祖母からの荷物
不気味な文章が書きたくなったときに書きます
祖母から荷物が届いた。季節の野菜や手編みの帽子、祖母からの手紙が入っている、毎年の密かな楽しみだった。今年はいろいろと忙しくて会えていないけれども、こういったものを欠かさずに届けてくれるあたり、祖母はまだまだ元気なのだと感じさせてくれる。
箱の中にはもう一つ箱が入っていて、それの上に手紙が置かれていた。
手紙を手に取り文章を読む。
わたしの大切な孫へ。
今年も終わりが近いですが、いかがお過ごしでしょうか。
26。 26。
こちらの保有している巻寿司農園では、図書館で生まれた電動の鶏に土を荒らされてしまったので、サラダ巻きが全滅してしまいました。
鶏たちは電池を回収することでとんかつ巻きになったので、収入と食事には困らないとは思いますがそれでも先が不安になります。
図書館にはお世話になっているので文句を言うわけにも行きません。しかし電池の残骸は送り返しておきました。対策をしてくれるといいのですが。
18。18。28。
近くの川では鯉が爆発したらしく、ハマグリの種が普段よりも確保できているそうです。来年はうちでも栽培できるかもしれません。
焼き鳥の漁獲量も増えているらしく、おとなりさんから頂いた角煮も一緒に入れておきます。クールパックですが生なので早いうちに食べてくださいね。
21。
24。
最近はそちらの方で残酷な事件があったと聞いたので、身を守る手段を用意しておいた方がいいのでは、と考えました。
私にはうまく扱えなかったけれども、あなたは若いのでうまく扱えると思います。こんどこちらに来た時に使い方を教えてもらえると助かります。馬の蹄鉄に似ているけれど、なんなんでしょうね?
61。 8。
紙面も少なくなってしまったので今回はここまでにしておきます。
あなたが健康でいてくれることを祈っています。
また時間ができれば、会いに来てくださいね。
あなたのおばあちゃんより。
「なんだこれ……?」
意識しないままそう呟いていた。
内側の箱を開けるべきではない。開けたくない。
携帯電話を手に取り、母に電話をかける。
「もしもし、母さん。いまちょっといいかな」
「ああ、こっちもかけなきゃと思ってたけど忙しくてね。おばあちゃん、先週階段で骨折しちゃって。大事にはなっていないけど、あと半月は入院してるってことになりそうなの。あなたに伝言で、今年は荷物を送ることができないかも、ごめんなさい、って」
「ああ、それはいいんだけど……今、ばあちゃんと話せる?」
「お医者さんの先生とお話してる最中だから、少し待ってくれたら大丈夫だけれど」
「いや、あとでもう一回かけなおす……というか見舞いに行くよ。どこの病院?」
「そうね、住所は……」
祖母は元気そうだった。骨折したというのにピンピンしていて、あと20年経っても健康体で居続けるような気がした。念のために確認したけれど、荷物はまだ梱包してすらいないようだった。
届いた荷物は捨てた。開けたらなにかよくわからないことが起きそうだったから。呪いがかかってしまうような、そんな非科学的な考えが頭に過ったから。
でも、手紙を読んでしまったから、もしかしたら俺はもう影響を受けているのかもしれない。
そんなことが、ありませんように。
祖母からの荷物ではない。ネタバラシはありません。