8話 恐怖
こんなことがずっと続けばいい
手を伸ばせば、届いていた距離も、もう届かない
あれが、楽しいって感情だったのか
殺戮ちゃん「今回もあなたにはデートに行ってもらうわよ♡」
デートだ?
白「ざっけんな!何でまた、あんな思いしなくちゃいけねんだよ!」
殺戮ちゃん「まだ、何にも言ってないじゃない♡」
どうせ、こいつらのことだ。また、ロクでもない女のところに飛ばすに決まってる。ヤンデレだろうがメンヘラだろうが、もうこりごりだ。
殺戮ちゃん「じゃあ、モニターちゃん、いつも通り説明お願いね♡」
【かしこまりました。それでは次のステージに移ります。難易度はNORMALです】
NORMALって、何だかんだ初めてだよな?
【今回のミッションはショック死です】
白「ふざけてんのかコ・・・」
【フィールドを生成し、転送を開始します】
白「はぁ・・・」
怒鳴る気力も失せた。
バンパパパパパパッパンパンッ
バンパパパパパパッパンパンッ
陽気な音楽が聞こえる。やかましい場所だな。周りを見渡してみる。
白「遊園地・・・か・・・?」
???「何言ってるの?白くんが行きたいって言ったんじゃん。」
クソっ!デートがどうこうとか言ってたな!恐る恐る、声のした方向へ振り返る。てか、俺女性恐怖症になってねえか?
???「えへへっ。」
白「・・・!?」
何、この美少女!!目の前には、ツーサイドアップのスタイル抜群の女がいた。いや、待て。外見がいいだけで、前みたいなおっそろしい性格を持つ女かもしれない。てかこの子、名前なんていうんだ?
白「あ、あの!」
???「な〜に?」
白「君の名前はな〜んだ?」
バカか俺は。
???「響かな?」
白「せ、正解!!」
せ、正解!!じゃねえよ。まあ、名前を聞く方法はこれくらいしか思いつかないし。
響「やったー!!」
いい笑顔だ・・・って、そんなことを言っている場合ではない。今回のミッションはショック死。とりあえず、いつも通り時計を見よう。制限時間は3時間。20歳大学生・・・心臓が弱く、幽霊が苦手・・・幽霊?この俺がか?そんなバカな・・・
(俺は幽霊が怖い・・・)
何だ、今の!?頭に変なのがよぎったんだが・・・だがこんなの、お化け屋敷に行けば楽勝だろ。
(行きたくない・・・)
恐怖なのか何なのかはわからないが、足が思うように動かない。
(幽霊が怖い・・・幽霊が怖い・・・)
幽霊が怖い!お化け屋敷なんか無理だ!!
響「どうしたの、白くん?頭なんか抱えちゃって。」
白「お化け屋敷だけはやめよう!」
響「え、もしかして怖いの〜?」
白「怖い!!」
あれ、今の俺洗脳されてねえか?
響「ど〜しよっかな〜?」
響は笑っていた。その笑顔は可愛いけど、怖いぞ。
白「やめてくれ〜!」
思うように、言葉が出ない!俺は、お化け屋敷で死なないと!!お化け屋敷で死にたい自分と恐怖心が、自分の中で葛藤していた。
響「わかった!じゃあ、ジェットコースターに行こう!」
ナイス、彼女!!死ねる・・・ジェットコースターなら急降下のショックでいける!
白「おう!」
それから俺たちは、ジェットコースターに向かったが・・・
響「調整中だってね。」
白「クソッ!また、これかよ!これが御都合主義ってやつかよ!!」
響「白くん・・・そんなに乗りたかったの?」
白「もちろんだ!これを乗るために、この世界に生まれ、死ぬために乗りたかったんだ!」
響「白くん!楽しみにしてるのはいいことだけど、簡単に死ぬとか言っちゃいけないよ。えへっ。」
何この笑顔、天使かよ・・・
白「うん・・・」
だが、俺は死ななきゃいけないんだ!それが、生きる道であり、死ぬ道だからだ!!
響「白くん、私、あれ食べたいな。」
彼女が指を指す方向には、クレープ屋があった。
白「うん、いいよ!」
そして、俺はチョコクレープ、響はいちごクレープを買った。
響「う〜ん!おいひぃ〜〜!!」
喜んでもらって、何よりだ。
白「うん、俺のも美味しいよ!」
響「じぃ〜〜〜っ・・・」
白「どうした?」
響「じぃ〜〜〜っ!」
白「・・・」
響「じぃ〜〜〜っ!!」
ずっと、俺のクレープを見つめている。もしかして、食べたいのか?
