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ACT.43 ファースト・コンタクト(Ⅰ)

本日2話目です。


□■□


「――ついに公式発表されたか」


 六月初めの正午。

 本日で三日連続の雨という、気分の滅入りそうなそんな日の学食にて、学食最安値メニューである素うどん(180円)を啜りながら神妙な顔をしている青年が一人いた。

 針金のような硬質な癖毛と鋭い眼光に長身。

 気の弱い人ならば、前に立つだけで少し怯えられそうなその容貌の彼の名前は、凧谷慎二。

 この風貌に似合わず、生粋のインドア派アナログゲーム大好きなゲーマーである。

 ――いや、この表現にもこれからは修正が必要か。

 彼は、VRMMOゲーム「CO-ROU・THE・CHRONICLE」にドはまりし、今やアナログゲーマーというより、全方位ゲーマーになりつつあった。

 そんな慎二は、しかめっ面で自分のスマホの画面を見つめていた。


「やっほー、凧谷君」


 そんな余人には話しかけづらい雰囲気をひしひしと放出していた慎二に、憶することなく話しかける少女が一人。

 靡く黄金の髪、宝石のような碧眼、かわいらしい顔つきをした偶像のような少女だ。

 その名前を天神玲奈といい、慎二の友人兼、彼を「CO-ROU・THE・CHRONICLE」に引きずり込んだ張本人である。


「ん、天神か」


「そだけど、どうしたの? 復讐相手を見つめるような酷い顔してるよ? 私でも殺された」


「マジか、お前死んでたのか」


「んなわけないじゃん」


「だよな。たとえ天神が殺されても、復讐とか絶対しないし」


「そこは復讐してよ!」


「そこは喜べよ、俺が罪を犯さないことを」


「いやだ、どうせなら一緒に堕ちるとこまで堕ちよう?」


「――お前、たまに怖いこと言うよな」


 もしかしたら、玲奈にはヤンデレ的な素養があるのかもしれないと、慎二はちょっと怯えた。

 そんな会話をしながら、玲奈は慎二の目の前の席に腰を下ろす。

 両手には、学食最高値メニューである焼き肉定食DX(1500円)にデザートの特製プリン(300円)が乗ったお盆を持っていた。


「――ブルジョワジーめ」


「ん? なんか言った?」


「いや何にも」


「それで話を戻すけど、何見てたの?」


 慎二はそう言う玲奈にスマホの画面を向ける。

 そこには、「CO-ROU・THE・CHRONICLE」公式サイトのとあるページが開かれていた。


「あー、コレね。私も丁度話そうと思っていたんだ」


 そのページは、一週間後に始まるクロニクル・クエスト「【“極青冠”セイリュウ】討伐戦」の開催告知ページであった。

 といっても詳細は後日と書いてあるだけで、めぼしい情報はほとんど載っていないのだが。


「話ってなんだ?」


「まず、参加する?」


「俺はしたいが、天神は違うのか?」


 慎二からしてみたらのあたり前な質問に、玲奈はうーんと呻る。


「私も参加したいんだけど、レイド戦だからなぁ」


 ――レイド戦。

 それは、百人単位のプレイヤーが強大なボスを相手取るイベント戦。

 通常の戦闘とはノウハウも何もかもが違う、特殊な戦いだ。


「参加するなら、今回は手慣れた人たちの傘下に入った方が無難なんだけど、大丈夫?」


「いや、その“大丈夫?“の意味が分からないんだが?」


「ほら、君って誰かから指図されるのとか嫌いそうだし」


「心外だな、別に大丈夫だよ」


 そう言って腕組みをして鼻を鳴らす慎二。

 実際、彼は指図されるのは好きではないのだが、今回はソレより参加したい欲の方が高かった。

 現実では、あまり顔に感情の出ない慎二ではあったが、内心このクロニクル・クエストをとても待ち望んでいた。

 それはもう、ここ数日は何時間かおきに公式サイトをチェックする程度には、たのしみにしていたのだ。


「んー、じゃあ詳しいことは後でナギちゃんと一緒に話し合ってみようか」


「――そうだな」


「まぁ、私たちみたいなひよっこが、レイドで大役まかされるわけが無いからそこはあまり期待しないでね?」


「わかってるよ」



 しかし、この時の彼等は知らなかった。 

 自分たちが、この討伐戦においてどれだけ重要な立ち位置にいるのか、そして自分たちが相手取るのがどれ程規格外の化け物なのかを――。




面白かったなーって思ったら、下記の「ツギクル」「アルファポリス」のバーナーをクリックお願いします!


読了報告感覚で押してもらって構いませんので、よろしくお願いします。

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