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ドラゴンプロトコル  作者: 流転小石
第4章 過去の真実と未来への希望
37/54

第37話 罪と罰、我慢出来ずに・・・

「・・・お前達には罰を与える」

黒づくめの男が言い放った言葉には男達の抵抗心を掻き消し純粋な心に楔を打つかのように深く・・・深く刻まれた。


ガックリと膝を付き呆然とする者。

嗚咽交じりで大地に塞ぎ込む者。

立ったまま大声で泣き喚く者。

手を握りグッと歯を食いしばって我慢する者など様々だった。


その中で頭目らしき男はエルフの依頼を受けた事が原因だと理解しているものの涙目で黒づくめの男に反論した。


「俺達が一体何をしたと言うんだ!!」

「お前達の罪は・・・知る必要は無い」

下界の者達に神の話しをしても無意味だと考えた龍人だ。

「そっ、そんな・・・何も解らないまま罰を受けるのか!?」


フィドキアの素っ気ない回答に愕然とする頭目に反して、やけになった配下の男が動いた。


「ふざけるなぁぁぁぁ!!」


持っていた剣を抜き、フィドキアに襲い掛かった。

瞬間、ゴォッと豪風音がして横に飛ばされた


ザザァァァァッと横滑りした男は蠢いていた。

別の男が見に行くと体の左半分が窪み生きているのが不思議な状態で、とても手を出せる状態では無かった。


「あらあら、随分と無謀な事をしたわねぇ。痛いでしょう、直ぐに楽にしてあげるわ」


突然、そこに今まで居なかった女性の声がした。

息も絶え絶えに今にも死にそうな男は涙目に神の姿を見たと思い込んでいた。


ラソンが手を(かざ)すと、男の身体が見る見るうちに元に戻っていった。


「ああぁっ女神よぉ!! ありがとうございますぅぅ!!」


一方の黒づくめの男が質問していた。

「一応確認だが、お前達に依頼したのは誰だ?」

「俺達が口を割るとでも思うのか?」

「・・・ではこうしよう。お前達の応え次第では直ぐに死ぬか、”しばらく生きている”か変わって来るぞ」

「・・・」

「あ、アニキ・・・」


手下たちが頭目の顔色を見ていた。


「チッ、俺達を雇ったのはエルフの伯爵だ!」

「ふむ、それは男なのか? それとも女なのか?」

「伯爵は女だ」


「・・・良いだろう、我が与えるお前達の罰は、この”迷宮”で永遠に生きるのだ。決して外に出る事も死ぬ事も無い」

「はぁぁ!? 何言ってんだ、あんた! それにここは迷宮なのかぁ!?」


「そうよ、あなた達には侵入者と戦ってもらいたいの」

ゆっくりと歩くラソンの後ろには先程の男が付き従っていた。

「でも、その身なりでは強そうじゃないわねぇ・・・」

「ふむ、では始めるか」


まずはフィドキアが何かの魔法陣を発動させた。


男達を包む魔法陣は、温かく攻撃性の物では無いと即座に感じ取った頭目だった。

輝きが消え魔法陣が消え去ると黒づくめの男が問うてきた。


「さて、どんな気分だ不死になった身体は?」

「「「なんだとぉぉぉ!!」」」

「さっき言っただろう。お前達は永遠に生きるのだからな」

「馬鹿な!! ありえんっ!!」

「でもアニキィ、剣で切られたらどうなるんだろう?」

手下の質問に答えるフィドキアだ。


「例え、首を刎ねたとしても、消し炭に成ろうとも、しばらくすれば元に戻る」

「・・・信じられん・・・」

「時間はたっぷりとあるから自分達で試すと良かろう」


「じゃ仕上げをするわね」

「まだ何かするのか!?」

仲間の女が何かするので恐ろしくなった頭目だった。


「今のあなた達では弱すぎるから、魔物になって少しは強くなってもらいまぁす」

男達は、女の話した”意味”が理解出来なかった。


「では」

その言葉の後、先程と同様の魔法陣が発動した。

だが、男達は即座に理解した。

自らの体が見る見るうちに変わっている事に気付いたのだ。

腕が太くなり、身体も大きくなって目線が高くなった。

周りを見ると(おぞ)ましい化け物が数体、自分と同じ様に驚いている様子だった。

魔法陣が集束すると、周りには見た事も無い魔物が数体いで(わめ)いていた。


「お前達は種族の言葉を話す事は出来ないが、聞き取ることは出来る。そしてお前達同志が念話で話す事も可能にしてある」


目の前の魔物達からは叫び者や、うめき声をたて泣いている魔物もいた。


「ハイハイ、皆さんじゃぁねぇ。あっそうだわ、あなた達はもう食事も必要無いからね。それと階段が有るけど、あなた達は通れないから無駄な事はしないようにね。この階層を頼むわねぇ」

そう言って女が歩き出した。


「最後に我らは二度とお前達に会う事は無い」

黒づくめの男が言い放つと女の後を追い、階層の端にある階段を下りて行った。


(アニキィィィ!)

