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100万年後に幽霊になったエルフ  作者: 霊廟ねこ
2章 才色兼備の猫人魔術士
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58 別行動 3

 対処が思いつく前に犬はステラの足のすねを噛み始めた。

 しかし身体強化により体の強度は上がってるので全く効かないはずだ。


「ぎゃー、やめろ! どっか行けバカヤロー!」


 ステラは負けじと必死に犬の頭をバシバシと叩く。

 防御は上げているけど力は変化して無いため、犬はちょっと嫌そうにするだけで逃げ出そうとはしない。


(ほら、身体強化のお陰で痛くないでしょ?)


(そうだけどさぁ見てよ、ずっと足噛んでるよ!)


(痛くないんでしょ? じゃあそのまま行こうか)


(駄目だよ! そのまま引きずったら目立つし重くて足が動かないよ!)


 言われてみればそうだ、目立つと色々と面倒事を引き寄せてしまう。


 ということで交代し私が相手をすることにした。


(とりあえず剥がすか)


 身体強化で力も強化し、犬の口を両手で引っ張り、慎重にゆっくり無理やりこじ開ける。

 慎重にやらないと顎と頭を引きちぎって分離させちゃうかもしれないからね。その姿はステラに見せたくないのはもちろんだけど自分としても見たくはない。


 すねから無事に犬の口を外すことに成功した、と思ったら今度はすかさず右手を噛まれてしまった。


「あ、また噛んだよこいつ。コラ、離しなさい!」


 私は力を抑えながら犬の頭を叩くもののそれで外せないのはステラが証明済みだ。

 強めに叩くのも可哀そうだし、また無理やり外してもすぐ噛みつかれるだろう。


(時間も惜しいし、とりあえず歩きながら外し方考えてみるよ)


 この辺にあまり人がいないのは前回来た時に確認している。

 なので犬を引きずってても多分誰も見ていないだろう。


 こんなんなら足を噛まれたまま引きずった方が良かったかもしれないな。

 とりあえず進むことにした。


(ギルド周辺と比べると全然人がいないね)


 ステラは不思議そうに周囲を見渡す。


 館に向かう道には誰も用がないのだろう、人の気配が全然ない。

 あるのは館だけ。しかしそこには人が住んでいる。

 なら何かしら用のある人が尋ねても良さそうだけど、訪れる人はいないらしい。


 以前は村人に自分から話は聞けなかったので理由までは分からないし、館の3人の様子を見てもなぜそういう扱いを受けているのか私にはさっぱり分からない。


 館の3人が気味悪がられてるという情報は世間話をしてる村人からの盗み聞きだ。


 肉体のある今なら気軽に尋ねられるんだけど、理由を聞くのが怖い。

 私にとってあの3人はそこまで忌避するほどの人達には見えなかったからだ。


 ギルドから15分ほど歩いただろうか、ようやく目的地の館に到着。

 館は石の塀で囲まれ、門には格子の扉が付いており、数歩で玄関に着くくらい門と玄関の距離は近い。

 周囲には他にちゃんとした建物はなく、かつてこの辺に人が住んでいたことを示す石の瓦礫や廃墟だけが残っていた。


(なんか不気味だね。思い出しちゃったな、私達を監禁してたあの屋敷。ここも孤児が監禁されてるんじゃないかって思えて来る)


(人形のように肌の白い少女とお父さんらしき人と執事っぽい人の3人しかいないのは透明な幽霊の時に中に入って確認してるから大丈夫)


(幽霊って壁もすり抜けられるんでしょ? ちょっと中を見て来る?)


(いや、壁はすり抜けられないよ、誰情報? それ言い始めた人って嘘つきだよ)


 幽霊の存在は認知されてるのに、実際にどういったものかは知られてないようだ。

 いや、もしかして私以外の幽霊はそんなことが出来たりするのか?


(少なくとも私はすり抜けられないよ)


(じゃあどうする? 入口から直接訪ねたとしても相手は私の姿を見てもデシリアだと分からないと思うよ) 


 それはそうだ。というかステラの姿で「あの時の幽霊のデシリアです」と名乗るのをステラは許容できるだろうか?


(村の人達から気味悪がられてるみたいだし、それと館の人達に顔を覚えられないようにした方がいいんじゃないかな? だから変装してから訪ねようよ)


 ステラは変装しようと提案してきた。

 館の人達が何かしら不審に思われてると言うことはきっと原因があるだろうし、ステラに面倒事が降りかからないようするために顔を覚えられないように配慮はした方がいいかもしれない。


 ここ以外で館の人には会わないだろうから変装の必要性もあんまりないとは思うけど、ステラが必要と言うなら一応従うことにしよう。


 変装と言えば灰色のローブだけど、今は持ってきていないのでギルドに取りに戻らないといけない。


 けどここまで来て戻るのは面倒だ。

 何かいい方法はないかと周りを見渡すと壊れた兜を見つけ、それを見て閃いた。


(マスクを付けてみたらどうかな?)


 わざわざ全身に何かを羽織らなくても顔さえ分からなければいいのだ。

 今は服装も没個性で地味なので、マスクをすれば服装よりも顔に注目が行きやすいだろう。

 顔が隠れていれば、顔を隠した子供という印象が強く残り、比較的薄い印象の服装は記憶に残らないはず。


(マスク? わざわざギルド近くのお店に探しに行くの??)


(いや、面倒だし魔法で作ろうと思う。魔力もそんなに使わないから安心して)


 というか玄関近くにいたら気づかれてしまうかもしれない。


(ここに長くいると館の人達に顔見られちゃいそうだから、見えないところに移動するね)


 館の周辺にはかつて人が住んでたと思われる基礎や壁だけ残った建物があるのでそこに隠れることにした。

 草木が生い茂り、瓦礫が散乱し、壁のひび割れが酷く、本来なら危険な場所だっただろう。

 しかし私がいれば瓦礫の倒壊程度で怪我をするわけもないので心置きなくマスク作りに集中できる。


(どういうマスクにしようかな、ステラも希望があったら教えて)


 私のセンスだとどうにも質素な物に仕上がりそうなのでステラにも意見を募った。

 偽名の時に怒られたし私だけで勝手に進めるとまた怒られそうだからね。


 どういうマスクにしようかと考えていると私は右手から動きを感じたので目を向ける。


「がううううう」


 まだ犬は右手にかじりついていた。

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