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ミーティング

昨年の投稿から4ヵ月も空いてしまいました。

申し訳ありません。 米の寅さんの応援に忙しくて…(汗o汗)


投稿を再開します。

パラミリタリー訓練学校・入学式の続きです。


誤字脱字、ニュアンスや表現の間違いなど指摘してくだされば、うれしいです。

評価もください。 よろしくお願いします。

ミーティング



ケイブ 「みんな、すまない。 サテラとアリスと俺はここで失礼する。 今日は施設案内のあと、能力測定と基礎訓練が組まれてあるから、楽しんでくれ。 俺の講義は木曜日以降になるから、またその時に会おう」


カラになったコーヒーのカップをゴミ箱に捨てると、まだ軽食を口にしている訓練生たちにケイブは声をかけた。

ケイブが手を振って、サテラが頭を下げ、訓練生たちも会釈して返事を返した。


アリス 「わたしは、また夕方に戻ってくるからね。 今日の夜に魔法の適性テストを行うわ。 またね」


アリスは手を大きく振って、サテラのあとに続いて出て行った。


『あっ、そうね』とジーナが手をたたいて、プリントの束を持ち上げながらイアナに手招きをした。 イアナに手渡されたプリントはコの字型に座る訓練生たちに順に回され、イアナの反対側から教員席のテーブルに残った数枚が返ってきた。


プリントの1枚めは特段珍しくもない施設内での注意事項が書いてあった。 2枚目が施設の見取り図で、訓練生たちの興味はこの2枚目に集まった。

真四角の道路の内側に所々に樹木が植えられたグリーンエリア、その内側に陸上競技場があり、中心は人工池になっている。

四角い道路の外側に12棟の大きな建物が配置されていて、施設への入り口は2ヵ所で、東に面した真ん中の建物がメインゲートで、南側の西の端がセカンドゲートになっている。

ジーナがダンテに目配せをして、ダンテがプリントをもって立ち上がった。


ダンテ 「まだ、ブレイク中だからな、そのまま聞いてくれ。 注意事項の説明はあえて割愛するが問題ないな?」


『はい』と誰ともなく返事があってダンテが続ける。


ダンテ 「よし、2枚目の見取り図を確認してくれ。 北側の道路に面した真ん中の建物を中心に西回りに1から順に番号が振られている。 池を中心に見て、東西南北に3つずつ建物が並んでいるのがわかるな? 施設の大きな建物は全部で12棟なのだが、2つあるアクセスゲートには番号がないから、第1棟から10棟までだ。 実際に建物の外観には数字が書かれてあるから、ここに慣れないうちは、これをあてにするといいだろう」


カップコーヒーをおいたダンテが説明を続けていく。 北側中央の1の建物は『魔法訓練施設』、アリスが受け持つ魔法訓練のための施設が入っている。 左回りに2の建物は校舎でケイブやサテラを中心にした、 “通常”の学科が行われる建物だ。 西側の道路に回って初めの建物が3番目の建物で、職員や訓練生のための宿舎になっている。 ここに連れてこられた学生たちがはじめに通された場所だ。 4番目の建物は歓迎会が行われた食堂とゲストハウス。 5番目が医療施設とリカバリーセンター。 南西にある施設の裏口にあたるセカンドゲートを飛ばすと、次が南側の道路の中心あるセントラルホールで、6の番号が振られているこの建物だ。 今、全員がいる場所だ。

そして、隣の7棟がジムナジウム、屋内訓練場になっている。 東に回って、8棟が施設全体の管制とセキュリティセンター。 パラミリタリー事務局が入った東のメインゲートが東側の中央にあって、その隣の9棟と10棟が書庫・資料室・保管庫・倉庫となっている。 そして、10棟の隣が1棟で、一周回って最初に戻ってくる。


ダンテ 「まぁ、こんなところだ。 昼食前に施設を見て回るから、詳しい話は後でもいいんだが、訓練生のみんなが中に入るために許可が必要な施設は、セキュリティセンターがある8棟から、9、10、それに魔法訓練施設がある1棟だ。 1棟は魔法具なんかの危険なものもあるから、事故防止のための処置だ。 何かあれば、聞いてもいいぞ? なければ、ブレイクがあと5分あるからゆっくりしてくれ」


