勇者ルーナの仲間になった
「貴様、何者だ」
15歳の少女に大人げないと思われるかもしれないが、モンスターが女性や子供に化けているケースはゼロではない。ましてや、こんな夜遅くに女性がひとりでいたら不審に思う。それも、ルーフィアに負けない美少女だ。
「警戒してるの? そんなにぼろぼろの身体になるまで戦ってきたんだものね。隙なんかないか。安心して、正真正銘の女の子よ。なんなら宿屋で試してみる」
「子供の冗談はよせ。そんな気分ではない。女性なら夜道は危険だぞ。わたしでよければ送っていくが」
だが、美少女は再び問うた。
「勇者ルーナの仲間にならぬか? 王との謁見をすませ、ギルドで仲間を探すようにと言われたのだ」
「こんな夜中にか?」
「勇者に昼も夜もあるまい。一刻も早く、王都アムジェラを魔からすくわなければならない。いや、世界をだな」
大きく出たものだ。世界を救うなど、子供が抱く冒険者の夢ではないか。
「……勇者さまの噂を俺たち冒険者は聞いてないぞ」
「伝承では聞いたことはあるだろう」
魔が現れ、世に闇が蔓延る時、月の女神の祝福を受けし赤目の子が魔を討つであろう。単なる伝承かと思っていたが、なるほど、ルーナが赤目の子というわけか。しかし、いくらなんでも女性が魔王を倒せるのだろうか。イメージでは筋骨隆々とした大男なんだけれどな。
「信じられないのも無理はない。だが、わたしの魔法の力をみたら腰を抜かすぞ。さあ、ギルドに案内するのだ」
冒険者ギルドは24時間朝から晩まで受け付けをしている。それもこれも魔が蔓延っているせいだ。特に満月の夜は魔の動きが活発になる。寝ずの警備なんてクエストもあるくらいだ。体力勝負だが、城が落とされることはないだろうし、仲間も多く、油断さえしなければ美味しい依頼。しかし、そんなブラックで過酷な冒険者の世界で15歳の少女がやっていけるものなのだろうか。他人と言えばそれまでだし、赤目だから勇者だというのも、嘘ではないにしても、それならば赤目の子は全員勇者ということになってしまう。この子は貴族に、権力者に担がれているのではないかという予感がした。
「しょうがないな、おまえがちゃんと冒険者としてやっていけるか、しばらく戦士としてみせてもらうぜ」
引退の仕事としては悪くない。自分も言われたが、才能の有無や、不運な事故やケガもある世界だ。頼れる仲間もいないまま少女を放り出すのは男として気が引けた。
「そうか、光栄に思うがいい。勇者ルーナの第一の仲間だぞっ! はぁーっはっはっはっはっ!」