ACT.49 ファースト・コンタクト(Ⅶ)
セイリュウの体型は、ポケモンのメガニウムを可愛くなくしたバージョンと思って下さい。
▽▲▽
「――嘘だろ」
カイトの啞然とした声が、嵐の大渓谷エリアに響く。
その理由はひとえに、【“極青冠”セイリュウ】の異様な巨躯を見たが故だ。
「首込みだと、スカイツリーより高いんじゃないかコレ!?」
東京スカイツリーの高さは、634m。
カイトの立てた目測では、長い首を垂直に立てたセイリュウの全長は、ソレより高いと思われた。
「どうしようカイト! 私こんなのが相手だなんて聞いてない?」
「お、落ち着け! こういう時は素数を数えるんだ!」
「素数って何!? そうめんと違うの!?」
「ちげぇよバーカ!!」
しかし、自分よりも慌てるレナとの会話が、逆にカイトに冷静さを取り戻させてくれえた。
「よし、取り合えず、今可能な限りのチェック項目をクリアしていこう」
ライガから指示された最低限のチェック項目というのが存在する。
一.相手の大きさと姿の情報
二.各種攻撃耐性の確認
三.モーションの確認
四.ヘイト管理に必要な情報の収集
この四つの観点からの情報が必要だ。
「というわけでナギは、アイツの姿を目に焼き付けることに集中してくれ!」
「了解です!」
まず、その一である姿の情報を持ち帰るとのことだが、このクエストでは写真が撮れない。
その為、通常口でしか威容を伝えられないのであるが、今回のカイトたち――というか、ナギの場合は異なる。
高校で美術部に所属しているというナギは、絵が上手いのだ。
つまり、ナギには時間が許す限り、セイリュウを観察してもらい、あとで描き起こしてもらうという作戦だ。
「お二人も、気を付けて!」
そんなわけで、ナギは隠れ蓑を纏い、見晴らしの良い場所へ移動していった。
「さて、じゃあ俺たちもいきますか」
「うぅ、頑張る」
そういってカイトとレナは大渓谷を下り、セイリュウのもとへ駆け出す。
走りながら、カイトとレナは言葉を交わす。
「レナ、とりあえず二人合わせて全属性の忍術を叩き込むぞ!」
「OK、私が火遁木遁金遁を、カイト水遁土遁に物理遠距離をって話だったよね」
「そうだ、じゃあ行くぞ!!」
話し合いが終わるころには、既にセイリュウのその巨大な右前足に到達した二人は、順に交互に同威力の忍術をぶちかましていく。
「【火遁:狐火】!」
「【水遁:氷礫】!」
「【木遁:閃雷】!」
「【土遁:石弾】!」
「【金遁:鉄雨】!」
火球、氷塊、閃光、石礫に砂鉄の雨が、次々にその足に命中する。
「ダメージ量に違いはあったか!?」
「ううん、無い!」
属性による耐性や弱点を見る為にわざと同威力のわざをぶつけたが、そこに違いは出なかった。
「名前が「春」と「植物」を司るセイリュウなだけに、火遁と金遁には期待してたんだけどな」
どれもたいして有効打ではなかったということは、単純に高威力の忍術が本戦では必要になるなと、カイトは考えた。
そして最後の物理耐性を確認しようと、【暗器術:秋時雨】を放とうとしたその時だ。
「――危ない!!」
「なっ!?」
隣を走っていたレナが突然カイトを突き飛ばす。
突然のことに状況が理解できていないカイトが居たその場所に、轟っと音を立てて巨大で鋭い何かが振るわれた。
そしてそれは、その周囲の地形とカイトをかばったレナ自身をごっそりと削り取った。
「れ、レナぁぁああああ!!」
青いエフェクトと化して、砕け散るレナの身体。
彼女を襲ったのは、セイリュウの長い尾だった。
その尾が鞭のようにしなり、カイトたちを襲ったのだ。
頭部の位置が高すぎて、その表情はうかがい知ることはできないが、セイリュウは明らかなヘイトをカイトに向けていた。
「はっ、やってよろうじゃねーか。レナの仇だ、これから時間いっぱい遊んでやるよ。せいぜいいっぱいモーション晒しな!!」
そういって、彼は勝機のない戦いへと身を投じていった。
感想評価など、お待ちしてまーす!