ダンテは座ってコーヒーを手に取り、一口サイズに作られたミートパイに手を伸ばした。


ジーナ 「ありがとう、ダンテ。 いよいよ、始まるわね」


『ああ』と頬張りながら答えたダンテの口角は上がっていた。




ブレイク後、ダンテの呼びかけに最初に呼応した青年はデビット・Sotelと名乗った。 細身で引き締まった体系をした彼は、はきはきと自分は医大生で、最後の年を休学してきたと話した。 デビットは少し小柄なせいか、顔を上げて話す癖があり、歯切れのよい彼の口調は周りに好意的な印象を与えていた。


デビット 「はい。では、質問の方ですが、ここでの生活で外出は許可していただけるんでしょうか? オレたちの年頃だと、体はともかく、心の休養も必要になるので」


ダンテとジーナが笑いだした。


ジーナ 「始まる前から、遊びに出る気?」 


ダンテ 「まぁ、基本、常識の範囲内での外出希望は認めるとこにはしてある。 我々も30ヵ月もお前たちをここに閉じ込めるつもりはないんでな。 それに、地元のクカやチトたちなどは通いだから、普通の学校の制度と同じと思ってもらって構わない。 だから、門限はあるが、可能な限り寛容に外出許可は出してやろう」


デビットは、ダンテの回答に『まじか!? よっし! ノルド!』とガッツポーズをして立ち上がって、隣に座っていた大柄の青年の肩をパシッと叩いた。 『案内頼むぜ、相棒!』 ノルドと呼ばれた青年は、自分たちに集まる周りの目を気にしながら『常識の範囲内の案内ならな』と叩かれた方の肩を払った。


ダンテ 「あぁ、そうだ。 言っておくが、ここのセキュリティは厳しいからな? あまりはっちゃけると恥ずかしい思いをすることになるぞ?」


言われたデビットは後頭部をかいて、どっと訓練生たちの間で笑いが起こる。 ノルドが裏拳をデビットの腹に入れて、『ぐふっ』とデビットを座らせる。


ジーナ 「フフフ、威勢がいいのは大変結構だけど、でもたぶん、アナタたちが仲良く外出できるのは何ヵ月か向こうね」


ジーナの言葉を聞いて、少しふわっとしていた訓練生たちの空気は沈み込んだ。


デビット 「…と? 言いますと?」


ジーナ 「まず、ここでの“生活”に慣れる必要があるわね。 ここ数週間以内に出かけられるまでになれば、目一杯ほめたげるわ。 フフッ」


ダンテ 「はっはっは、脅すつもりはないが、ジーナの言う通りだ。 一定水準の基礎体力と身体能力がつくまでには、45日くらいはかかるだろうと思ってる。 それまでが大変だが、優秀なみんなのことだから心配はしていない。 むしろ、それからあとが本番だと思っていてくれ」


ダンテが言い終わると、再び訓練生たちの表情は引き締まった。

それを見て、ダンテとジーナは苦笑する。


ジーナ 「さて、本当にブレイクが終わっちゃったわね。 質問があったら受けるわよ? どう?」


普段より声のトーンを上げたままのジーナの問いかけに、後方から手が上がった。


—— 「ギルバート・Aulです。 体育大休学です。 教科課程について説明をお願いします。 できれば、30ヵ月の全工程を教えていただきたい」


この青年は、最初のイアナの時に“不快感”を示していた内の1人だ。 さっきのデビットとの間の緩いやり取りがカンに障ったのだろう。 丁寧な口調ではあるが、どこか吐き捨てるように聞こえた。


ダンテ 「ああ、そうだな。 他の教官の受け持つ教科については、その時に聞いてくれ。 俺の担当は体術と知略だ。 平たく言うと実行力と戦術の教科だな。 戦術については、その都度必要なことを教えていくつもりでいる。 知略は主に30ヵ月の内の後半にちからを入れていくことになるだろう。 まぁ、これは大事なことなんだが、それでも半分は“お勉強”だ。 お前たちが興味あるのは、実行力の訓練の中身だな? ギルバートと… その隣の、古武術チャンプだったな?」


