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食堂 2

食堂の続きです。

短いですが、雰囲気が伝われば幸いです。

食堂 2



ジーナ 「——そういうこと。 広い意味では全部魔法なのよ」


ノルドが『そうなんですね。 ありがとうございます』とジーナにお礼を言った。

だが、ジーナの隣のファニアは腑に落ちていないようで、考えている。


フェニア 「体に混ぜてまとうのが気武で、体にため込むのが魔法使い? ジーナさん、ごめんなさい。 ちょっとまだわかりません」


ジーナ 「うーん。 個人個人の感覚的なものの違いもあるからねぇ。 私には、説明が難しいかも? ごめんね、ファニア」


ファニアが『もうちょっとだけ、教えてください』と申し訳なさそうな顔をしたジーナに食い下がる。

そこへ、カトラリーをカチャンと置いて、ナプキンで口を拭きながらデビットが口をはさんだ。


デビット 「要するに魔素とかってのを扱えるレベルの違いだろ? ってか、フェニア。 お前わかるって言ってたろ?」


フェニア 「思ってたのと違うんだもん。 ってか、わかんないお前が言うな」


デビット 「お前って。 お前はまだ17だろ? オレは23だぞ。 デビット“さん”だろうが」


フェニア 「アホ草。 無駄に長く生きてるだけのヤツに“さん付け”はムリ。 くだらないことは、せめて尊敬されるように生きてから言いなさい」


デビット 「うっ、わぁ。 聞いた? 今の? なぁ、グスト、どう思うよ?」


グスト 「おお、可哀そうに。 よしよし。 あの子は怖いから、もう絡むんじゃないぞ?」


グストもカトラリーをおいて、デビットの肩を抱く。 

ジーナがフォークを持ったままの手で口元を隠しながら、『ふっふっ、なにそれ?』と笑う。

フェニアは『ああ、くだらない』と椅子をジーナの方にずらして、『ジーナさん、もう少しだけ、簡単にお願いします』と言って頼んだ。


ジーナ 「ふふふっ、もう。 あとにしましょうよ。 せっかくおいしいのに、冷めてしまうわ」


『ええー』と口では言ったが、ファニアは素直に従って向き直って座った。


運ばれて来た大きなプレートのメインにはラザニアが置かれていた。 レタスに玉ねぎを刻んで絡めたサラダと、トマトとチーズをオリーブオイルで和えた2種類のサラダ。 こんがり焼いたブレッドに、マッシュポテトが添えられていて、鮮やかだった。

