だと判断し、すぐさま商品を取りに向かった。しかし結局は何も持たずに戻り、ルイザに申し訳なさそうに声を掛ける。


「あ、あの、ルイザちゃん……」


「キディアは飲み物はいらないの?」


「そ、その、本当に悪いなって思うんだけど、あの、……私にも魔術の水を分けてもらえるかな?」


 これ以上お金を使いたくないキディアは図々しいと思いながらもお願いをした。

 ルイザは少しだけ考え込む。


「ご、ごめんね。本当にごめんね」


 キディアが謝ると優しく返事をした。


「そのくらい大したことないのですわ」


「本当? あ、ありがと――」


 キディアのお礼を遮る様にケミーは大声を出した。


「えーっ?! ルイザちゃーん、私、飲み物もう買っちゃったんだけどぉ……」


 ケミーは嘆くがその意味にルイザは気づかない。


「必要だから買ったんじゃないのかしら?」


「そうだけどぉー、私もルイザちゃんの水が欲しい!」


「ああ、魔術の水ですわね。あんなただの水で良いならお安い御用ですわ!」


 ケミーは紙パックのリンゴジュースをルイザに突き出す。

 表面には結露した水滴が付着し始めていた。


「ありがとう! じゃ、これ、お礼にルイザちゃんにあげるよ!」


「え、いらないわ」


 ルイザはきっぱりと断った。

 リンゴジュースが苦手という訳ではなく、遠慮の気持ちからの言葉だ。


 ケミーはリンゴジュースを悲し気に見つめる。

 ルイザは断った理由を口にした。


「だって、ケミーが飲みたくて買ったのでしょう? 私がそれを貰ったらなんだか申し訳ないですわ」


 理由を知ったケミーはルイザの優しさに曇りかけた顔がパァっと晴れた。


「ああ、そういうことなんだね。でも気にしないでいいよ~、貰って!」


「いらない、いらない! 欲しくなったら自分で買うから! だからケミーが――」


「いいって、遠慮しないで! ルイザちゃんに負担を掛けるんだし受け取ってもらわないと私の気持ちが晴れないよぉ~!」


 遠慮合戦が始まった。

 キディアはどうすることもできないので黙ってその様子を見つめる。


 結局、根負けしたルイザがリンゴジュースを受け取ることになった。

 ルイザは気まずそうにそれを見つめ、ケミーは清々しい表情を見せる。


 用事を済ませたルイザ達は準備が整ったので、集落から少し離れた魔物がよく発生する丘へ向かった。

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