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我が闘争  作者: 伊勢 努
1/1

エンピレオの滅亡とカイーナの繁栄

(*)(*)(*)(*)(*)(*)(*)(*)

コキュートス連合 ウェルギリウス連合議会長許可文書


本書はコキュートス連合協約23条に違反していません。

本書はダンテ・アリギエーリによる帝國の繁栄を願い、発刊されています。

本書は帝國文學界の規約に則って発刊されています。

本書は下賤なエンピレオ王国の考えを一切含まれていません。

本書はエンピレオ人の購入、読書、売却を帝國政府の令状により、一切許されていません。


第1章:ダンテによる主張「異世界について」カイーナの民による主張「彼の生い立ち」

第2章:ダ主「美しき都、エンピレオ」カ民「エンピレオの圧政」

第3章:ダ主「ベアトリーチェとの出会い」カ民「リンボ大演説」

第4章:ダ主「アンテノーラ一揆」カ民「アンテノーラ陥落」

第5章:ダ主「トロメーア一揆」カ民「トロメーア陥落」

第6章:ダ主「ジュデッカ一揆」カ民「ジュデッカ陥落」

第7章:ダ主「エンピレオ警告」カ民「エンピレオ宣戦布告」

第8章:ダ主「軽薄な勝利」カ民「偉大なる勝利」

第9章:ダ主「ベアトリーチェの進言」カ民「ベアトリーチェとの婚約」

第10章:ダ主「下等民族」カ民「エンピレオを追放せよ!」

第11章:ダ主「金光康夫より。愛を込めて。」⚠︎解読不能。ダンテ独自の言語で書かれている。

最終章:ダンテの遺書

この本はエンピレオ王国の圧政を破り、我々カイーナ人を救った英雄、

ダンテ・アリギエーリの自伝である。


第1章

ダンテによる主張「異世界ついて」

私は今、異世界にいる。ある日何かの拍子に死んでからこの不思議な世界にいる。

この世界の街は竜人が闊歩し、露天に立ち並ぶ品々は得体の知れないものばかり。

木々には奇妙な模様があり、花は生物の規則を無視して乱れ咲いている。

子供達は木の切れ端から閃光を発射し遊んでいた。


私は世界で起きた時、大量の油とこの世界の公用語の言語能力だけを持ち合わせていた。

神は私に味方しなかったのか?


カイーナの民による主張「彼の生い立ち」


彼は産まれながら名門の貴族、アリギエーリ家に産まれた。

幼少期から聡明で、文武両道でありながら足元の野花にも気をかける優しさを持ち合わせていた。


18歳の頃、エンピレオの城下町を歩き、まるで害虫のように扱われた我々を気にかけてくださった。

持ち合わせたなけなしの油を売り、鞭打たれていた私たちにパンを与えてくださった。


その時、我々カイーナ人は神の趣きにより、彼に救われると定められたのです。



第2章

ダンテによる主張「美しき街、エンピレオ」

こちらの世界に来てから何日かした頃、ようやく街の風景に気をかけるぐらいには調子を取り戻した。

中世の洋式の家々に似合った妖精や魔法の光。なんと美しいことだろうか。

暫くは油を売って生計をたてていた。


この世界にも敗戦国は虐げられるような思考回路があるようだ。

エンピレオの英雄チヅキ?(そんな名前だったか)がカイーナ第二帝国を撃ち破り、

カイーナ人の捕虜は街中を鎖で繋がれ歩かされていた。

可哀想に思った私は鎖を持った看守のバレないよう露店で買ったパンを

その中で一番麗しい女性に分け与えた。彼女は黒い長い髪に、瓜実顔の美しい陶磁器のような肌をしていた。

彼女はとても感激していたように見えたが、私にとって一日一善の日課のうちのことなのでとっとと去ってしまった。


カイーナ人による主張「エンピレオの圧政」


エンピレオは卑劣で邪悪な転生者モチヅキにより、洗脳され、武器を取り平穏な生活を送っていたにもかかわらず、我々の鉄鋼技術を狙い戦争を仕掛けてきた!

