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ギルドでの休息

 王都アムジェラは夜でも騒がしい街だ。酔いつぶれた男たちとライトの魔法で煌めく街の明かり。酒場では踊り子の女たちや吟遊詩人がそれぞれのパフォーマンスで街を守る英雄たち、すなわちギルドのメンバーをたたえている。ギルドに入ることも、ギルドで活躍することも、この街に住むものなら一度は憧れる夢だ。

 と同時にとても危険で残酷な夢。だからこそ、こうして、夜になると英雄たちの冒険譚は語り継がれる。たとえ、その者が死んだとしてもだ。

 勇者を自称するルーナという少女はそのことをどこまでわかっているのだろう。いや、まだ子供だ。実際に冒険をしてみないとわからないことがある。弱いモンスターでも徒党を組まれれば厄介だし、ケガをしているところを襲われれば熟練の冒険者でも危険だ。人は弱く、脆い。自分の古傷をみてしみじみそう思う。

 月明りの下、ギルドへの道をルーナと歩いていると、ふと、ルーフィアに出くわさないかと不安になった。同郷の幼馴染みで、気が強く、美貌だけでなく、魔法の才能にも恵まれていた。そんな彼女はことあるごとに俺のことを奴隷のように使いっ走りにして、弱い俺を鍛えるためといいながら格上のモンスターと命がけの戦いをさせられた。生きているからいいものの、死んでいたらどうするつもりだったんだろう。あげくのはては、強くなれたのはわたしが鍛えたからとのたまう。パーティーから追放されたとはいえ、今でもやはり怖いというか、会うと心が痛くなるような気がした。

「ほう、これがギルドというものか。大きいのだな」

「この街でも有数の立派な建物だね」

 ちょっとした砦のような門構えだ。中に入ると大きな受付と長椅子がいくつも置いてある。だが、冒険者の多くは椅子に座ることを嫌って立っていた。足腰を鍛えるためだ。なのに、少女ルーナは、すぐに、つかれたぁ、と言って、椅子に腰を下ろしている。正直、冒険者としては二流かなと思った。この動作だけを見ていたらね。すくなくとも勇者とは思えない。

「あなたも座りなさいよ、ねぇ」

「え、ああ。そうだね。座らせてもらおうか」

 彼女のペースに合わせてあげることにした。これから厳しいことも覚えることも山のようにある。いちいち小言を言っても意味がない。百聞は一見に如かずだ。

「名前はなんていうの?」

「そうか、自己紹介がまだだったね。俺の名前はゼファー。パーティーを追放されたしがない戦士さ」

「ふーん、で、クラスは?」

 ギルドにはS級を頂点にA、B、C、D、E、F級までがある。F級は子供でもなれるもので、本格的な依頼はE級から上になる。特にB級より上はほとんどいない。俺の所属していたパーティーはA級だが、俺自身のクラスはc級の中堅剣士だ。ヒュドラやオークといった中位の魔物に1対1で勝てる程度の実力。

「うーん、ぱっとしないし、C級程度でしょう?」

 あははっ、言うより先に当てられてしまった。

「そうだよ。俺はC級さ。だけど、A級のパーティにいたから、多くの場所を冒険してきたし、いろんな知恵はあると思う。きっと役に立つよ」

「ふふっ、わたしがA級に駆け上がるのを見ているといいわ」

 威勢のいい女の子だ。傷一つない肌。守ってあげないとな。戦士である俺の身体はどうなってもいいからさ。

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