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CO-ROU・THE・CHRONICLE〜虎狼忍術史伝〜  作者: 宇奈木 ユラ
第一章”虎狼”の世界
9/81

ACT.7 呪縛館の傀儡子(Ⅱ)


▽▲▽


「い、いやーそれにしてもアレだよね、カイトの死に芸も板についてきたよね!?」


「――ほう、アレは“誤爆”とか“フレンドリーファイア”とかではなく、芸だと?」


「そ、そうだよ!カイトってほら、ユーモアがいまいちだから私が特訓してあげようと――」


「月の明るい晩だけだと思うなよ?」


「わぁああああ、ごめん、ごめんなさぁぁあああああい」


 いつも通りの愉快なやり取りをしながら、ミナトに帰還した二人。

 ――ちなみに、誤爆云々の話もいつも通りである。

 現状、2人の連携はいまいち上手くいっていない。

 カイトは合わせようとはしているのだが、レナがいつも功を焦って足並みを崩してしまうのである。


「次、次のクエストではこんなことにはならないようにしますので!」


「そのセリフ、何度目?」


「んー、5~6度目?」


 実に信用できない数字である。


「というか、それそろ俺は限定クエストに挑戦したいんだが?」


 ――このゲームには、複数のクエスト形式がある。

 今まで彼らがこなしてきた通常のクエストは、常時解放されていて、一度に一組のパーティーが受注でき、クリアしても何度でも挑戦できる。

 しかし限定クエストは、形式がまったく異なる。

 解放されている期間は、常時そのクエストエリアが解放されていて、常に複数のパーティーが挑戦できる。

 そしてなにより、クリアできる回数は一度きり。

 ――一つのパーティーにつき、一度ではない。そのクエストを一つのパーティーがクリアした瞬間に、そのクエスト自体が終了し、以後誰も挑戦できなくなるのだ。

 ゆえに、推奨されるレベルが低いものでも総じて難易度が高い、しかし報酬も魅力的である為、人気も高い――そんなクエストである。


「えー、今なんか丁度いいのあった?」


「今だと、ルーキー向けで『呪縛館の傀儡子』ってのがあったな」


 『呪縛館の傀儡子』。

 それは簡単に言うと、主なき呪われた絡繰屋敷に潜入し、呪いの核である傀儡子を撃破するという内容のクエストである。


「昨日解放されて、まだクリアされてなかったはずだから、やってみないか?」


「うーん」


 しかし、レナは渋い顔だ。


「だってアレ、探索メインのクエストでしょ?私はこう、“戦闘戦闘また戦闘!”みたいな、がっつりバトル系がいいんだけど?」


「――それ系だと、またお前に殺されそうだから一旦別な系統は挟みたいんだよ」


「すいません」


 閑話休題。

 そうこう話しながらクエストカウンタ―に到着した二人。

 レナが、カウンターで完了報告をしている間、カイトはエントランスを暇そうにぶらぶらしていた。


「ん?」


 暇していたカイトの目に、あるものが映る。

 それは、エントランスの壁際にできた人だかりだ。


「なんだ、なんだ?」


 興味を惹かれて、人だかりに近づくと、彼らはある張り紙に注目していた。

 その張り紙の見出しには、大きく派手な筆記体でこう書かれていた。


「――『三代目“ジライヤ”主催! ルーキー応援サバイバルゲーム』開催のお知らせ?」


 一見しただけではいろいろと情報が飲み込めなかったカイト。

 その様子を見た、隣のプレイヤーがカイトに話しかける。


「あの、もし。もしかして、貴殿は新人プレイヤーでしょうか?」


 そのプレイヤーは僧侶の格好の上に鎧をまとった、ガタイのいい男性だった。筋骨隆々なその体躯とは裏腹に顔はかなり優しげである――事実、カイトに率先して話かけてのだから、かなりフレンドリーな性格なのだろう。


「あ、あぁ。俺は数日前に始めたばかりなんでかなり世相に疎いんだ。良かったこれについて教えてくれないか?」


「うむ、心得た。――といっても、拙僧も新人故あまり期待はしないでくれると助かる」


「了解だ。まず、この人だかりはなんだ?」


「おぉ、そこですか!実はですな、先ほどここに、プレイヤー自主イベントの告知があったのですよ」


「――自主?そんなことできるのか?」


「左様。このゲームは“クロニクル”の名の通りプレイヤー自身が世界の歴史を作れるというコンセプトがあるので、プレイヤー側からの要望が運営に通りさえすれば、このような公認自主イベントも行えるのです」


「なるほどな」


 カイトはそう返事をして、改めて張り紙をよく読む。

 そこには、こう書かれていた。

 『【告知】来る4月31日(日)の午後1時より新規プレイヤー(下忍)限定の大会を行います。詳細は後日発表!』


「いやぁ、ジライや様も粋なことしますなぁ」


「――ジライヤ?コイツもプレイヤーだろ?そんなに有名なのか?」


「なんと!?」


 その僧侶は、カイトの発言にひどく驚いた。


「――なるほど、ジライヤ様も知らぬとは、本当に始めたばかりなのですな」


「悪かったな」


「失敬失敬!悪気はなかったので許されよ――さて、ここでいうジライヤ様とは、“称号職レジェンドジョブ”『焔天忍ジライや』に就いた最新のシノビ、三代目“ジライヤ”ことカゲミツ様のことである」


 カイトはその時、“称号職”という言葉を初めて聞いた。


「“称号職”とは、一時代に一人しかつけない最強の証明みたいな職業である。条件を満たしたプレイヤーが、当代の“称号職”をもつ者に『継承戦』を挑み、それに勝利すると次代の“称号職”者になるのです」


「負けた奴は?」


「“称号職”がはく奪されます」


 なんともシビアなルールだと、カイトは思った。

 しかし、その最強の証明とやらに、なにか心動かされるモノをカイトは感じた。


「もう少し詳しく教えて――」


「おーい、カイト~どこ~?」


「――すまない。連れが呼んでる」


「結構結構!続きはお連れ様に聞くとよろしい」


「サンキュー!いいこと聞かせてもらったわ!」


 そういってカイトは踵を返して彼と別れる。


 ――こうしてカイトは、この世界最強の存在を初めて知った。

 その心に、小さな闘志の種を芽吹かせながら。

 








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