作り話
私の場合は……ネットやテレビで見たような話ばかりで、私が体験したり知り合いが逢ったような話とかはないのだけれど……そうね。
これは私の作り話よ。だから、実際にあった事とは何も関係ないし、全部私の想像。だから矛盾があっても設定不足って事にしてね。
あの日は確か、夏なのに結構涼しかった、どころか半袖では寒かった気がするの。テレビやネットの天気予報では熱帯夜連続何日だとか言ってたから、結構印象に……ああいや、作り話の中でよ? 実際にそんな日はないのだから。あったとしても関係はないし、モデルにもなってないって。
それで、その日は雲がなかったから、ベランダから星を見ようかと思って。まあ実際にはそんな趣味はないし、道具もないんだけど。
ちょっと肌寒かったから、長袖のシャツを出して、座布団とかタオルケットとかを準備して、ベランダで星を見てたの。星座の位置がわかるほど知識はなかったんだけど、綺麗だったのは確か。……ああいや、実際には星を見てないから綺麗だとか言えないけど、星が綺麗なのはいつだって確認できる事実じゃない?
いい? 続けるわよ?
ちょっとくらい星座を知っていても良いんじゃないかと思って、スマホで調べようとしたら、画面に反射して何かが映ったの。実際には自分の顔な訳なのだけれど……それで、映ったものが何かと確認するために後ろを見たのだけど、カーテンを閉めたままの自分の部屋の窓があるだけ。
ほら、星図と星を見比べたいから正面にスマホを向けようとしたのよ。だから、何かしらが見えるはずもないのに。
それで、振り返っても何もない……窓そのものにも何かが映ってる訳じゃない。しばらく考えて思いついたのは、見えない何かが自分とスマホの間にいるんじゃないかって。
私は何も見てないし、あんな形容し難いカタチをした何かなんて。
見てないんだから。
それがどうしたって……まあ、スマホと自分の間に透明な何かが潜んでいたら怖いよねっていう話なんだけど。
あるいは、自分の顔が鏡やガラスに反射してたら怪物に見えたっていう話にしても良いかも。
話にはヤマもオチもイミもないわ、だって作り話なんだもの。
敢えて言うなら、気づかない方が良かった事って何がきっかけで分かるかなんて知ることが出来ないってことかしら。
これじゃあ「意味が分かると怖い話」ですらない、ただの「意味がわからない話」じゃないかって?
分からないならそのままにしておいた方がいい事なんて、いくらでもあるのよ。
意味が分かると怖い話、意味が分からないならただの小噺。
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