ACT.69. 最後の一閃(Ⅱ)
▽▲▽
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」」
獣の様な咆哮をあげて、カイトとスズハヤはセイリュウⅡへ疾駆する。
叫び声は自らを奮起させる為、残りの力を絞り出す為。
迫りくる二人のその鬼気にこの戦いの最中で、セイリュウⅡは初めて気圧され一歩足を下げる。
自身の首に掛かる、死神の大鎌を幻視した。
だが、セイリュウⅡは引かない。
それは強固なプライドの為。
基礎能力は全て奴らを凌駕している、放つ技もあんな奴らより絶対に強い。
ならば――。
『|GuRAaaAAAA《負けるわけねぇだろクソが》――っ!!』
衝撃波を伴う大咆哮が二人を襲う。
恐るべき威力のそれに対し、カイトは真正面から迎え撃つ。
「【古月斬破】ぁぁあああ!!」
渾身の力を込めて振るったその刀身から深紅の軌跡が刃となって放たれる。
その刃は衝撃波を相殺し、霧散する。
代償に、残り少ないカイトのHPが減少。
「撃てるのはあと二回かっ!」
「わかりました、僕が全力でサポートします!」
瞬間、セイリュウⅡは鋭く尾を振るう。
しかし、それに対し今度はスズハヤが独自の行動を起こす。
横凪ぎに振るわれた尾に対し、自身の操作する大手裏剣を二枚、勢いをつけてぶつけたのだ。
それで勢いの落ちた尾をスズハヤは自身の身体を使って抱え込み、地面に縫い付ける。
――これで、スズハヤをどうにかしなけれな尾での攻撃は出来ない。
「今です!」
「応っ! ――【古月斬破】っ!」
そして、カイトは正面のセイリュウⅡ、その首目掛けて斬撃を飛ばす。
瞬間、その斬撃をセイリュウⅡは首を大きく下げ回避する。
「――随分と斬りやすい位置にきたな」
『Gariyっ!?』
セイリュウⅡが気が付いたその時には、カイトが自分のすぐ真横にいた。
――これこそがカイトの十八番。
牽制技による視線誘導、そして死角移動による疑似瞬間移動。
更に、【古月斬破】をわざと避けさせることによって、急所である首を自身が狙いやすい位置へと誘導させた。
そして、最高の一撃をセイリュウⅡに振るう。
全ての力を乗せた、全力の一刀がその首に吸い込まれる。
――更に。
「こ、【古月斬破】っ!!」
実体の刃が首に接触する瞬間に最後の【古月斬破】を打ち込み、斬撃の威力を上乗せする。
眩いエフェクトが、カイトの視界を覆う。
カイトの全力攻撃は、セイリュウⅡの鋼皮を切り裂く。
――だが、そこまでだ。
その内の筋肉と骨に阻まれ、あと一押しが足りない。
「――くっそがぁぁあああ!!」
「【鋼ノ猟犬命ヲ喰ラエ】ぃぃぃいいいいっ!!」
瞬間、飛来した二枚の双刃が、勢いよく拮抗状態だったカイトの持つ刀身にぶつかる。
――その時、一瞬だけ。
――銀色の刃は命刈り取る紫電となりて、魔竜の首を斬り飛ばした。
私事ではありますが。
現在、ダークファンタジーな世界観のシェアワールド企画「シェアワールド『魔神剣』」をやっております。
書くのも読むのも自由な作品群にしたいので、興味があればちょっとノベルアップで公開中の設定集(https://novelup.plus/story/257396696)を覗いてみて下さい。
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