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7 ステラの夢

 私がいつの時代の人か、か。


(100年前と言ったらどう思う?)


(私のおばあちゃんより上だね。ひいおばあちゃんくらいかぁ、……デシリアおばあちゃん!)


 おばあちゃん呼びはやめて欲しいな。でも人間の感覚だとおばあちゃんでも不思議ではないか。

 というかあんまり驚かないんだね。100年程度じゃそんなもんか。

 でも100年前というのは嘘だから訂正しよう。


(今のは嘘だよ。本当はね、私としても言いづらいんだけど……、100万年前なの)


(100万年?)


 そう、100万年。嘘のような本当の話。


「100万年!!!!????」


 ステラの驚く声が周囲に響いた。周りにはあまり人はいないけどいくつかの視線が刺さり、ちょっと気まずい。

 私がステラの体を動かしてる時は勝手に声を出さないで欲しいな。


(あ、ごめんごめん。驚いて普通に声出ちゃった。まさかこれも嘘だったりする? 流石に100万年なんて嘘だよね?!)


 さっき嘘ついたから疑われたようだ。嘘とも言えないけど、本当とも言えない。


 困ったことに今それを証明する方法がない。


 100万年といえばほぼ全てのものが変わってしまってるはず。私の故郷だって影も形も残ってないだろう。そんな大昔の事が歴史書に詳しく書いてあるとも思えないし……。もし書いてあってもそれだけ古い時代が正確に記載されてるとも思えない。私の説明と違ってたら嘘つきだと思われてしまうだろう。


(100万年前の方が嘘みたいにみえるけどさ、これは本当だよ。証明する方法がないから信じて貰うしかないけどね)


 でも私は確信している。ここが別次元の世界じゃないなら私は100万年前の人だ。 

 つい最近、生前の知り合い――今は幽霊になってたけど――と私が幽霊になった日に会っているからね。

 その時に今は100万年後の時代だと教えてもらった。ステラをその知り合いに会わせればもしかしたら納得してくれるかもしれない。


(それよりも、いざというときにステラが体を突然動かすと困るから気を付けてね)


(う、うん。これでも気を付けてるんだよ?)


 ステラはそう答えた。まだ半日だし徐々に慣れていくだろう。

 そしてステラが普段何をしてるかについての話題に移る。


(ステラは家に帰ったらどうするの?)


(どうするのって……いつもの生活に戻るだけだよ?)


 孤児ではないステラはいつもの生活に戻れる。


 私の時代では攫われる子供は孤児が多かったし、だからあの屋敷にいたステラを孤児だと勝手に思って取り憑いた。

 家族がいると最初から知ってたら取り憑かなかったかもしれない。でもそれを知るには尋ねないといけない。宿主のいない幽霊の状態では魔力量の関係で話せる時間に制限があったから興味を引くような内容にしないといけなかった。最初に話しかけた言葉は「助けようか?」だった。「あなたに家族はいるの?」だと答えてくれなかったかもしれない。


 世界がどのように変わったのか見たいからすぐに自由に動けそうな孤児の方が良かったけど今更悔やんでも仕方ないか。

 でもまだチャンスはある。ステラはまだ子供だし世界を駆け回る職に就かせればいいんだ。でもこの時代にそんな仕事があるんだろうか?


 あ、そういえばステラの姉は冒険者とか言ってたね。冒険者って名前の響き的に色々な場所に行くのかもしれない。魔物やキメラ退治で世界中を飛び回ったりするに違いない。


(お姉ちゃんみたいに冒険者になりたいとかはない?)


 危険そうな仕事だし可能性は低そうだけど一応聞いてみる。


(私もお姉ちゃんみたいな冒険者になりたい!)


 ステラはかなり興味があるようで力強く答えた。


 やっぱりステラに憑いて正解だったかも?! いや、まだ喜ぶのは早いな。冒険者の仕事内容はまだ私の想像だから実際にどんなのか把握できるまで安心できない。


 ステラは話を続ける。


(だから普段から筋トレとか剣術の訓練していて本当ならすぐにでも冒険者になりたいんだけど……でも今すぐは無理。早くても大体1年後。学校を卒業してからってお母さんに言われてるから)


 攫われて屋敷にいたせいで学校を1週間くらい休んでるらしいけど卒業は大丈夫なのかな? 

 それは今ステラに聞いても分からないか。


(お姉ちゃんは世界中を旅してたりする?)


(色々な場所に行くみたいだよ)


 予想通り冒険者は色々な場所に行けるみたいだ。これは是非ステラには冒険者になってもらわないといけないな。


(じゃあステラが凄腕冒険者になれるよう私が訓練とか手伝ってあげる)


(本当! ありがとうデシリア超おばあちゃん!)


(おばあちゃんはやめて、超もつけないで)


 でも冒険者になっても私の力ばかりに頼る状況は避けないといけないよね。

 ステラ自身の夢でもあるわけだし自力で活躍出来る方が嬉しさも大きくなるし。


 話をしてると他とは違う装飾の建物を見つけた。

 近くに行くとお店だと分かった。しかし何のお店かは外観では分からない。


 村って人が少ないからか専門店なんてものが無くて1つのお店で色々なものを売ってたりするんだよね。


 今の時代はどうなのか知らないけど、おそらくその辺はあまり変わらない気がする。

 中に入れば分かるだろう、というわけで扉を開けて中に足を踏み入れる。


(うわぁ、あんまり良さそうな物がないなぁ……)


 ステラは残念そうに言った。

 そういえばステラって町暮らしだったね。町と村じゃ品揃えも違うようだ。


 商品だけど特定の種類だけではなく様々な物が置いてある。

 まず目を引いたのは他の商品と比べて大きく目を引きやすい剣や弓などの武器、身軽に動ける布や皮の防具だ。すぐに目に付かないような物だと綺麗な袋に入れられたお菓子と思われる食品。透明なガラスに似た容器に入った飲料水っぽい液体。同じく透明な容器に入った薬っぽい粘りのある液体、色々入りそうな皮の鞄などの小さな商品。


 私の時代のお店では見かけないようなよく分からない物も多数置いてあった。

 つまりは色々売っている。

 それでもステラには品ぞろえが悪く感じるようだ。


 さて、殺し屋から手に入れた剣を売りたいけど、その前にどこにでも売ってそうな剣の値段を見てみる。


 20000ルドと書かれている。


(ルド?)


 おそらくお金の単位だと思うけど一応ステラに確認すると予想は当たっていた。

 でも単位が分かったところで高いのか安いのかは分からない。

 でも殺し屋のレフから手に入れた剣は店の剣よりは間違いなく高いだろうことは分かる。


(値段が分かってもこれが売れないと意味がないんだよねぇ)


(カッコいいし売らなくてもいいんじゃない? 冒険者になったら私が使いたいなぁ)


 私が売りたがってもステラはお気に入りの様で手放したく無さそうだ。

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