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ドラゴンプロトコル  作者: 流転小石
第2章 テネブリスの回想
25/54

第25話 忌まわしい出来事6

予定と違うページだったので差し替えました。

ロサは眷族で始めて性別を分けて創生された個体だ。

神々の指示で同族との子を成し全ての龍人の親として崇められると同時に、全ての同族から”浮気者”と言われる日々を”熱心な弁解と奉仕”を行なっている。


中でも我こそがロサの片翼だと言い切るのが聖白龍の第1ビダ、オルキスだ。

ロサの初めての相手として不動の自信を持っているオルキス。

神に認められた名前オルギデア・ロサ・ティロに自分に冠する名が入っている事が全てにおいて優越感を与えているからだ。


そんなロサに駆け寄って飛び付き、有無を言わさず唇を押し付けた”闇のテネブリス”。

「なっ、何を・・・ムグゥ・・・」

崇拝する神からいきなりの口付け。


その瞬間は驚いたが同時に否定すれば不敬に当たると思い身を(ゆだ)ねた。

敬愛する神の唇の柔らかさに歓喜し・・・

回りに目撃する者が居ないか警戒し・・・

愛する同族たちに絶対知られる事が無いように戦慄し・・・

現在、至高の時間を記憶の中に隠蔽する事に集中するロサだ。


「ふふっ、可愛いロサ。今日もオルキスの所に行くのかしら?」

「は、はい。我が神よ。しかし私などが神の唇に触れて宜しかったのですか?」

「あら、いくらオルキスが妻でもお前は私の眷族よ。眷族は全て私のモノなの」


微笑みながら当然のよう自らの考えを説明する”闇のテネブリス”。

そのように言寄れると否定しようが無く同意するロサ。


「これから”朝の挨拶”は毎回だからね」

「・・・はっ」


((やばい。本当にやばい。同族に見られたら最悪だ。毎朝だってぇ!? しかも我が神の決定に逆らう事など出来ないし・・・困ったなぁ・・・))


そして瞬時に毎朝の行動に追加する項目が出来た。

朝一番に神の御前に出向く事だ。

そうすれば同族に合う事も無く、神の命令に背く事も無い。


べたべたと体に触る神に疑問を感じながら、嫌な顔せずその場を無難に切り抜けたロサだった。


「しかし・・・一応母上に相談するか・・・」


神の急な変貌ぶりに疑問を感じ、創造主である使徒ベルム・プリムに会いに向かった。


「母上、実は我らが神の事でご相談が有ります」

「ロサ、一体どういう事かしら。お前が神の事で相談などと・・・」


今朝の出来事を説明するロサ。


「ロサその事、誰かに見られたり他の者に話したりはしてないでしょうね?」


多少怒気を含んで問いかけるベルム。


「はい、まず母上にご報告しました」

「解かりました。この件は極秘にして”毎朝”私と訪問しましょう」


ベルムは眷族の神である母テネブリスの事を誰よりも理解していると自負している。

もっとも、”ある一面”はアルブマだが眷族としてはテネブリスの理解者だと自負しているのだ。


何故なら遠い昔、創造主たる母テネブリスと”義姉”のアルブマに始祖龍スプレムスの四体だけだった時期がある。

長い時を経て現在に至るまで常にテネブリスを見て敬愛して来たからだ。


変身してからは母と義姉が仲良くなり2人だけで”楽しい事”をしている事も知っていたが、同じ事を思っていた存在(ベルス・プリム)に相談され、次第に母達を真似る様になっていったのだ。


母娘二代で同族と愛を分かち合う様になり、両方の親に公認でベルムとベルスが愛し合う様になった経緯がある。


ベルムはベルスに悩みを打ち明け、一緒にアルブマに事の次第を告げて相談する事にした。



既に龍国では文字が存在し、様々な魔法研究が魔法紙で報告されていた。

そんな報告書を見て署名をするアルブマの耳に入って来るベルムとベルスの報告。


“パキッ”


持っていた魔法の筆記具を手で折ってしまった。


「何ですってぇぇ!! もう一度詳しく話しなさい」


怒気を含めた命令に驚きながら説明する2人だ。


“バンッ”


