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ドラゴンプロトコル  作者: 流転小石
第4章 過去の真実と未来への希望
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第51話 転生前準備2

調子の乗るコラソンが扉に手を向けると、その扉から1人の人物が現れた。


「お姉様ぁ!」

「ロザリー姉様」

「ロザリーお姉様どうして」

「一体どういう事だ? コラソン」


ロリ、パウリナ、シーラはラソンからの言い付けでロザリーには龍人の事は秘密にしろと仰せつかっていたので内緒にしていたのだが、その龍人達から招き入れられたように緊張して歩くロザリーだ。

その態度は明らかに緊張していると全員が解かるほど”ぎこちなかった”。

用意された椅子に腰かけるロザリー。


「まあまあ、この場に呼んだ事は後で説明しますので」

適当に誤魔化すコラソンが続けて説明した。

「ではロザリーさんから重大な発表をして頂きます」


立ち上がるとロザリーは真剣な表情で発言した。

「みなさん、これからわたくしの話す事は、わたくし達家族にとって、とても喜ばしい事となるでしょう」

一体何の事だか理解出来ない一同だ。


「ロリ、あなたは知っているはずよ」

「ええっ!?」

「あなた達三人には重要な方の事です」

ロリ、パウリナ、シーラは首を傾げた。

特に自分は知っていると言われたので、思い当たる節が無く疑問だったロリ。


「では、わたくしから紹介しますのは我らの夫たるエルヴィーノの、本当の第二夫人です」

「なにぃ、どういう事だロザリー!」

「「本当の第二夫人っ!!」」


パウリナとシーラは新たな言葉を聞いて普通に驚くが、その意味を理解したロリは両手で口を押え、ウルウルした目で見ていた。

そして即座に詰め寄ってロザリーの両肩を掴み問いただすエルヴィーノ。

その表情はロザリーの良心を鷲掴みにしていた。

「一体、どう言う事だロザリー」

苦笑いするしかないロザリーに口を出す者が居た。


「モンドリアンさん、いらっしゃいますよ」

コラソンが教えてくれてロザリーが入って来た扉に顔を向けると、何故か龍人達が入口の前で二列に並んでいる。

あのフィドキアさえもだ。

そして扉から出て来たのは、漆黒の長い髪を持つエルヴィーノと同じ瞳の色をして少女の面影を残した麗しき存在だった。



この時、メルヴィが放つ”支配の眼差し”には誰も気づかなかった。

支配の眼差しとは、魅力や魔眼の最上位能力だ。



妻達の視線は釘付けにされ、その少女が歩いて来た。

身体はワナワナと震え、涙腺が崩壊したかのように溢れ出る涙を拭う事も忘れて叫び寄る。


「メルヴィィィィィッ!」


ガッシリと抱きしめた。

「会いたかった。会いたかった。・・・心配してたんだ。もう戻らないのかと思ってた・・・メルヴィ生きていてくれて本当に良かった・・・愛してるよぉメルヴィ」

「ふふっ。ただいま、お兄ちゃん」


そう言ってエルヴィーノの頬を両手で押さえると唇を押し付けて来た。

勿論メルヴィの方から舌を入れて来てだ。

するとグイグイと股間を擦りつけ両腕の力が増すメルヴィ。

まるで初めての時の様に。

(あああぁぁぁやっぱり最高ぉぉぉっ)



その時別の場所で観ていた者達は。

「お姉さまの浮気ものぉぉ!!」

そう言ってテネブリスの唇を襲うアルブマだ。

(まぁ、こうなるのは解っていたけどね)