ギルバートの隣で腕を組んでいた青年は、急に話を振られて一瞬ひるんだが、気を取り直して立ち上がって頭を下げた。


—— 「ロック・Merloです。 私は武術の旧家の出身なもので、おっしゃる通りです。 よろしくお願いします」


ダンテ 「ああ、すまない、ロック。 まだ、全員の名前を覚えきれてないものでな。 ギルバートはどうだ?」


ギルバート 「はい。 俺たちは、ここに遊びに来ているわけではありません。 オレたちがこの30ヵ月に期待しているのは、自分の新たな能力の発見と発現です」


ジーナ 「おっと。 とげのある言い方ね? ギルバート。 で、デビットは? 何か言いたいことあるかしら?」


ジーナが意地悪そうにデビットに話を振るが、デビットはテーブルに方ひじをついて聞いていた姿勢を正して、両手の掌を上に持ち上げて見せた。

クスクスと笑い声が漏れても、デビットは笑われるのには慣れてると言わんばかりに太々しく、また、肩ひじをついた。


ダンテ 「さっきの“俺たち”には、お隣の美大生も含まれているのか?」


話を振られた美形の女子が、めんどくさそうにダンテの方を見る。


—— 「テレサ・Siddです。 私は違います。 ここへ連れてこられたのも半ば強制です。 Londriaの司法官殿に直接司法取引を持ち掛けられて、致し方なくここにいるだけです」


『司法取引』という聞きなれないワードを耳にして、少しだけホールがざわめいた。

ダンテが『なるほど』と相槌を入れると、テレサはすっと息を吸い込みながら、後ろを振り返って言った。


テレサ 「ですが、どちらかといえば、“デビットさん”よりはこちら側よりです。 私も30ヵ月を無駄に過ごすつもりはありません」


振り返って自分の方を見てきたテレサに、少しだけ鼻の下を伸ばしかけていたデビットだったが、再び肩ひじをついた。

ダンテがふっと鼻で笑って、またしゃべりだす。


ダンテ 「わかった。 話を戻そう。 実行力の強化についてだな。 さて? “実行力”とは何だと思う、ギルバート?」


ギルバート 「——っ、戦闘力でしょうか?」


ダンテ 「正解だな。 だが、まだあるぞ? ロック?」


ロック 「防御力ではないでしょうか? あるいは危機回避能力?」


ダンテ 「正解だが、もう一つ。 重要なものがある。 なんだと思うテレサ?」


テレサはため息をついて『…わかりません』と答えた。


ダンテ 「じゃぁ、後ろの現役の軍人さんに聞こう。 ノルド、なんだと思う?」


ノルド 「…はい、それは持久力だと思います」


ダンテ 「そうだ、持久力だ。 格闘技でもそうだろう? 分析力、判断力、決断力。 何においても集中力が必要で、それを安定的に下支えするのは持久力だ。 そうだろう? ということで、最初の3ヵ月は基礎体力を重点的に鍛えなおす」


ギルバート 「3ヵ月も!? …ですか?」


ダンテ 「ああ、重点的に行うのは3ヵ月だ。 では、みんなに質問だ。 10キロのランニングが余裕でできるという者は手を上げろ」


その質問にはギルバートもロックも手を挙げた。 しかし、テレサとホールの半数は動かなかった。


ダンテ 「半分か。 それじゃあ、20キロ」


さらに、半数になった。 そして、ギルバートとロックの手も挙がらなかった。 後方ではノルドとデビット、それにチトとクカも誇らしげに手を挙げていた。


ダンテ 「まぁ、そういうことだ。 俺が考えるロードワークの合格ラインは40キロを3時間以内だ。 …最初の課題だな」


ダンテの言葉に訓練生たちは、改めて大きく息を吸い込んだ。


ダンテ 「さて、それができたらようやく体術に入っていくんだが… 俺は全員が格闘術を完璧に身につける必要はないと考えている。 もちろん、護身術用の基本の型は全員に覚えてもらうが、戦い方に関してはいろいろと種類がある。 格闘技系の接近戦が得意な者もいれば、射撃などの遠距離に突出した者がいてもいい。 魔法や魔法具、武器の扱いに洗練してもいいだろう。 しかし、これらすべてに必須の能力が気武だ。 気武、もしくは、魔法が多少なりとも扱える者は手を上げてくれ」


手が上がったのは約半数だ。

ダンテが全体を見渡して『なるほど』とつぶやいた。


ダンテ 「最初の15ヵ月は、基礎体力の強化と、気武の発現、それに気武の強化が当面の課題だ。 それが、一定水準に達したら、実践演習を行っていく。 チームワークとネットワーク構築のための訓練だ。 そこから戦術の教科も、より本格的に加わっていくことになるだろう」


