ACT.60 "極青冠"の真実(Ⅰ)
皆様、大変お待たせ致しました。
約9か月ぶりの更新でございます。
ちょっとワタクシ事で更新が儘ならなかったとはいえ、お待たせしてしまって申し訳ございません。
これからは、またちょっとずつ依然のペースで更新再開できればと思います。
またどうぞ、よろしくお願いいたします。
カイトとスズハヤが疾駆し作った道を、他のシノビたちも駆ける。
しかし、その道中も【“青冠”の雷狗竜】の群れは、猛攻を辞めることはない。
上陸してから数分。
その爪牙にて、次々と同胞は青いエフェクトにして姿を消していった。
「ちょ、ま、ぎゃあああああああ!?」
「あ、し、死ぬ死ぬし――」
カイトやスズハヤも道を切り開く強行軍の最中、後ろから上がる断末魔を聞いていない訳ではない、無視しているわけではない。
「(――ごめん、助けられなくて。今ここで引き返せば、一人か二人は助けられるかもしれないけど)」
しかし、それをしてしまったら、今度こそ戦線は崩壊する。
この戦いは、冗談抜きに今の自分たちにかかっていた。
個人のエゴで動いていられる訳はない。
――だが、だからこそ。
より一挙手一投足の無駄を減らし、動きを効率化させ、無駄を消す。
補助システムに頼れない部分の高速化を意識して行動する。
少しでも早く、目標のコアへたどり着く為に。
それが、まだ生きている皆を助けることだと――たどり着けなかった奴らへの弔いになるのだと信じて。
――だが、次の瞬間。
「きゃああああ!?」
カイトの見知った少女の――レナの叫びが耳に届いた。
一瞬で彼の頭が真っ白になる。
そして、無意識で進む身体に急ブレーキをかけ、踵を返そうとしたその時。
「止らないで下さい!!」
すかさずスズハヤの怒号が、レナの元へ駆けつけようとしたカイトの足を止めた。
そしてスズハヤは、瞬時に巨大手裏剣を操作して、後方でレナを襲おうとしてた【“青冠”の雷狗竜】の頸を切り飛ばした。
「後ろは僕の領分です! だから貴方は早く!!」
「――っ!」
口論はおろか、返事をする一拍の猶予すら惜しい。
そう感じたカイトは、即座に道を切り開くことを再開する。
今の行動は俺のミスだと自覚し、散った彼らの努力を無にしない為にも、今は前に進むという新たな意思の元、カイトは進む。
「クソ、やってやる!!」
そして突き進んだその先に、うっすらと紅い輝きをカイトはその目に捉えた。
嵐のような猛攻を掻い潜り続けて、ようやくコアを目視できる距離に達したのだ。
そこまで来たという実感に、カイトは声を上げる。
「目標のコアを確認! これより攻撃に入る!!」
そう言ってカイトは姿勢を一気に低くし、速度を上げて目標に迫る。
得物であるクナイを手に、投擲しようと振りかぶったその時だった。
――ピシッという微かな音と共に、コアの表面が薄くひび割れた。
無論、カイトはまだ攻撃をしていない。
それなのに、勝手にそのコアは少しずつひびを広げ、崩壊しようとしている。
予想外なその事象に、一瞬カイトの思考が止まる。
――そして、コアの一部が眩く発光。
「ちょっ!?」
その光にゾッと嫌な予感を感じたカイトは咄嗟に地面に伏せる。
次の瞬間。
『GUGARYUAAAAAAAAAA!!』
謎の咆哮と共に、コアの中から放たれた太い閃光は、カイトの頭上を掠め、森を焼き払い、戦闘中だったシノビたちを【“青冠”の雷狗竜】ごと消し飛ばした。
「――これは」
焼け爛れたその跡を呆然と眺めるカイト、そしてスズハヤをはじめとした偶然生き残ったシノビたち。
呆然と佇む彼らのすぐ傍で、コア――いやコアだと思われていたモノが、その深紅の殻を破って大地に足を踏み出した。
そこに現れたのは、一匹の竜。
それも【“青冠”の雷狗竜】や【“青冠“の風翔竜】とは違う姿をした竜だ。
太い四肢と鞭の様に長くしなる尾、そして天に逆らう様に垂直に立った長い首、獰猛さを隠そうともしない爛々とした眼と生えそろった牙。
首を含めて2mほどの大きさしかないものの、それはあの竜を彷彿とさせるには十分な偉容だった。
そして、その予感を肯定するかの様な名前が、カイトたちの前に表示される。
――【“極青冠”セイリュウⅡ】と。




