22話 狭間
今回が俺の最後だ。まだまだ殺したりねえが、そろころ引き時だろう。EXTRAという、最後の舞台にちょうどいいものだってある。最後も派手に死んでやるぜ!!
【それでは次のステージに移ります。難易度は、EXTRAです】
俺の最後の舞台にふさわしいじゃねえか。
【今回のミッションは医療事故死です】
黒「医療事故死だと?そんなん、相手はプロだ。失敗することなんてそうそうねえ。」
殺戮ちゃん「だからEXTRAなんじゃないの♡一見高難易度に見えるEXTRAも、実は、抜け穴があって案外簡単だったりするものなのよ♡」
(・・・)
【フィールドを生成し、転送を開始します】
また、体がまた薄れていく。だが、この感覚も最後なのかもしれない。しっかりと、死という快感を味わってこないとな。
看護師「では、手術の説明を改めてさせていただきます。まず、何度もおっしゃっている通り臓器移植が今回の主な内容です。そして、臓器移植では・・・」
病院か・・・目の前には20代ぐらいと思われるナースがいて俺に手術内容を教えてくる。そんなことよりも、時計を見ないことには始まらねえ。俺は時計の情報を見る。制限時間は無制限。69歳・・・老後を楽しむが、臓器に異常が起きている。なんか体が重いと思ったら、爺さんになってたのか。
看護師「あの・・・黒さん?」
黒「なんだ?」
看護師「まもなく、手術が始まりますので時計を外していただけるでしょうか?」
これは、どうやっても外せねえんだよ・・・
黒「無理だ。」
看護師「ですが、手術に支障が出てしまいますので・・・」
(ここは、演技でカバーしとけ!)
無茶言うなよ!!
(適当に相手を巻けばいいんだよ!!)
・・・
看護師「黒さん?」
黒「イヤダイヤダイヤダーーー!!これは、俺の時計だ!!こいつは、生まれた時に父親の浮気相手からもらった、大切かと言われるとそうでもないが、一様、大切なものとして扱ってるから言わせてもらう!!大切なものなんだーーー!!」
看護師「は、はい・・・?」
黒「触るんじゃねえぞ!俺はな、極度の潔癖症なんだよ!この時計は、防水機能もついてるおかげで15分に1回のペースで洗ってるんだよ!!」
(いいぞ、黒!もっとやれ!!)
黒「生まれてからずっとこの時計を外したことはなかった!小学校のプールの時も、結婚の時も、我が子が産まれる瞬間もだーーー!!」
看護師「・・・」
これ絶対、老害の1人だと思われてるだろ・・・ちなみに、老害とは世代交代が図れず老朽化した『組織』のようなものである。
医師「どうした?早く彼を手術室に運ぶんだ。」
看護師「あ、ドクター!実はこの方が、時計を外したくないとか言い出してしまって・・・」
医師「もう時計ぐらいいい。歳をとれば、こういう厄介な爺さんも出てくるんだ。さあ、運ぶぞ。」
久々話しやがってよお、人間の闇が見えてんぞ。
そして俺は、手術室に運ばれるのであった。
バンッ
たっくよお、眩しいぜ・・・闇に生きる俺にとっちゃ、太陽のように眩しい光だ。
(天井の光をみながら何をぶつぶつ心の中でぶつぶつ言ってんだよ。)
それは、お互い様だろ?
看護師「黒さ〜ん、麻酔をかけますので、マスクをしますねえ〜。」
(そのマスクを意地でもするんじゃねえぞ!それをしたら、ミッションは失敗し、また時計愛を語らねえといけないんだぞ!!)
なん・・・だと・・・!?
黒「それは嫌だーーー!!」
(手術台の上で麻酔をかけられる寸前で暴れ出す爺さん・・・どんな絵面だよ?)
看護師「黒さん!!麻酔をかけないと痛い思いしますよ!!」
黒「うるせえー!俺は死にたいんだーーー!!」
俺はひたすら暴れ出す。こんなの俺らしくはない。だが、やるしかないんだ!さっさとそのメスをさしやがれっ!!」
医師「ダメじゃないですか、おじいちゃん。じっとしてないと・・・ね。」
黒「・・・っ!?」
白「何こっち側に来てんだよ。さっさと戻れや。」
気がつくと俺は、異空間に飛ばされていた。
黒「俺たち2人が交わるのは初めてだな。」
白「俺も最初ここに来た時はびっくりしたが、ここは、俺とお前の狭間の間ってとこか?」
黒「そんなとこだろ。」
白「そんなことは今はどうでもいい!さっさとそこの扉から戻りやがれ!!」
黒「言われなくてもそうしてやるっつうの。」
ガチャッガチャッ
開かない・・・だと!?
黒「おいこら、なんで開かねんだよ!」
白「そんなわけねえだろ!俺がここから出るときは、この扉は開いたぞ!!お前、死ぬのが怖くてわざとやってるんじゃねえのか?」
黒「んーなわけねえだろ!死は快楽だぞ!!」
白「・・・」
黒「・・・」
白「詰んだな、こりゃ・・・」
黒「だな・・・」
そして俺たちは何もできず、数時間が経ち・・・
ガチャッ
ビューーーッ
扉が開き、ものすごい風が、扉に向かって吹く。
黒「おい、なんだこの風!!つーか、お前はなんで風の影響を受けないんだよ!!」
白「お前をお呼びだからだろ。」
扉の逆方向を走ってる俺に対して、白はビクともしない。
白「お前、逆方向走ってねえでさっさといけよ。」
黒「ざっけんな、お前とせっかく対面できたんだぞ!!」
白「はいはい、会えて嬉しいって言いたいのはわかったからさ。」
黒「ち、違えよっ!!」
白「行ってこい!!」
ドンッ
黒「クソがーーーーーッ!!」
白に蹴り飛ばされ、扉に吸い込まれる。覚えてろ、白!絶対に復讐してやるぞ!!