平和な生活から一変し、我々は街中でまともに歩かせてもらえなくなるぐらい差別された。


第3章

ダンテによる主張「ベアトリーチェとの出会い」

先日助けた女性はどうやら敗戦したカイーナ帝国の王室の一人で、皇帝の愛孫だったらしい。

追い詰められた皇帝は農民の一家の子として育ててもらうよう願い、

上層部の処刑から逃したらしい。

ベアトリーチェはパンを与えられたことにとても感動し、恍惚した目でこちらを見つめ、こう言った。

私達の民族のために演説をしてくれないか、と。


カイーナの民による主張「リンボ大演説」

彼はリンボで我々のために時間を割いて演説をしてくださった。

およそ5分間のスピーチは何時間にも感じられ、我々の心を奮い立たせ、カイーナの民を再び集結させた。


第4章

ダンテによる主張「アンテノーラ一揆」

先日行った演説はカイーナの民を奮い立たせたのか、アンテノーラで一揆をすることが決まった。

アンテノーラ共和国はまさしく水の都で、中世の自体にもかかわらず水路が現代の日本より優れていた。

アンテノーラは列強国で、私は元いた世界に戻るための技術者を探すために一揆に協力した。


水路ネットが優れていると先述したが、弱点を見つけた。

水道の元をたどると、心臓部が街の中心があり、全ての管がそこから水を流していて、

そこの整備を安価で雇えるカイーナ人にやらせていたことだ。


共和国に繰り返し宣戦布告を通達したが、半ば無視された。


いつものように整備のために入るカイーナ人に警備はなんの疑問も持たず、いつもと違う荷物にも

全く訝しむ様子はない。


数時間後、心臓部から大量に流れ出た油は瞬く間に町中に広がり、待ち伏せたカイーナ兵が

至る所で火をつけて周り、アンテノーラは業火に包まれた。


カイーナ人による主張「アンテノーラ陥落」

幼い頃からの英才教育による圧倒的な頭脳により、

愚かなアンテノーラ人は都市が炎に包まれた時も熱さにはちっとも気づくことはないだろう。


第5章

ダンテによる主張「トロメーア一揆」

アンテノーラをカイーナによる傀儡政権にしてから、エンピレオ王国は特に動きもなかった。

それほどモチヅキの力に頼りきり、同時に彼が非常に愚かなのだ。

さて、トロメーアは火山に住み着き、鉄鋼の生産をしていた。

カイーナもこの国から鉱山資源を購入していたが、モチヅキの力に屈服し、

輸出を止めたらしい。

火山は無数の出入り口があり、住民が把握しきれていないほどだった。


先ず、ほぼ知られていない小さな出入り口を潰した。

火山というものだから火口があり、そこから水を流し込み、中で土砂崩れを起こし、

主要な家屋だけを潰そうとしたが、火山内の殆どが土に飲まれてしまった。


まだあの日土に飲まれた街並みを私は知らない。


カイーナの民による主張「トロメーア陥落」

我々の重要な資源である鋼鉄を止め、我々を敗戦に追いやったトロメーアは、

モチヅキの力に溺れた結果、土砂に溺れて生き絶えた。

鉱山資源は我々の物だ!

我々こそが正義なのだ!


第6章

ダンテによる主張「ジュデッカ一揆」

木と花の都、ジュデッカはアンテノーラに水を輸入していて、カイーナに止められてからは

木々は枯れ、街行く人は陰気な雰囲気だった。

既にジュデッカは無条件報告を宣言している。


カイーナの民による主張「ジュデッカ陥落」

木々と花しかない平和ボケした街は我々の正義によって目を覚まし、

多くの人々は我々を歓迎し、新たなカイーナの武具の実験台になることに自ら進んで名乗り出た。

カイーナはさらに偉大な前進をする!


第7章

ダンテによる主張「エンピレオ警告」

カイーナの進んだ兵器と、列強三国を併合した国力はモチヅキの力を持ってしても敵わない。

だが、血を持たずしても和解はできるはずだ。


カイーナによる主張「エンピレオ宣戦布告」

今日は偉大なる勝利の日だ!

カイーナの英雄ダンテのパンから我が帝國は再建された!

追い詰められた下賤王モチヅキとその婦唱の表情を覚えているか?

エンピレオとの関わりは鉄と血を持って解決された!


第8章

ダンテによる主張「軽薄な勝利」

今日カイーナは勝利した。なんの感情もない。

蝋人形のような私にベアトリーチェは繰り返し話しかけてくれた。

彼女のためにここまでしたのか。いや…他の理由が…?


カイーナの民による主張「偉大なる勝利」

エンピレオの街でカイーナの兵士が闊歩する!

何年も待ち望んだ光景である!

カイーナの民の悲願は今日叶えられたのだ!

エンピレオ人は覚悟が必要だろう。


第9章

ダンテによる主張「ベアトリーチェによる進言」

ベアトリーチェが何度も話しかけてくれた中で、ある願いをされた。

何度も差別されたから、やり返してやりたい、とのことだ。

今私の眼に映るのは彼女の美しい白い肌と、月光を吸収する黒い髪の素晴らしく釣り合う姿。

彼女のために。


カイーナの民による主張「ベアトリーチェとの婚約」

ダンテ皇帝とベアトリーチェ皇女は遂に結ばれ、

カイーナ第三帝国の初の夫婦となった。

同時に、カイーナの民で最も素晴らしい夫婦となっただろう。


第10章

ダンテによる主張「下等民族」

エンピレオ人は本当に人間だろうか?

どこからともなくやってきた転生人に国の命運を任せた民族が知的生物と言えるだろうか?

我々は奴らを差別するべきだと強く思う。


カイーナ人による主張「エンピレオ人を追放せよ!」

エンピレオ人は人間ではない!

ダンテ皇帝が自ら妃のために忌まわしきエンピレオ人を追放し、残るものは下等生物であるから

人権、財産を剥奪すると宣言した!


ダンテに栄光あれ!



前書き

第11章は初代皇帝ダンテ・アリギエーリ独自の文字、文法で書かれており、解読が不可能であった。

彼の死後も妻であるベアトリーチェですらその内容を知らなかった。


第11章

「金光康夫より。愛を込めて。」

いつの日か、この文字が誰かに読めるように願いーーーーーー

金光康夫。それが私の本名であり、この言語が日本語である。

私はこの帝国の皇帝となり、実権を握っている。

愛するベアトリーチェのため、エンピレオ人を害虫のように扱った。

だがしかし、私は目覚めたのだ。

私はベアトリーチェのために列強三国を併合し、同じ人間を徹底的に差別するのは、

私を元の世界に戻す技術者を探すためである。

私はこの塔の上から飛び降り、再び転生してみせる。

エンピレオの人々は、かつてのカイーナ人のように虐げられている。

私はその責任から逃れるために死ぬ。エンピレオ人を解放すれば、ベアトリーチェが悲しむ。

ベアトリーチェの願いを叶え続ければエンピレオ人が苦しむ。

私はその苦しむみの狭間から逃れるために死ぬ。

さらば、カイーナ人よ。さらば、エンピレオ人よ。愛してる、ベアトリーチェ。


ダンテの遺書

「責任逃走自害御免以上」




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