エルヴィーノが即座に感じ取ったのは、行方不明になった時より明らかに成長している霊峰だ。

抱きしめた時に直感でロザリーを抜き一番大きくなっているであろうと考えた瞬間、相棒が起動し出した。


「ふふっ、それは・・・夜にね」

あっさりと見抜かれて距離を取るエルヴィーノだ。


「みんな・・・随分以前から消息が途絶えていた・・・メルヴィだ」


「ところでメルヴィさんが何故この場所に居るのか知りたいでしょ?」

心を読まれているのかコラソンがそのように話しかけて来た。


「ああ、知りたい。どうしてなんだメルヴィ」

まるで予定されていたかのように話し始めるメルヴィだった。



※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero



「ある時、山の中を歩いていると足を滑らせて谷に落ちたの。それで気が付けばこの世界に居たの」

(こんな嘘で信じてくれるかなぁ)


「それで?」

「直ぐに戻れなかったのは龍人の使者になる為に修行をしていたの」


なぜ龍人の使者になる必要があるのか疑問だが、無事に戻ってくれたので些細な事は気にしないエルヴィーノだ。


「だけどね、エルフ国に大聖堂が出来てから毎日ロザリーさんがお祈りしていたの。私の安否と無事に戻って来るようにと」


一同が注目すると照れて目をそらし俯くロザリー。

この作り話を聞かされて罪悪感と言う刃で心がズタズタに切り裂かれていた。

一瞬、何故ロザリーが? と思ったが母からロザリーとロリに打ち明けた事を思いだしたエルヴィーノだ。



「その思いが龍の石像を通して強い思念として伝わって来たそうなの。それでね、私がこの場所で修行していたけど、お許しが出たの”戻っても良いって”。それで今回シーラさんの試練に合わせて、みなさんを連れて来てもらったのよ、この龍国の世界に」


