ACT.67 “俺たち”の戦い(Ⅲ)
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放たれた二つの光の奔流が激突し、弾ける。
威力を減衰させないまま弾けた光は周囲に、散弾のように弾け飛んだ。
「不味い!」
散弾の様にはじけた光は、一切威力を失っていない。
それはセイリュウⅡの身体に降りかかるとともに、カイトたちにも降り注ぐ。
予想外のその光景に、全員が退避行動を取る中、一人それが取れない人物がいた。
――ナギだ。
未だに極光を放ちセイリュウⅡの攻撃を相殺し続ける彼女は、回避ができない。
「私が行く!」
そこに赤い影が、彼女に覆いかぶさった。
深紅の着物を靡かせ、レナが怪腕を広げてナギを庇う。
そして、双方の攻撃が尽きたその時、弾けた光からナギを庇い続けたレナの怪腕は、ボロボロに崩れかけていた。
「レナさん!?」
「ナギちゃん大丈夫?」
「大丈夫ですが、で、でもレナさんが!」
レナによるこれ以上の戦線維持は不可能だと、この場にいる全員が察した。
それ故に、レナは叫ぶ。
「あとはお願い!」
「――任せろ!!」
そう言ってカイトは、走りながらクナイを投擲する。
狙いは一点、その喉笛だ。
「青いオーラで守られているとはいえ、元から防御力が低い部位なら、たかが知れているだろ!」
今、奴が放っている青いオーラが防御力を底上げする効果のものなら、元から防御力の低い部位を狙うしかない。
しかし、そんな狙いがセイリュウⅡにわからない訳ではない。
奴は、首の位置をずらしてクナイを避け、代わりにしなる尾を振るう。
紙一重で避けた先で、カイトはにやりと笑う。
尾を避けた先、地面に映る彼の影の中から二枚の巨大な手裏剣が瞬時に現れた。
「【陰遁:影通し】、上手くいきましたね!」
ライガの術で彼の影とカイトの影をトンネルの様に繋げたのだ。
その影の中を通ってきたのは、スズハヤの手裏剣。
上からの攻撃なら迎撃される可能性が高かったが、このように不意打ちの形なら迎撃される心配はない。
事実、その刃は青いオーラ越しでも、セイリュウⅡの身体に大きな傷をつける。
『GryueeeeeEeeeEE!!』
叫ぶセイリュウⅡにすかさず追撃をする為に、カイトが更に距離を詰める。
迫るカイトに向かって、セイリュウⅡは大きく口を開く。
熱戦を吐く予兆もなく、そんな不可解な行動にカイトは一瞬困惑するが――次の瞬間。
奴の口内から、凄まじい速さで舌が放たれる。
弾丸の様な速度を持つそれは、確実に致命傷だ。
それに、今のカイトは【奥義:黄泉ノ凱旋者】が使えない。
クールタイムが、まだ終わっていないからだ。
しかし、咄嗟のことで避けることができないカイトは、敗北を悟った。
「くそっ!」
しかし、その時だった。
カイトの懐から、突如銀色の何かが飛び出し、セイリュウⅡの舌弾を弾き、カイトの身を守った。
その銀色の正体は――。
「――ギンコ?」




