ACT.65 “俺たち”の戦い(Ⅰ)
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ーーセイリュウⅡとの戦いは、激化の一途を辿っていた。
「術の準備をします! ですので、それまで気を逸らしてください!」
「了ッ!」
「解ッ!」
ナギが少し下がったところで印を組み始めると同時に、彼女が術式を完成させるまでの時間を稼ぐべく、“奥義”を発動させた状態のレナと、スズハヤ仲間で金遁使いのレオナが走る。
『GAryuuuaaaAaAaaaッ!!』
その咆哮がビリビリと大気を震わせ、それを正面から受けたリオナが大きく後方に吹き飛ばされる。
レナは咄嗟に【鬼蜘蛛ノ怪腕】を2本、楔のように地面に打ち込む事で、その場に耐える。
だが、辛うじて耐えたレナに、細く長くそして鋭利な尾が、鞭のようにしなり襲い掛かる。
「何の!」
レナはその尾を、楔に使っているのとは別な怪腕で防ぐ。
だがその時、攻撃を受けた怪腕の外殻に、大きな罅がはいる。
今まで一度も損傷を受けた事のない、強固な外殻を持った怪腕が、である。
その光景に、レナは思わず動揺ーーしたりはしなかった。
彼女にとってそんなのは、想定済み。
セイリュウⅡが規格の外にいる存在なのだから、規格外のことが起こって当然と、既に腹を括っていた故であった。
そして、今一瞬伸び切った状態になった尾の内側を、一つの影が駆け抜ける。
影の正体は、この班をまとめ上げるライガの側近・カゲツだ。
彼女は、そのまま一気に距離を詰めて、右手を力を込めて握り、その拳に光が宿る。
セイリュウⅡの寸前で急停止した彼女は、軸足を地面にめり込ませ腰を据え、駆けてきた速度を載せた拳を振るう。
「ーー体術:絶拳」
その拳が、文字通りセイリュウⅡの身体にめり込む。
瞬間、血のようなダメージエフェクトが弾ける。
ーー有効打である。
だが、その一撃と同じタイミングでセイリュウⅡの口腔が光を溜める。
渾身の一打を叩き込んだその後に発生する、絶好の隙。
カゲツを狙ったセイリュウⅡの熱線が放たれる。
その刹那にカゲツは身を縮める。
何もそれは、少しでもセイリュウⅡの射線から逸れようとしているわけではない。
逆に、それはこちらの射線を開ける為。
カゲツの足元ーー影の中から、この班のリーダーであるライガが突如飛び出す。
彼は、陰遁を使って、彼女の影に潜んでいた。
「はっ!」
飛び出た瞬間、彼は手にしていた錫杖を振るい、熱線を吐き出そうとしていたセイリュウⅡの顎をかちあげる。
その瞬間放たれた熱線はふたりを掠め、空を焼く。
『GuruaaAaAAAaaaaッ!』
ギョロリとセイリュウⅡの眼が動き、カゲツとライガを見据える。
そして奴は、熱線の勢いを落とさぬまま、その首を振り下ろす。
まるでレーザーブレードの様に振るわれたその攻撃は、周囲を巻き込みながら、ふたりに迫る。
「暗器術: 銀蛇鎖縛!」
「こっちも! 暗器術: 銀蛇鎖縛!!」
間一髪のところで、レナとスズハヤの仲間のカオルが同時に鎖鎌の鎖を伸ばし、カゲツとライガを拘束。
鎖を一気に引き戻すことで、熱線の範囲外のにふたりを逃す。
そして、熱線を吐き終わったセイリュウⅡに、カゲツとライガの代わりに二迅の風が走る。
「ーー足を引っ張るなよ、スズハヤ」
「そのセリフ、そのまま返しますよ!」
ーーカイトとスズハヤ。
若手最高峰のふたりが同時にセイリュウⅡに迫る。