ダンテが言い終わってギルバートの方を向いた。 ギルバートは『わかりました』と答えて指をテーブルの下で組んだ。

ジーナが『ほかに何かあるかしら?』と問いかけた。

色白の小柄の青年が『はい』とトーンの低い声を上げた。


—— 「セルビン・Nitezです。法学部は中退しました。 オレの質問は、このパラミリタリーの訓練期間を終えてからのことです。 規約書に謳われていた内容はたったの2つでした。 これが、いまいち信用できません。 最初に書かれていた守秘義務が一生ものであるということと、ここを出た後も定期的に連絡を取って自分の居場所をパラミリタリー本部にわかるようにしておくこと、たったこれだけです。 これほどの大掛かりな設備と人材をそろえて、莫大な経費と時間をかけて育てる人材なのにです... 本当に、大したシバリもないまま、ただの一般人として開放してくれるものでしょうか?」


ジーナ 「つまり、ここを出た後で、軍隊なんかの… 例えば諜報機関なんかで強制的に働かされるんじゃないかっていう不安ね?」


セルビン 「はい、そうです」


ジーナ 「まぁ… いい質問だわ、セルビン。 私たちはよそ者だったからよくわからないけど、“ケイブ”によるとこの国は慢性的な人材不足らしいからね。 だから、ここを出た後は、いろんな国の機関からラブコールが来ることは請け合いね。 でもね、パラミリタリー訓練学校は民間の訓練学校なの。 だから、いくら経費やら時間やらを投資しているとは言っても、ここの卒業生に強制的に義務を押し付けることはできないわ。 民間人の選択の自由は、この国の憲法で保障されているものだから安心していいわ」


セルビン 「… …一応、表向きはそうでしょうね。 ですが、司法や公安などがその気になればいくらでも方法はあります。 先ほどのテレサさんが言われていた“司法取引”などがいい例です。 国家権力が権力にモノを言わせるときの常套手段が、『さもなくば…』ですよね?」


ジーナ 「——フッ、いい線を言っているわ。 でもね、その点は第1期生のアナタたちは大丈夫よ。 これだけ世間が注目してるんですもの、公安でもおいそれと手は出せないわよ」


セルビン 「そうだといいのですが…」


ジーナ 「心配性ねぇ。 まぁ、いろいろと想像してシュミレーションしておくことはいいことよ。 それに、アナタたちに向けられるラブコールは政府機関だけじゃないわよ? もちろん、私たちからもよ?」


セルビンが『えっ!?』となって、他の訓練生も大きくどよめいた。

ジーナがそれを見て可笑しそうに笑った。


ジーナ 「アナタたちが卒業して最初に受けるラブコールはここ、パラミリタリー訓練学校からよ。 それは、ここの教員にならないかってお誘いよ。 自慢じゃないけど、お給料はいいわよお? ふふふっ」


驚く訓練生たちにジーナが説明を加える。


ジーナ 「人材不足なのはこのパラミリタリー訓練学校だって例外じゃないわ。 パラミリタリー組織はこれからLEDAS全土に広がっていくのよ? 生徒を育てる規模だって今のままじゃ話にもならないわ。 私たちは最初の何期生たちの中から教員も育てるつもりでいるのよ。 だから、私たちは試験的にではあるけれど、アナタたちとはじめからフラットな関係を築いていこうとしているの。 どう? これもダンテが最初に言っていた“理由”の内の1つよ。 私たちは、アナタたちの中から1人でも多くのともに働く仲間ができてくれることに期待しているの。 もちろん、強制はしないわよ」


明るく言い放ったジーナの言葉に、訓練生たちの表情が少しだけ赤らんだ。 

ジーナはそんな訓練生たち全員の顔を見渡した後、満足そうに微笑んで『これは、終わってからの楽しみね』と付け加えた。


ちょうど、11時を知らせる時計のチャイムが鳴り、ジーナは『さてっ!』と言って立ち上がった。

ダンテも『ああ、時間だな』と言ってジーナに続いた。


ダンテ 「今日のミーティングは終わりだ。 質問のある者もまだいるだろうが、それは、また後日だ。 今からこのホールを出て、施設をざっと案内したあと昼食だ。 行くぞぉ、ついてこい」


「「 はい! 」」  「「「 はーい 」」」


ガタガタとフォールディングチェアが音を立てて、ぞろぞろと23名の訓練生たちはダンテたちのあとに続いていった。



不定期で更新してまいります。 すみません。

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