ACT.59 それぞれの戦場(Ⅵ)
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セイリュウは、焦る。
思わぬ羽虫どもの攻撃で、足を折り、あまつさえ背に侵入されたのだ。
背の森は、セイリュウにとって、絶対に他者を踏み入れさせてはならない絶対不可侵の場所であった。
何故なら、森にはアレがある。
アレだけは、アレだけは、どうにかして守り抜かねばならぬ。
森に住む眷属たちに指令は出したが、奴等を止められる確証は既にない。
すでにセイリュウは、彼らをただの羽虫と侮っては居なかった。
奴らは毒虫だ。
わが身体を蝕み、命を削る害虫。
そして、そう思った瞬間、右足に更なる衝撃と激痛が走る。
あまりの激痛に、セイリュウは膝を折ってしまう。
おのれ、おのれ、羽虫共が!!
そしてセイリュウは、憎悪の雄叫びを上げながら崩れ落ちた。
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『GUUUUUWAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』
「よし、やったカ!?」
二度目の起爆で、セイリュウのもう片足を攻撃したジライヤ。
その攻撃は強大で、足に甚大なダメージを与える。
仲間たちは、風翔竜の迎撃に専念し、ジライヤに攻撃チャンスを与えることに成功させた結果と言えた。
その攻撃はすさまじく、【“極青冠”セイリュウ】は膝を折る。
上半身を維持することができなくなったセイリュウは、そのまま前のめりに倒れこむ。
「セイリュウのダウンネ! 巻き込まれないように注意!!」
どん、という大きな地響きを立ててセイリュウが倒れこむ。
肩から崩れ落ちたセイリュウは、上体に続いて、その長い首も地面に激突させることになる。
「――さぁテ、今までいまいちよくわからなかったその顔を拝ませてもらおうかしラ!」
セイリュウは、その高すぎる全長ゆえに、その顔がどうなっているのかが、いまいちわかっていなかった。
その面を拝ませてもらう為、もとい弱点でありそうな顔面にとどめの猛攻をぶちかます為に、ジライヤたちは顔面に回り込む。
だが、そこには、予想外のモノがあった。
「――あン?」
そこにあったのは、ごく変哲のない恐竜のような顔――というだけではなかった。
顔の真ん中、額には翡翠色の小さなーーセイリュウの身体にしては小さな珠が付いていたのだ。
そして、その珠には、こうウインドウがポップアップしていた。
『セイリュウ・コア』
それを見たジライヤは驚愕し、同時に他のジライヤ班メンバーも動揺する。
「ちょっと待テ、額にあるのがコアだとしたら、背中にあるあのデカいのは何なんダ!?」
上陸班の狙っているモノが、一気に得体のしれないモノに成り代わった瞬間であった。