机を思いっきり叩くアルブマに驚く2人だが、逆にこの程度の事で済んでいる事に安心した2人だ。


「お姉様が他にもこの様な行動をしてないか全ての使徒に聞いて回りなさい」


神の命令は絶対だ。

2人で即座に行動開始した。


そして七天龍の使徒フォルティス・プリムから衝撃の事実を聞き、その事を報告した時のアルブマがどれほどの怒りを露わにするのか恐怖する2人だった。


愕然とするベルムに問いかけるベルス。

「そんなに落ち込まないで、まだ他の子たちにも聞かないと」

「まさか他の神々にも同じ事をして無いわよねぇ、ベルスゥ」

「解らないわよ、だからそうじゃ無い事を祈って聞きに行きましょう、ベルム」


しかし、2人の祈りは虚しく逆の結果だけが七海龍の使徒リベルタ・プリムと翠嶺龍の使徒オラティオ・プリムから説明された。



龍国の道端には数々の木々や綺麗な草花が生い茂り、小鳥が囀っている。

真っ白の道や建物に色とりどりの花。

そんな美しい世界だが、その道端に並ぶ椅子に腰かける2人の使徒は絶望のどん底に居た。


「ベルスゥ報告は貴女がしてきてよ」

「嫌よぉ、私だけが怒られるのは嫌よぉ」

「解っているわ。でもこれを報告すると・・・私、殺されちゃうかもね」

「そんな事絶対にさせないから。私が絶対に守るから!!」

「ああ、ベルスゥ愛してるわ」

「私もよぉベルムゥ」




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




事の次第をアルブマに報告するベルムとベルス。


ワナワナと震えながら目の焦点は合っておらず虚空を見ながら嫉妬の炎に身を焦がすアルブマが叫ぶ。


「おのれぇぇぇぇっ!! こうなったら皆の前で引きずり出してやるわぁ!!」


アルブマが叫んだ言葉の意味は大神である母と出した結論の事だ。

現在行動しているテネブリスは別の龍格で、以前の姉を魂の奥から呼び起こす為の怒りと決意だ。


しかしベルムとベルスはその事を知らない。

ベルムが介抱していた頃は絶えず寝ており、最近はまともに話しもしていないからだ。

ベルスに至っては、すれ違っても見向きもされないので不思議に思っていたのも事実だった。


そんな2人がアルブマの激昂する姿を見て驚愕し緊張が走った。

浮気が元で神々が争いを始めると龍国内が破壊される可能性が高いからだ。

その被害は壊滅的であろうと簡単に想像出来た。


「いけません、お母様!! 国内で争うなんて、この国が滅んでしまいます」

我が娘の気が動転しているのか、訳の分からない事を言い出したと思ったアルブマ。

しかし、細かな説明をする事も面倒なので一言で済ます。


「我が意のままに行動せよ」

神として絶対の言葉だ。

しかしベルスは抵抗しようとした。

「ですがお母様・・・」

「ベルス、行くわよ」


母娘ケンカが始まる事を回避させる為にベルムが手を引いて部屋を出た2人だ。

そこに念話が響いた。


(大神と私の名の元に。全ての神々と使徒を中央広場に集めなさい)




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




ベルムとベルスが神々に説明したものの、全ての神々が顔を(しか)め憂鬱な気分になったと言う。


((ちょっとぉぉぉ、まさか白姉にバレタのかぁ・・・ヤバい、逃げよぉ))

((これは宜しく無いですねぇ。我は兎も角、姉上達がどのような行動に出るのか・・・))

((困ったなぁ、姉ちゃんたちに怒られるなぁ))


この時点では”闇のテネブリス”がとった行動を知るのはアルブマとベルムとベルスだけで、他の神々は自身の事しか知らなかった。


もっとも、これから起こるであろう内容はベルムとベルスも理解しているが当事者の使徒なので命令に従うだけなのだ。


中央広場には聖白龍アルブマ・クリスタを筆頭に七天龍セプティモ・カエロ、七海龍セプテム・オケアノス、翠嶺龍スペロ・テラ・ビルトスと、それぞれの使徒が並び立つ。


ベルムは騒動を起こした母である神を探して連れて来る役目があった。

念話でテネブリスが居る場所を確認し同行を求めるベルム。

眷族の研究施設に居た母を迎えに現れたベルムだ。


「あら、わざわざ迎えに来てくれたのかしら」

「はい、お母様。神々がお待ちになっておいでです」


((どうしたのかしら急に・・・アルブマが私の行動を知るのは解っていたけど、だからと言って何をするつもりかしら・・・まぁ良いでしょう。同族の前で私のモノにしてあげるわ))