(御頭ぁぁぁ!)

(うおぉぉぉぉぉ!)

(うっうううぅぅぅ・・・)

(なんてこった・・・)


途方に暮れる元男達は魔物として迷宮で永遠に生き続ける事となった。

(どうしてっ)

(クソッ)

(チクショォォォォォ!!)

(ウッウッ・・・)

(本当に元に戻れないのかなぁ?)






最下層の居間でくつろぐ龍人たち。

「ねえ、どうしょうフィドキアァ・・・やっぱり”あのエルフ”だったわぁ」


“あのエルフ”とは、前世のテネブリスを誘拐して転生させた張本人だ。


「ふむ。神々も見ておられた事だろうし、我は指示無く行動は出来ん。気になるならアルブマ様に掛け合ってみたらどうだ?」

「ええ、まずはお母様に聞いて見るわ」



※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero



その頃テネブリスは・・・アルブマの制止を振りほどき、外郭で成龍体になって暴れていた。

今回ばかりは、流石のアルブマも真剣に止める事はせず、好きにさせていたのだった。

流石に真犯人が解ってまで姉を拘束しようとは思わなかった。


しかし一計を思いつき念話した。

(お姉様、あの子と”お兄ちゃん”を見て無くて良いの?)

アルブマの強い念話で、ピタリと動きが止まったテネブリスだ。

そして二足歩行型に収縮していった。


「アルブマ、ありがとう。私が居なくなってからの家族の行動を全て監視するわ」

とりあえずホッとしたアルブマだった。


そしてテネブリスはアルブマと約束した。

決して龍国内では暴れない事。

もしも暴れるならば外郭へ転移する事。

この二つを約束して自室へと戻って観察をする事にした。



「・・・」

「お姉様・・・」

「みんな心配して探しているわ・・・」

「”お兄様”も森の中を飛んで探していますわ・・・」

「私は・・・もう居ないのよ・・・」

「お姉様・・・」

(おのれ、あのエルフめぇ・・・絶対に許さない・・・必ず殺してやる・・・)


画面で見える両親と”叔母”に愛するお兄ちゃんが必死で自分を探し回る姿を見て感情を抑えきれなくなるが、隣にアルブマが寄り添い爆発するには至らなかった。



しかし・・・

(フィドキアよ、聞こえているか?)

(は、我が神よ)

(あのエルフの女を殺せ。下界にいる龍の末裔にエルフの国を襲わせるのだ)

(は、御心のままに)

(即座に行動せよ)


慟哭を必死に我慢したのだが、我慢出来ずにフィドキアに念話を放つテネブリスだった。



※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero



一方で下界の龍人たちは


「ラソン、すまない」

「えっ何?」

「我が神から指令が有った」

「さっきの念話?」

「そうだ。我はこれからワイバーンを引き連れてエルフの国を襲う」

「えええぇぇぇぇっ!!」


まさか愛しい者が自分の眷族達を襲撃するとは夢にも思わなかったラソンだ。


「で、でもぉ大神様が”あのエルフ”は殺しては駄目だとテネブリス様に言ったのでは無かったかしら?」

その事はアルブマにも伝えられたので眷族であるラソンは知っていた。

「確かにそうだ。しかし、我は我が神の手足である以上、命令のままに行動するだけだ」

「そんなぁ・・・お母様と、アルブマ様に聞いてみるから待ってよぉ」

「我が神は即座にとの仰せだ。お前が行動するなら我よりも早く動けば良い」

「解かった、一度戻って直接説明して来るわ」

「ふむ、我も行動する。忘れるな、我を止める事が出来るのは我が神だけだと言う事を」


2人は意を決して別行動をとった。


フィドキアは”小型の龍”に変身して、更には眷族召還で多くのワイバーンを呼び出した。

(お前達が襲うのはエルフの国だ、行くぞ!!)