白「食べる?」
響「え、いいの!?」
目を輝かせて、こちらを見る。
白「うん、クレープと一緒にスプーン渡しといたでしょ?それでなら・・・」
響「えいっ!」
思いっきり、俺のクレープにかぶりついた。おいおい、これじゃあ・・・
白「・・・」
響「どうひたの〜?」
白「いや・・・何にも・・・」
そして、クレープを捨てるわけにもいかず、生まれて初めて(?)間接キスをしたのであった。
響「へえ〜ウォーターシューティングゲームか・・・面白そう!」
今度は、シューティングゲームのアトラクションにやってきた白一行。
白「でも、これ水着着てやるらしいよ?」
響「え、何かまずいの?」
白「ぜんっぜん!!」
美少女の水着・・・こんなイベント、滅多にねえぞ!生きててよかったーーー!!あ、私、死んでましたね。
響「ごめん、待った?」
白「全然待ってな・・・
その時、俺はこう思った。お尻を隠す小さな布(水着)があり、日焼けしていない白い肌のお尻があり、少し日焼けしている太ももがなんとも、スレンダーで豊かな発育をしている胸からヘソにかけてのくせは一切なく、水着の上からでもわかるボディラインは煽情的で・・・って、待て待て!俺はいつからドスケベ大魔神に転生したんだ?この思考誘導も、この世界の俺の仕様ってとこか。
響「白くん?どうしたの、私の体ばっかり見つめちゃって。」
白「い、いや〜ほかの男に見せたくないな。なーんて・・・」
響「白くん・・・!!」
今のが本音か嘘かは、ご想像にお任せしよう。
響「きゃ〜、水しぶきが〜!」
ああ、俺って幸せだな・・・このまま死んでも・・・死んでも・・・?俺は着替えの時に、意地でも外れなかった時計を見つめる。制限時間残り1時間!?いちゃついてる場合じゃねえ!
ムニッ
なんか今、柔らかい感触が・・・胸!胸あたってる!!
響「きゃ〜!」
本人は気づいてないみたいだけど・・・そうだ!この興奮を利用して、ショック死・・・なーんて、上手くいかないか・・・
気がつくと俺は観覧車にいた。
白「・・・」
響「外、綺麗だね。」
白「うん・・・」
プログラムなのに、こんなにもリアリティがあるんだな。本当に、いつのまに世の中は発展したんだか・・・そんな悠長なことを言ってる場合ではないんだよな〜。やっぱり、お化け屋敷しかない。だが、行けない。いや、行きたくない。
制限時間は残り15分。このままだと俺、マジで死ぬぞ。今までの苦労を思い出せ。焼酎の瓶で殴られるわ、消しゴムでアホみたいに死ぬわ、薬飲みすぎで頭がおかしくなるわ、挙げ句の果てには、あのチョコだ。ここで死んだら、元も子もない!うおーーー、お化け屋敷に・・・でも、やっぱ怖えわ・・・
響「ねえ、白くん?お化け屋敷に行こ。」
白「・・・」
俺はどうすれば・・・!!
ギュッ
・・・っ!?
響「行こ!」
手を掴まれ、強引に引っ張られた。
白「いやだーーーーー!!」
ヒュ〜ッドロドロドロ〜ッ
暗闇の中、俺たちは来てしまった。見通しがたたず、将来に希望が持てない暗闇。暗闇とはそういうものだ。だが、今の俺は希望しかない!
白「響〜、俺、怖え〜よ〜。」
情けない。俺は本当に情けない。それもこれも、あの金髪クソ女と単細胞木偶の坊のせいだ。俺の味方は響しかいない。
響「・・・」
白「ひ、響・・・?」
響はずっと、黙ったままだ。
響「・・・・・・」
白「おーい、響さーん?」
響「・・・・・・・・・」
こんなところにいたら、お化けが来ちまう・・・
ギシッギシッギシッギシッ
床の木を踏む足音が聞こえる。近づいてくる・・・!
白「助けて、響!!」
俺は、恐怖のあまり、響に抱きついていた。
響「呼んだ?」
白「ぎゃーーーーーーーーーー!!」
響の顔が光って見えて、怖く見えた。その時はパニックすぎてわからなかったのだろう。響は、自分のスマホの光を顔に当てていただけだったのだろう。
響「ちょっと、白くん!冗談でやっただけなのに、なんでそんなに驚くの!?白くーん!!」
白「響とのデート・・・楽し・・・かった・・・ぜ・・・」
【ミッションクリア。クリアタイム02:52。これより転送を開始します】
【ショック死:末梢の血液循環不全により、血圧の低下や意識障害が急速に進行し、死に至ること。「麻酔によるショック死」など】
白「・・・」
殺戮ちゃん「なーにぼーっとしてんのよ♡」
白「・・・」
夢は終わった。そして、俺はこれからも虚しく死んでいく・・・
殺戮ちゃん「はぁ・・・そんなに響ちゃんのことが忘れられないわけ?♡」
白「・・・」
プログラムの恋ってことはわかってる・・・だが、ちょっとくらい、息抜きもいいじゃないか・・・数時間じゃ足りねえんだよ!ちくしょう!!
殺戮ちゃん「あんたには、この超キュートな殺戮ちゃんと、超ビューティなモニターちゃんがいて、両手に花じゃないの♡」
【そうですよ】
白「・・・」
殺戮ちゃん「突っ込む気力もなし?♡」
俺は、泣き崩れてしまった。俺にも少し、感情が湧いたのか。
どうも、今からあなたは死んでくださいの作者ゆいたんです!最後は予想していた人もいるかと思いますが、少し悲しい結末になっちゃいましたね。初めて知った感情楽しいという、だが、そんな感情も終わりを告げ、また、デスゲームに巻き込まれるっていう・・・なんか、悲しいですよね・・・まあ、彼のことだからすぐに立ち直ると思いますがねw