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メディカルセンター 2

治療の様子を書いてみました。

誤字や脱字や、表現の間違いなど、お気付きの点がありましたら教えてください。

また、☆☆☆☆☆の評価を頂けると、今後の指標になります。

ありがとうございます。

セラピスト 2



更衣室がある部屋から処置室と書かれているドアを進むと、中は一段高く設計された木製のフロアリングになっていた。 間接照明の灯りは絞られていて、少し薄暗くされている。 受付側の壁際に特大のビーズソファが5つあって、『おっおー!』とテンションを上げたファニアが真っ先に飛びのった。

先に部屋に入って案内したハンナが『わかります!』とファニアを笑って、『どうぞ、皆さんも座って待っていてください』とテレサたちにも座るように促した。 大人しいユーラたちが角のビーズソファに3人で座って、テレサが続いた。 ノエルが座らなかったので2つ余った。


治療室の中頃には、ハンナの腰くらいの高さのマッサージテーブルが3つ、間隔をおいて並んでいて、白いシーツがかけられている。 ハンナは『こちらへどうぞ』と案内して、そこにイアナ、メニーテ、オルガの順で3人をうつ伏せに寝かせた。

ハンナが、ウオールキャビネットのディフューザーのスイッチを入れる。 木の葉の匂いと微かな甘いアロマが広がって、テーブルの穴から顔を出したイアナたちが『すてき』とほっと息を漏らした。


ノエル 「ここで処置を見ていていいですか?」


ノエルがイアナたちの枕側に立ってハンナに聞いて、少し困った顔をしたハンナが『私は構いませんが、オルガさんたちに聞いてください』と振った。

せっかくの気分を害されたと『ええ?』と言って反応したイアナたちだったが、ノエルは『私の時も見ていいから、お願いっ』とテーブルの下にしゃがんで、3人の顔を見ながら手を合わせた。 『後学のために見たいの、お願い』ともう一度頼み込まれ、オルガから『わたしは、別にいいけど』と折れて、あとの2人も了承した。



ハンナ 「では、イアナさんから診ていきますね? 今日は皆さんたくさん走ったと聞いていますが、足腰以外に痛いところや不快なところはありますか?」


聞かれてイアナは自分の体の感覚を確認したようだが、特になかったようで『いいえ』と答えた。


ハンナ 「じゃぁ、服の背中を開けますね。 寒かったら言ってください」


『はい』とイアナが答えて、ハンナがガウンのボタンを外していく。 ガウンがはだけられて、無駄な肉のない白い背中があらわになった。 ハンナはおしりの上にタオルをかけて、パンツを隠すようにしてから、ガウンの最後のボタンを外した。

もう一度ハンナに『寒くないですか』と聞かれ、イアナは『はい』と小さく答えた。


ハンナ 「それじゃぁ、足の裏から診ていきますね。 痛みがあれば言ってくださいね」


ハンナが声をかけて触診を始める。 足の裏をこぶしで押して、かかとを親指で押す。 かかとを回ってアキレス腱のあたりから、指でYの字に上に向けてつまんでいき、ふくらはぎを掌で押す。 

『パンパンになってますね』と言われて、うつ伏せのイアナは目をつぶったまま返事をした。

膝から太ももを触診して、タオルの上からおしりを挟み込むように拳で揉んで、腰を包み込むように掌をおいたあと、ハンナは手を離した。


ハンナ 「疲労だけのようですね。 ケガはないみたいです」


イアナは『はい』とほっと息を吐きながら返事をして答えた。


ハンナ 「まず、薬草の入ったオイルで、熱と筋肉の張りを取ります。 これを5分続けて、次はクリームを塗ってマッサージをして、もう一度暖めてから終わります」


ハンナはテーブルの下からオイルの入った瓶を取り出しながら、少しかがんでイアナの顔を見ながら言って説明した。

ハンナは立ち上がると、両手で瓶を持ったまま『grynnims』と小さく呪文を唱えた。 ハンナの手の内側が、パァッと白く光って消えた。


『おっおー、なんかスゴ』とノエルよりも先にフェニアがビーズソファの上から声を出した。

ノエルが身を乗り出して『今のは何ですか?』と聞いて、ハンナが可笑しそうに『浄化の魔法です。手をキレイにしただけですよ』と教えた。 ノエルは感心したようにうなずいて『ごめんなさい』と体を引いた。