看護師「はい、黒さん。手術終わりましたよ〜。」
黒「うっ・・・」
気がつくと俺は、ベットの上にいた。手術は無事終了。笑えねえな・・・あの手術台に乗せられたら最後だ。ジャンプボタンも今回は使い物にならねえ。何か、見落としている部分がある。なんだ?何を見落としたんだ・・・?
看護師「では、手術の説明を改めてさせていただきます。まず、何度もおっしゃっている通り・・・」
ループか・・・ってことは、また・・・
看護師「まもなく、手術が始まりますので時計を・・・」
白に教わった、あの技でここは・・・!!
黒「L・O・V・E・と・け・い!!」
英語大作戦とやらだ、どうだ!!
看護師「・・・」
冷たい視線が、俺を刺す。べ・・・別に・・・恥ずかしくなんて・・・ないんだ・・・恥ずかしくなんて・・・
そして、時計のことは昨日同様スルーさせてもらい、手術台の上に俺は寝転んでいた。
医師「はい、おじいちゃん、麻酔をかけますね〜。」
こんなヨボヨボの体じゃ、麻酔に耐えることすらできねえよ・・・
また、俺は不覚にも眠ってしまった。
白「で、なんでまた来てんだよ?」
黒「あんな麻酔、俺ですら耐えれねえよ!!」
白「根性でなんとかしろよ!熱くなれよ!!」
黒「つーか、この状況どうするんだよ?」
白「俺らに救いがあればいいんだけどな・・・」
黒「いや、このままだと冗談抜きでここから出られないぞ!!」
EXTRAとかいうクソルールのせいで、俺たちはミッションをクリアするまで出られねえ。
黒「ん?」
殺戮ちゃん「だからEXTRAなんじゃないの♡一見高難易度に見えるEXTRAも、実は、抜け穴があって案外簡単だったりするものなのよ♡」
もしかして・・・!!
白「どうした?」
黒「お前、この扉開くの確認したか?」
白「そんなもん、お前が確認して開かなかっただろ。」
黒「お前が開けてみろ!!それが、ミッションクリアの鍵かもしれないんだよ!!」
白「そんなもん、開くわけがないだろ・・・」
白はドアノブに手をかける。
ガチャッ
白「開いたわ。」
黒「よし、この扉はお前を選んだ!!さあ、行け!!」
白「俺かよ!?」
黒「俺の最後の舞台にはふさわしくねえが、行ってこい!!俺の舞台をお前が終わらせろっ!!」
白「・・・ああ!!やってやるぜっ!!」
久々のこの感覚・・・戻ってきたのか・・・いや、感動に浸っている場合ではない。目を開ければ怪しまれる。ここは、すぐに起き上がる!!
ズシャッ
白「うはっ・・・!!」
医師の持つメスが、俺の心臓に刺さる。
医師「バカな!!麻酔はしっかりしたはずだぞ!!爺さん・・・!爺さーーーん!!」
【ミッションクリア。クリアタイム19:15。これより転送を開始します】
【医療事故死:医療事故とは、診療中に思いがけなく期待に反した悪い結果が起こったことをいい、その結果死亡したことを医療事故死という】
白「クリア・・・してやったぜ・・・・・・」
殺戮ちゃん「私のヒント通り、クリアしたわね♡でも、今回のミッションに限らず、人生というものには抜け穴がある時があるかもしれないから、その時が来たら楽をしなさいよね!♡」
白「おい、黒。いるか?」
(・・・)
白「黒!!」
(・・・)
まじかよ・・・あいつが最後の舞台って言ってたのはそういうことだったとでもいうのかよっ!!俺はあいつに何も聞けなかった。礼すらも言えなかった。クソッ!!
(ばぁーか!いるっつうの!!)
白「いるのかよ!!」
(当たり前だろ!俺はお前にまだ教えなくちゃいけねえことがあるから、こんなところで消えるわけねえだろ!)
白「じゃあ、なんで最後とか言ってたんだよ!?」
(言ってみたかったってのはあるし、俺が主人公ポジションになるのが最後ってだけだぞ!!」
白「そういう意味かよ・・・」
(これからも、俺はお前を見守っていくから存分に死んどけ、この野郎!!)
白「はいよ。あと・・・」
黒「なんだ?」
白「しばらくの間、辛い役を引き受けてくれてたな。」
黒「お前はアホか?俺は死ぬのが好きなだけで、別に、辛い役を引き受けたわけじゃねえよ。」
こんなこと言ってるが、俺を死から少しでも遠ざけようとしてくれた黒の作戦なんだろう。
白「ありがとな、相棒。」
黒「おうよ!」
殺戮ちゃん「あれ?♡今回、私たち空気?♡」
【ですね】
どうも、今からあなたは死んでくださいの作者ゆいたんです!それにしても、黒くんの言葉からして今回が黒くんの最後だと思った人も多いのではないのでしょうか?でも、大丈夫です!黒くんは今後も健在です!よかった〜!!あと、最後の白くんの相棒と言ったのは黒くんとの信頼の証なのではないのでしょうか?今後は白くんと黒くんの協力も見られるかもしれないですね!それでは、次回もお楽しみに〜♪