失せ物
私はよく物をなくす。
誰かが盗んだとか間違えて持って行ったとか、そういうものもあるだろうけれど、大抵は私の不注意だ。
小学生の頃は週に2回は消しゴムをなくし、月に2回はペンをなくし、挙句教科書まで紛失した。いじめ紛いの窃盗でもされているのではと担任に聞かれたほどだ。
小学校卒業から20年経った今ではさすがにそんなに頻繁になくすことはないが……まあ、無くさない訳ではない。結婚指輪や家の権利書、それから印鑑や通帳など、重要な物を無くさないのは不幸中の幸いという感じだ。
小物は今でも結構なくしてしまう。
ある日のこと。
息子が小学校から帰って来た時、ランドセルからビニール袋を取り出して私に見せた。
また虫やら草や石を持って帰って来たのか、と思い、適当に本人が忘れた頃に捨てようと考え、中身を確認し。
小学生の頃に使っていた、名前シールが張り付いたペンが中に入っているのに気づいた。
ペンだけではない。
消しゴム、筆、ノート、社会の教科書。
鉛筆、紐、布、靴下片方。
数学の教科書、返す前に無くして新しい物を買い直したCD、ガラケーにつけていたストラップ、小銭が入った財布、中身のない定期入れ。
学生証、スマホのケース、4年前の予定表。
いくつかには名前が書いてあるのでわかる。他のも私がなくしたものだ。
私が小学校の頃になくしたものだけではない。そもそも今は住んでいる場所も県をまたいでいる。
私がなくした時の状態とほぼ同じまま、袋の中に入っていた。
「あんた、これどこでっ……!」
私は続きを言うことができなかった。
息子はどこにもいなくなっていた。
まあ、そういうことだ。
どちらも正解です。