「龍国の世界!」

「「龍国・・・」」

「ありがとうロザリー」

驚く妻達をよそにエルヴィーノにギュッと手を握られて感謝の言葉を貰うロザリーは、今にも逃げ出したい気持ちだが辛うじて体裁を保った。


エルヴィーノはコラソンの側に行き告げた。

「ありがとうコラソン。本当にありがとう」

手を取り心の籠もった眼差しでお礼をすると、妙に照れるコラソンだった。

「私は大した事はしていませんよ。全てメルヴィさんの精進の賜物です」

大きな借りを作ったと考えるエルヴィーノだ。



★分岐点1★



「それでは皆さん、メルヴィさんと積もる話もあると思いますが、しばし会話を楽しんでください」


ここで龍人達が席を立ち、一旦席を外すと言う。

「余り時間は掛りませんが、しばらくは映像でも楽しんでください」


コラソンの指示のままメルヴィを迎えて話しを続けた。

何年もこの場所で何をしていたのかなど。


妻達の紹介しようとすると

「私は良く知っているから、私の事を紹介してよね、お兄ちゃん」

「えっ。そうか、解かった」


何故メルヴィが有った事も無い四人を知っているのか解らなかったが、改めてロザリーから紹介する。


「改めましてロザリー・ファン・デ・ブリンクスです。宜しくお願い致します」

「はい、宜しく”ロザリーさん”」

「ロリ・ヴァネッサ・シャイニングです。宜しくお願いします」

「やっぱり実物の方が可愛いわねぇ。こちらこそ宜しくねロリ」

「初めましてパウリナ・モンドラゴンです。宜しくお願いします」

「うん、宜しくねパウリナ」

「初めましてシーラ・ジャンドールです。宜しくお願いします」

「今回は頑張ったね。宜しくシーラ」


“あっけらかん”としたメルヴィとの挨拶も終わり、一言も言葉を発しない妻達。

その瞬間を待っていたとばかりにメルヴィから運命の幕が切って落とされた。



「じゃぁさ、面白い場面が見られるから皆で見ようよ。ただしね、龍人達が帰ってくるまで質問は禁止だよ。良い?」

女性達は全員頷いた。


そしてエルヴィーノの顔を見て確認する。

「良~い?」

「解かった。解かったから」


ドンドン近づいてくる顔が妻達の見ている前で唇が重なると思った瞬間だ。

「そっ、解かったなら良いけど、本当に質問は一切受け付けないからね」


そう言うとメルヴィはパンパンと手を叩く。

すると1つの壁面が巨大な画面となり風景が映しだされた。

全員がメルヴィ側に移動して映し出される映像を見ている。

その風景は見覚えが有り転移して祝宴を開いた場所だ。


その画面に龍人達が現れたが別の部屋に素通りする様だ。

だが、コラソンはこちらに手を振っている。

何故かパウリナはそれを見て手を映像に振っていた。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



そして戻って来た龍人達と一緒にエルヴィーノ、ロリ、パウリナ、シーラが横になったまま宙を浮いて運ばれて来た。

浮遊している1人1人を椅子に座らせて腕枕を作り寝かせる様にしている。


この時点では自分達の取った行動を、何かしらの方法で再現しているのだと思っていた四人だった。


そしてそれぞれの声も壁から伝わって来ていた。

自分の姿や声が妙に恥ずかしく感じていたのは、どうやら全員の様だった。

しばらく沈黙のまま映像を見ている一同。

ロザリーが登場し、メルヴィも現われた。

全員の前で泣き顔を晒している自分が恥ずかしいエルヴィーノ。


そして感動の口づけだが、悶々とする怒りのオーラが漂って来るのが肌で感じ取れたエルヴィーノは目を閉じて時間が過ぎ去るまでジッと待っていた。

そうこうしているとコラソンが話だしエルヴィーノが何度もお礼をしている。



★分岐点2★

★分岐点1★に戻る。



「それでは皆さん、メルヴィさんがこの世界で精進されて得たのは何だと思いますか?」

コラソンの問いかけに元気よく答えるパウリナ。


「龍の召喚魔法陣!」

自分だけ召喚出来ず、もしかすると修行すれば可能性か有るかと思ったパウリナだ。


「うぅ~ん、似てるけど違うなぁ」

「じゃ、コラソンの召還!」

「あぁ~大分違うけど惜しい」

「じゃぁねぇ・・・」


(そろそろ本題に)

幾度となくコラソンとパウリナのやり取りが続くと優しく念話するメルヴィだった。

「コホン。えぇでは、メルヴィさんが習得されたのは特別な転移魔法陣です」


「「「転移魔法陣」」」


妻達が驚いた。

確かに転移魔法陣を扱う者は国に登録しなければならない。

しかし人数は少ないが決して珍しい魔法では無い。


「転移魔法陣だったら俺でも使えるけどダメなのか?」

そこに本人からエルヴィーノに注意が入る。

「聞いて無かったの? 特別な転移魔法陣よ」


「短距離、長距離、物や生命体の数、召喚もそうだよな、後何ある?」

何が特別なのか解らないので聞いて見た。


そこに

「コホン。改めて話しましょう。皆さんは選ばれたのです。シーラさんの試練を利用しましたが、皆さんの力を拝見した上で決まった事です。えー、驚かないで聞いてくださいね。最長で皆さんが寿命を全うした時にメルヴィさんが我らの龍国へ送ってくれるでしょう。因みに拒否権は有りません」