オイルを垂らしたハンナの手がイアナの太ももに触れて、イアナが『うっ!?』と声を上げてビクッとした。 『ごめんなさい。 冷たいですよね』と言いながらも、ハンナは手を止めない。

イアナがクーッと体に力を入れて我慢して、ハンナはニコニコして『すぐに慣れますよ』と声をかけながら、手を動かしていった。

隣のテーブルの上で体を起こしてその様子を見ていたメニーテの目は、明らかに怯えていたが、『大丈夫ですよ』とハンナに笑いかけられて、メニーテは『はい』と顔を伏せた。



全く同じ工程で、メニーテの処置も1分ほどで終わり、メニーテが『冷たーっ!』と耐えている。 その隣のオルガも、隣のテーブルの上のメニーテを見ていて、数分前のイアナに何が起こっていたのかが理解できたらしく、ニコニコしているハンナに退いていた。

オルガのテーブルに移動しながらハンナは、『大丈夫ですよ、メニーテさん。 “それ以上”にはならないので、しばらく我慢していてください。 すぐに、イアナさんのように落ち着いてきますよ。 ね? イアナさん?』と2人に声をかけた。

メニーテが『は、はい——っ』と奥歯をかみしめるように言って、イアナが『ましになりました…』と『疲れたー』とでも言うようにハンナに返事をした。

『ふふふっ』とハンナが笑った。


ハンナ 「さて、問題のオルガさんですね。 肩と背中と腰痛でしたね。 それと足の疲労ですね?」


正直者のオルガは『怖いです。 痛くしないでください』と怯えているが、ハンナはニコニコしたまま、『大丈夫ですよぉ』と明るい声で、オルガのガウンの背中を開けた。 ハンナがせかせかと手を動かして、タオルがかけられ、太ももから下の足があらわになった。

退屈になって、様子を見に来たファニアが『オルガ、グラマーねぇ』とオルガの枕元で言っている。 『やめてよ』と言ったオルガに、『ムッチムチだよ』と面白がってさらに言う。


ハンナの触診が終わった。

ハンナは一旦離した手をもう一度オルガの背中に戻して、『確認を取りますね』とオルガに話しかけながら両手の親指で挟むようにして押していった。 『痛むのは、ここと、ここと、ここですね?』とハンナが押して、オルガが『——っ』となりながらも『はい』と答えた。

手を離してハンナが説明をしていく。


ハンナ 「足の方は、少し疲労を超えた感じはしますが、問題ありません。 腰痛の方も、特に痛めているようには感じられないので、大丈夫でしょう。 実は、整体がわかる人に先に相談していたのですが、腰痛は太ももの筋肉が長時間圧迫されたことによっても、起こることがあるそうなんです。 オルガさんの場合は、脳が、足腰の筋肉が弱ったと勘違いして、腰を守るように誤警報を出している状態だと思われます」


触診を終えてみてオルガは、ハンナの腕を信頼したらしく、落ち着きを取り戻していた。 『すごいですね。 そんなことまでわかるんですね』と丁寧なハンナの説明にうなずいて答える。


ハンナ 「はい。 ですが、さっき押した背中と肩の方は治療が必要です。 診たところ、だいぶ前に痛めていたものみたいですね。 痛みの原因は、筋肉をつないでいる筋に何らかのダメージを受けて、それが癒着を起こしたまま修復されてしまったためでしょう。 このままでは、慢性的な痛みと一生のお付き合いになる可能性もあります。 お見受けしたところ、問題が起こっている箇所は3ヵ所なので、そんなに時間はかからないと思います」