半分くらい食べていたジーナが、『多いわよね? このボリューム』と苦笑した。 『私は次からは半分ね』と1人で納得して、大きなラザニアの欠片を口に運んだ。


フェニア 「ノルド、早い。 もう、食べちゃってる」


ファニアが言って、腕を組んだノルドが『ああ』と答えた。


ジーナ 「現役の軍人さんだからね。 普段からゆっくりしていられないものね」


ジーナが労うように言って、フェニアが『ジーナさんは?』と聞いた。

『私? 現役の頃?』とジーナが言って、ファニアがうなずく。 『もちろん、早かったわよ、食べるの』 とジーナ。 そして、可笑しそうに思い出し笑いをする。


ジーナ 「こんなこと言うと、年がばれちゃうから嫌なんだけど、退役してからもう8年になるわ。 いっぱい努力したのよ? 一般のフツー女性になるために」


ファニアが不思議そうにジーナを見て『へえー』と言う。


ジーナ 「そうだ、ノルド。 食べたんだから、何か話して」


ノルドが少しだけ面倒くさそうな顔をして『海軍の話ですか?』と聞いた。


ジーナ 「違うわよ。 そんな、つまらない話じゃなくて、アナタのこととか、ほら、なんかあるでしょ?」


ノルドはあからさまに面倒くさそうな顔をした。 だが、その顔はかえってジーナを面白がらせてしまった。


ジーナ 「アナタの女性が苦手なわけを聞きたいわ」


『おっ』とフェニアが興奮気味に言って、グストも『面白そうだ』とのって、ジーナが笑った。


デビット 「そういえば、なんでだ? 女が嫌いなわけでもないだろ?」


フェニア 「“女性”よ、デビット。 『じょ・せ・い』っていう美しい言葉があるの」


ファニアに手で『しっしっ!』として、デビットはノルドの話を聞くために左側を向いた。


諦めたようにノルドがため息をついて、宙でフォークとナイフを休めたジーナが『聞かせて』と一押しする。


ノルド 「たぶん… なんですが、刷り込みだと思います。 俺は、母の躾の影響だと思っています」


ノルドは『しょう事無し』と言った感じで、手元のグリーンティーに視線を合わせて話し出した。


ノルド 「俺は、物心つく前に父を亡くしました。 母は、片親だというプレッシャーからか、俺を負けん気の強い子供に育てていたそうなんです。 それで、幼少期の俺は、近所でも評判になるくらいのやんちゃな男の子だったそうで… ところが、ある日、同学年の女子とケンカになり、女子に手を上げてケガをさせてしまったそうで… …母は、その事件から自分の教育がまずかったと猛省したらしく、それ以降は、女の子はデリケートなんだから乱暴はダメ、女の子は守りなさい、女の子は大切にしなさいと教育方針を変えたそうなんです。 ……それで、たぶん、女性が苦手なんだと思います」


デビット 「そうかぁ。 それで、ノルド少年は、こんなノルド青年になってしまったとなぁ」


ファニアがデビットに嚙みつく前に、『ぷっ』とジーナが吹いてしまった。


ジーナ 「ごめんなさい、ノルド。 デビット、言い方よ。 ほんとにもう」


ジーナは茶化したノルドを軽く牽制して、ノルドに向いた。


ジーナ 「素敵なお母さんだと思うわ。 ノルド。 尊敬しちゃう。 アナタを見ているとお母さんの人柄がよくわかるわ」


ジーナに真っすぐに褒められて、ノルドは居心地悪そうに照れていた。 ジーナの隣で、ファニアはなぜか嬉しそうにした。

そして、ジーナは『どうりで、ダンテがアナタを気に入ったわけね』と言って、『よく似てるわ』と笑った。

しかし、デビットの意見は違ったようだ。


デビット 「なんだかなぁ」 ファニア 「黙れ! しゃべるな」


デビット 「こっぴどく女に振られた、とかのストーリーだったら面白かったのにな」


『うっさい!』とファニアがテーブルをたたいたと同じ時に、ジーナの時計が14:00を知らせていた。


ジーナ 「そろそろ行かないと、まずいわ。 出ましょう」


ファニア 「ええぇ? 気武のお話は?」


ジーナ 「わたしよりも得意な人に実演も兼ねて説明を頼むから、待っていて。 そうね。 今日の夕方にはアリスも来るからその時にしましょう」


『さぁ、みんな、行って』とジーナがフェニアたちをせかして立たせる。

食堂を出ていくフェニアたちに、カウンターのジーナは『私はダンテと変わるから、また、あとでねー』と手を振った。



メディカルセンター前。


身体測定が終わったのは15:30を過ぎた頃だった。

標準的な身体計測からはじまって、視力と聴力、BMIや骨密度、血中のウイルス抗体とヒトゲノム構成指数、魔素の定着度とサチュレーション指数、溶解魔素電流の伝導率、そして、最後は、脳の酸素消費量と活性化指数。

15人ほどの医師と看護師が、1人当たり40分ほどかかる工程を並行して行ったのだが、22人の検査をし終えるにはそれなりの時間がかかってしまった。


メディカルセンターの回転ドアが回って、最後に出てきたのはフェニアだった。 ダンテに言われて待っていたイアナたちが声をかける。


イアナ 「フェニア。 待ってたよー。 フェニアが最後よ」


オルガ 「フェニア、どうだった? わたしは頭を診てもらってる時、お医者さんに『うーん』とか言われちゃった」


メニーテ 「でも後半は、なんだかよくわからない検査ばっかりだったよね」


フェニア 「わたし、退屈で寝ちゃいそうになってオコられた」


イアナ 「面白―。 もしかして、あの白髭のこわい人?」


フェニアが『そうそう』と言って、『あなたは大物ねー』とイアナたちが笑った。


イアナ 「そうだ。 行きましょう。 ダンテさんが競技場に集まれって」


オルガ 「やだなぁ。 もう、走るのかな?」


メニーテ 「そうみたい。 いよいよ訓練が始まっちゃうね」


『行こう』とイアナたちが歩き出して、メディカルセンター前の道路を渡る。

4車線ほどの道路を渡ると、まばらに常緑樹が植えられたグリーンエリアがある。 木々の下を行くと、中心に向けて緩やかな下り坂がはじまる。

80mほどのグリーンエリアを進んでいくと、アースカラーのトーンでブラウンとベージュに塗装されたエリアが見えてきた。 そしてその中心には大きな水溜まりがあって、その畔にダンテと他の訓練生たちがいた。



訓練が始まります。

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