「はぁ?」

「「「ええっ!?」」」

「何っ、どういう事!?」


全員が疑問符の返事だが四人の解釈はこうだ。

天寿を全うしたら、メルヴィがその身体なのか魂を龍国へ送ると言う意味合いだ。

「皆さんが考えられた事で、ほぼ合っていますよ」

「いや、そう言う事では無くて、何で死んだ後に龍国に来るんだ?」

「あぁ、そこですか。皆さんが我らの国の民となる事を許されたのです」


「コラソンが許可したの?」

仲の良いパウリナの質問だが首を横に振るコラソン。

「ロリさん」

「はっはい!」

急に名前を呼ばれて驚くロリ。

「サンクタ・フェミナの崇める神は?」

「はい、アルブマ・クリスタ様です」

うんうんと笑顔のコラソン。

「アルブマ・クリスタ様もあなたの事をいたく気に入られて推薦されていましたよ神様に」


「えええっ神様が神様にぃ!」

「はい、地上の神様は沢山いますが、我らが神と呼ぶ存在は1つだけです」

「それは・・・」

「それはですねぇ・・・もう一度この場所に来た方から御目通りをして頂きましょうか」

嬉しそうに答えるコラソン。



「でもよぉ、死んでメルヴィが龍国に連れて来ても身体は無いぜ?」

「流石はモンドリアンさん。そこに気づきましたか。別に死んだ後で無くても構いません。今すぐでも良いのですが、地上でやり残した事も有るでしょ? その為のメルヴィさんです」

「なるほどな。俺達が地上に未練が無くなったら神の国に行けるわけだ」

「はい、正解です」



パウリナとシーラは既に腕組みをして、やりたい事を整理している様だ。

ロザリーは困惑しているがロリは小刻みに震え顔がほんのり朱に染まっていた。

(一体何を考えているのやら・・・)

(はぁぁぁ私が龍国の世界に・・・天界に迎え入れられるなんてぇ・・・戻って話したらみんな何て言うかしら・・・)



「あぁ、みんな聞いてくれ」

家族に言ったつもりのエルヴィーノ。


「一度戻ったら俺達だけで今後の計画を出して見ようぜ」

「「「はい」」」


「質問が有ります」

震える声でロリが発言した。

「龍国にお世話になると言う事は、寿命はどうなるのですか? それと地上にはもう戻れないのですか?」

「流石はサンクタ・フェミナですねぇ。目の付け所が良い」

コラソンから褒められたロリを見てラソンも嬉しそうな様子。


「皆さんに最終確認をしたのちに寿命は無くなります」

「マジか!!」

「「嘘っ本当に!」」

言葉にする者に両手を口に押えて喜びを隠す者と別れた様だ。

((((死ぬことのない永遠の命・・・”永遠に出来るわ”))))

妻たちの(よこしま)な思念が突き刺さるようにエルヴィーノに伝わった。


「あなた達が移る時点で龍人達が行っている地上の監視を引き継いでもらう予定です。だから地上には頻繁に行く事になるでしょう」

「龍人の変わりって俺達が歳を取らずに存在していたら不味いだろぉ」

「それは、ほら、変化の魔法が有るでしょ」

「あっ、なるほどな」

エルヴィーノの質問にも対応し納得してもらったコラソンだ。


「ただし、皆さんの関係のとなる方達とは接触を慎んでもらいます。まぁこれはその時に説明しましょう」

(慎むと言う事は、禁止では無いのか・・・)

ふと疑問に思ったエルヴィーノだ。


「他に質問は有りませんか?」

「まぁ、後から聞いても良いだろう?」

「勿論ですとも」


妻達は事の重大さに戸惑っているようだった。

特にロリが酷い。

自問自答しているようだが挙動不審だ。

そう言うエルヴィーノも無事だったメルヴィを早く家族に合わせたい。

特にアロンソにだ。


「じゃ一旦俺達は戻っていいか?」

「勿論構いませんよ」

コラソンの許可を取ったので立ち去ろうとするが思いついた。


「なぁ、どうやって帰るんだ?」

誰に言ったわけでは無いが手を繋いでいる者が教えてくれた。


「私が転移魔法陣を使うわ。その為の私だもの」

微笑むメルヴィが可愛くてエルヴィーノの思考は半分以上”夜”の事だが、他の妻達の前で露骨な事も出来ず、まずは家族に合わせる事を考える。


「じゃ準備するね」

ロザリーとメルヴィを入れて六人だが、全員で手を繋ぎ魔法陣に魔素が流れていく。

全員が感じたが信じられない量の魔素が魔法陣使われている事を理解した。

その魔素を供給するメルヴィを疎ましい目で見つめる妻達だった。


「では、行きますよぉ」

メルヴィがそう言うと一瞬で風景が変わった。


下界組転移で戻る。

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