オルガは少しだけ考えて、ふーっと息を吐いて答える。


オルガ 「…本当にすごいです。 実は、痛めてから2年くらいになります」


ハンナ 「お任せください。 切開手術になりますが、再生医術が扱えますので、すぐに良くなります」


やり取りを聞いていて、口をはさんだのはテレサだった。


テレサ 「大丈夫なの? 医者でもないあなたが手術なんかして?」


懐疑的なテレサの口調にもハンナは落ち着いていて、ニコニコしたまま答える。


ハンナ 「はい、私はこの国での医師免許はまだありませんが、私の技術は本物です。 それに、簡単な手術になりますので、お任せください」


オルガ 「…はい、お願いします」


オルガが言って、テレサはそれ以上何も言わなかったが、その代わりに、立ち上がって黙ってハンナの手元を観察しているノエルの隣に移動した。


ハンナ 「わかりました。 ですが、先に熱と筋肉の張りを取りましょう。 同時に腰の痛みも和らげていきますので、リラックスしていてください」


オルガにもイアナたちと同じ処置が施された。 だが、意外とオルガの方が平気なようで、ファニアたちの問いかけにも『大丈夫』と答えていた。

そのやり取りを聞いていて、ハンナが『皆さんもすぐに慣れますよ』と笑った。


ハンナ 「では、この間にイアナさんとメニーテさんの治療を終わらせますね?」


ハンナがイアナのもとに移動した。 『どうですか? まだ、冷たく感じますか?』と聞かれて、イアナは『いいえ』と答えた。 ハンナはテーブルの下からペーパータオルを取って、イアナのについたオイルを拭きとっていく。 『張りはとれましたね』とハンナが言って、イアナが『はい、わかります』と答えた。


ハンナ 「はい。 では、今から温めていきます。 あと10分ほどで終わります」


ハンナはクリームが入ったポットを取り出しながら言って、かがんだハンナにイアナが返事を返した。

両手にクリームを取って、ハンナが集中する。 薄っすらと緑色の光がハンナの両手を包んで薄暗い中にその輪郭を浮き上がらせた。 

思わず『淵源』と驚いてノエルの小さな唇から言葉が漏れた。

ハンナはすぐに『他言無用でお願いします』と言って、ノエルの顔を見る。 ノエルは口を開けたまま、ハンナにうなずいて見せて、また、宝石を眺めるようなまなざしをハンナの両手に向けて戻した。

オルガのテーブルにいたテレサがノエルの異変に気付いて、ファニアと移動してきてノエルに『何か見えているの?』と聞いた。 ノエルがハンナの手元を見惚れたままうなずいて、テレサはファニアに目を向ける。 ファニアもテレサの視線に気づいて『わたしは見えないけど、何かあるのは分かる』とうなずいた。

『何? どうしたの?』とイアナが心細そうにノエルたちに聞く。 イアナにしてみれば、自分の背後で騒がれていて、気持ちのいいものではないだろう。

足を少しだけバタつかせたイアナだったが、フェニアが『魔法みたいよ』と答えて、少しだけ安心したようだ。


ハンナ 「大丈夫ですよ。 今から、温かくなりますからね」


ハンナが相変わらずの声のトーンで言って、つま先から順にクリームを塗ってマッサージを施していく。 その両手はかなり強めに揉みほぐしていっているように見えるのだが、イアナの反応はそれとは対照的だった。


イアナ 「ん——っ、あぁぁ♡」


イアナが思わず言って、テレサが『なに悩ましい声出してのよ』と冷ややかにつっこんだ。

イアナは『あぁ♡ ごめんー、でも、これホントに気持ちいい♡』とクターッと体の力が抜けきった感じで息を大目に吐きながら言う。 太ももの前側が終わって、お腹の周りには軽くなでるように塗って、ハンナの手が離れると、イアナの体はテーブルに溶けるように脱力していた。

ハンナはニコニコしながら、イアナの背中のボタンを閉じていった。


『次はメニーテさんです』とハンナが言って、言われたメニーテは『うっ』と引け気味になっていたのだが、いざ処置が始まってしまうと、メニーテからは悩ましい声は出なかったものの、メニーテもイアナと同じような反応をして、処置が終わるころにはテーブルの上にため息をつきながらのびていた。



治療室のくだりが続きます。 もう1話でまとめたいと思います。

応援よろしくお願いします(*- -)(*_ _)

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