ACT.66 “俺たち”の戦い(Ⅱ)
迫りくるふたりを迎撃するために、セイリュウⅡはその顎を開き大きく息を吸い込む。
放たれるのは、リオナを吹き飛ばした大咆哮。
その予備動作を確認したふたりは、同時に左右に分かれ咆哮の狙い先を分断する。
カイトは右へ、スズハヤは左へと回り込む。
セイリュウⅡが首を回して狙いを定めたのは――。
「俺かっ!」
カイトに照準を合わせて、セイリュウⅡは首を追随させる。
『GRYaaaAAaaaaAaaa!!』
放たれた大咆哮に対して瞬時に印を結ぶが、カイトは呆気なく吹き飛ばされる。
それと同時に、セイリュウⅡの首の後ろに移動したスズハヤは印を結ぶ。
「土遁:土破槌!」
スズハヤの発声と共に、カイトを目掛け彼のすぐ近くの地面から土の破城槌が放たれる。
その槌がカイトの腹部にめり込んだ途端、その姿が一瞬で掻き消える。
それと同時に、セイリュウⅡの頭上に影が落ちる。
「――土遁:空蝉!」
ダメージを切っ掛けに発動する空蝉を用いて、咆哮を無効にしてなおかつ距離を詰めることに成功したカイトは、そのままセイリュウⅡの頭に強烈な踵落としを喰らわせる。
『AveRッ!』
苦悶の声を漏らすセイリュウⅡに対し、カイトは着地と同時に真横に飛び退く。
退いたカイトの後ろから飛来するのは、二枚の巨大な手裏剣。
スズハヤの操る手裏剣は正面から、そしてその対角線からは小刀を手にしたスズハヤが挟撃の要領で追撃する。
すると、セイリュウⅡは右前脚で大きく地面を踏み付けた。
途端にセイリュウⅡの全身を青いオーラが包み込む。
そしてーー。
ガキンッ!
硬質な音を立てて、その首に吸い込まれた三つの刃が止められた。
全身を包む強靭な竜鱗。
青いオーラを纏ったソレは、硬度を格段に上昇させていた。
「ここまできて、まだ手があるんですか!」
スズハヤは歯噛みして、一度交代する。
強靭な体躯を持つセイリュウⅡとゼロ距離で殴り合うのは、リスクが高すぎる為だ。
故に、ここにいる全員がとった手段は一撃離脱。
一度近くだけでも難しい相手ながら、カイトたちにはこれしかなかった。
「金遁:銭礫!!」
一時撤退するスズハヤとカイトを援護する為に復帰したリオナが、小銭を忍術で散弾のように放った。
それ自体は有効打足り得ないが、追撃を阻止するのには十分有効であった。
銭礫が地面に着弾した衝撃巻き上がる土煙。
そのカーテンの向こうで、恐ろしいまでの光が一点に集まっていく。
「やばいの来るよ! 一番最近やったブレスだ! でっかい奴!」
レナが声を上げて全員に注意を促す。
現状カイトたちの中であの大熱線を防ぐ手段を持ってるシノビはいない。
放たれたら最後、四方八方に逃げるしかなかった。
全員が、すぐ動けるように腰を落とした瞬間。
「ーー準備、できました!!」
嵐の前の静寂を裂き、ナギが声を上げる。
「【奥義:願イハ誰ガ為ニ】! “攻撃範囲”ダウン、“命中精度”アップ、“コスト”アップ、“攻撃力”アップ!!」
それは、現在ここにいるシノビたちの中で最も威力の高い攻撃準備が完了したという合図だった。
彼女のその声に、カイトは大きな声で答える。
「やっちまえ!!」
「いきます!ーー【カスタム忍術:雷神極光】ッ!!」
その瞬間、ナギの放った黄金のイカズチと、奴の放った光の奔流が激突した。