強い念話を放ち、配下に命令したフィドキアだった。


ラソンが転移したのは龍国だ。

「お母様ぁ大変ですぅぅぅ!!」

「あら、どうしたのラソン。貴女は下界に居たはずでは?」

「それが、フィドキアがテネブリス様の命令でワイバーンを引き連れて”あのエルフ”を襲う為に向ってます」

「何ですってぇ!!」


ラソンからオルキスに伝えられ、オルキスからベルスに。

そして3人でテネブリスの部屋に来ていた。

何故ならばアルブマがそこに居るからだ。


神である2柱の前で説明する3人。

「お姉様っ!! まさかフィドキアに襲えと命じたのぉ?」

「・・・ごめんなさいアルブマ・・・我慢出来なかったのよ」

「お母様が言ったでしょ、アレを殺すとお姉様が悲しむ事になると」

「意味が解らないのよ・・・どうして私がこれ以上悲しむのか」

「とにかくフィドキアに中止命令をだしてお姉様」

「・・・」

「お姉様、今までお母様の予知夢に間違いは無かったでしょ」

「・・・」

「わたくしは・・・もうお姉様に悲しまないで欲しいだけなの」

「・・・」


そんな神々のやり取りを見ていたラソンは気が気では無かった。

フィドキアと同時に行動した為、既にエルフ達を襲っている可能性が高いからだ。


ラソンの心配は、フィドキアが”あのエルフ”を殺して結果、自分達との種族間で何かしらの問題が生じないかと言う懸念だ。

“そんな事”しか大神が予言したテネブリスが悲しくなる事が想像できなかったのだ。

テネブリスとアルブマがどうして仲違いするのかも想像出来ないが、そうなれば結果的に自身とフィドキアの関係も最悪になってしまうと考えたからだ。

そして同様の事をベルスも考えていた。

ベルスもベルムと離れたくない。

アルブマの眷族は同じ考えだった。


「「「テネブリス様、どうかフィドキアに中止命令をお出しくださいませ!!」」」


アルブマの眷族達に言われて驚くテネブリスだ。


「しかし・・・」


「お姉様がどうしてもと言われるなら、わたくしも考えが有ります」

「・・・いったい何を・・・」

「お母様に言って直接フィドキアに念話してもらいます」

「アルブマッ・・・」

しおらしくなったテネブリスがつぶやいた。

「・・・わかったわ」


「お姉様!!」

「「「ああぁ、良かった」」」


その場に居た全員が安堵した。


「ではお姉様早く中止命令を」

頷いて念話するテネブリス。




(フィドキアよ、聞こえますか?)

(は、我が神よ)

(ただちに攻撃を止めて引き返しなさい)

(・・・は、承知致しました)

(フィドキア・・・苦労をかけますね)

(いえ、決してそのような事はございません)




この時、念話で応えていたフィドキアは王宮を自らのブレスで攻撃していた最中だった。

突然の念話で中止を言い渡されて驚いたが、もう1つ驚いた事が有った。


それは突然現れた白装束で頭巾をした”エルフ”に、 自らのブレスを魔法で遮られたからだ。

だが、その魔法はエルフが扱う事の出来ない魔法だった。

瞬時に魔法使いの正体を特定し、変身を解いてわざとらしく話しかけた。




「よくぞ我のブレスを耐えた。顔を見せろ」

「やなこった。それよりもお前は誰だ。何故エルフ国を襲った?」

「おぉ我の名か。我は龍人のフィドキアだ。お前の名は?」

「俺はエルヴィーノ。エルヴィーノ・デ・モンドリアンだ」

エルフに聞こえないように小さい声で答えた白頭巾だった。


「それで、フィドキア。何故エルフ国を襲った?」

「ハァッハッハッハァ」

フィドキアは笑って答えた。


「最近生意気だったからなチョツト懲らしめてやろうと思ってな。そしたら、我のワイバーンが一瞬で首を飛ばされてな、その原因を探してみたら、ダークエルフか・・・少し前から殆ど見かけなくなったが、どうしてだ?」

この時の”どうして”とは、お前はどうして生きているのか?と言う意味だ。


「それは今答える必要があるのか?」

周りには街の防衛に向かっていたエルフの兵士達が戻り取り囲んでいた。


「別に構わんが、お前とはゆっくり話したくなったぞ。近いうちに又会おう。とりあえず顔見せてくれ」


そう言うとフィドキアが手を下から上に上げた。

すると、小さな竜巻のような突風が白装束の魔法使いの周りにでき、一瞬で頭巾が飛ばされた!


「ワァァ!」

白装束の魔法使いは慌てて空間から真っ黒な毛布を取りだして頭を覆った。


「ハッハッハァッ、そう照れるな」

「照れてない馬鹿!」

「よし。お前の顔は覚えたぞ」

「俺の顔なんか覚えなくていいから」


ダークエルフと会話しながら王宮に生き残った者達を見渡すと、”例の女”を確認した。

そして、フィドキアが振り返り発光する。

そして大きな声で叫んだ。


「エルヴィーノ・デ・モンドリアンよ。また会おう」

そう言って龍に変身したフィドキアはエルフの国を後にした。


この迷宮と魔物は、あの・・・のアソコに出てくるアレですね。

後に一方的な殺戮を行ない、適当な理由を付けた黒い人でした。

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