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




ニコニコと広場に現れたテネブリス。

「みんなぁ~集まってるわねぇ」


広場の中心に輪になって並んでいる同族たち。

中心にはアルブマが立っている。

その場に誘導するようにテネブリスを先導するベルム。

向かい合うアルブマとテネブリスに同族達が緊張と戦慄に襲われる。

これからどの様な恐ろしい事が起こるのか想像出来ないからだ。



今回の件でベルムとベルスはアルブマに懇願していた。

決して争いを起こさずに話し合いで和解するようにと。

何も知らない2人にアルブマは答えた。

「私を信じなさい。全てはお姉様を取り戻す為よ」

2人は浮気した事に対しての報復と懺悔を想像していたのだ。



「お姉様、こうして一同が迎えて待っていたのは何故だかお分かりかしら?」



アルブマはベルムからはテネブリスに何も教えない様に命令した。

ベルム自身も理解している。

自らの母が行なった行為。

それは愛する者を裏切る行ないだ。


「もちろんよ、アルブマ」

微笑みながら同意する”闇のテネブリス”。


「貴女が名実ともに私のモノになると言う事を公表する事でしょ!?」

既に認知されているので誰も驚かなかった。


「違うわ。お前を追い出し、お姉様を取り戻す為よ!!」

全員が自身の耳と、その言葉を疑った。


誰もが認める長女と次女の仲睦まじい姿を見て龍国の安寧が常しえに続くものだと認識していたにも関わらず、アルブマの発した言動だ。


・・・お前を追い出し、お姉様を取り戻す・・・


誰もが理解出来なかった。


回りの者達の思考が停止している中で行動に出るテネブリス。

「ふふふふふ。アルブマァ、何を言っているの? お姉ちゃんはお姉ちゃんよ。以前の様に、又可愛い声を聞かせてちょうだい」


近づいて肩に両手を置くテネブリスの手に異様に力が入っていた。

「いたぁい」

グッと抱き寄せられるアルブマ。

思わず叫んでしまう。


「嫌あぁぁぁ!! 助けてぇお姉様あぁぁぁ!!」

目の前で絶叫するアルブマの大声にビクンッとした”闇のテネブリス”。



「・・・めろ。やめろおおぉぉぉ!! アルブマに手を出すなあぁぁぁ!!」



泣きわめくアルブマに叫ぶテネブリス。

その言葉にアルブマは理解した。

勿論周りの同族達は理解出来てはいなかった。


「お姉様・・・?」

「アルブマ、良く聞いて。私の中にもう1人”闇の私”が存在するわ。”闇の私”は思念が強く私は心の片隅に追いやられて閉じ込められて居る状態なの。信じてもらえるか解らないけど・・・」


「信じるわ、お姉様。お母様と解決策を考えたのよ、私の聖玉に”もう1人のお姉様”を移すの。そうすれば元通りよ」


「残念だけど、それは出来ないのよアルブマ」

「どうしてなのお姉様」

「貴女やお母様が思っている以上にもう1人の私は強力なの。今は抑え込んでいるけど、意識を奪われそうなのよ」

「そんなぁ、一体どうすればいいのぉ?」

「良く聞いてアルブマ。貴女の聖玉に私が入るわ」

「えええぇぇ!!」

「この身体に転移魔法が扱えない様にするわ。そして下界に転移させて欲しいの」


瞬時に意味を理解したアルブマだ。

最愛の姉を聖玉に移し、別龍を体ごと下界に追放。

姉と同族に母も交えて、身体を取り戻す方法を考える。


テネブリスは、心の片隅に追いやられ何も出来ずに待つだけの龍には成りたくなかった。

アルブマは、たとえ実体が無くとも親愛なる姉と念話が出来るだけでも心に余裕が出来て姉の実体を取り戻す意欲が産まれると考えたからだ。


遥か昔に魂の分割と合成の魔法陣は既に完成しているが、龍種の実験は行われてはいない。


当然だが意識が有り強い支配力が有ればこのやり取りを認識する事も可能だ。

((ふぅん、私の事知ってたんだ。だったらそうなる前にこの子を連れ出そうかしら))

アルブマを連れて下界へ逃げようと考える”闇のテネブリス”だ。


そしてテネブリスは魔法を唱えた。

すると硬直して動きが止まってしまった姉を見て驚くアルブマ。


(大丈夫よ、一時的に身体の動きを止める魔法を使ったの。だから急いでアルブマ。この身体に転移魔法の封印と、私の魂を分割させて憑代に憑依させる事と、残った身体ごともう1人を下界に転移させて。早く!!)


(させるかぁぁ!!)

“闇のテネブリス”が抵抗する。


ガクガクと震える姉を見て行動を始めたアルブマだ。

まずは龍国への特別な転移魔法の封印。

そして魂の分割。

そのまま憑代への憑依と封印。

沢山の魔法陣がテネブリスを覆う。



そして

最後に下界へ転移させる。

成す統べも無く下界に落とされた“闇のテネブリス”。


別れてしまった魂と”闇のテネブリス”

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