プロローグ―極冠―
本日で、総ユニーク1万人突破しました!
ありがとうございます!
ここから三章スタートです!
そのエリアは、猛烈な嵐に見舞われていた。
“武の国”ムサシ所属のシノビである彼等のパーティーが訪れていたのは、樹海エリアと呼ばれる場所の極西端だ。
基本的に各種エリアの天気は特定のローテーションで変わっていく。
このエリアは本来なら、心地いい小春日和に包まれているはずだったが、今は違う。
台風を思わせるような、酷い強風を横殴りの雨。
これ以上ないほどの最悪な空模様に包まれていた。
「――くそ、なんだこの天気? こんなの聞いてないぞ?」
「運営、気まぐれにローテーション変えたんですかね?」
彼のパーティーメンバーである最年少の少年が、リーダーである彼にそう言った。
「いや、そんな重大なことを気まぐれに、それこそ予告なしに変更するわけがないだろ」
「ですよねー」
そんな彼のセリフをさも当然のことのように、軽く受け流す少年。
少年もさっきのことを本気で言ったわけでは無い。
彼的にはウェットにとんだジョークとして言ったつもりなのだ。
――もっとも、そんなジョークも生真面目な性質のリーダーには、つうじなかったが、それもまぁ、いつも通り。
そんな中、三人パーティーの紅一点である少女がリーダーに話しかける。
「――リーダー、どうする? 引き返す?」
その少女の進言に、リーダーは顎に手を当て少し考え込む。
数秒間の熟考の果て、リーダーはこう決断した。
「いったん引き返そう。不慮の事態が起きたらかなわん」
「りょーかい、リーダー!」
そう言って少年が、ウインドウを開き、このフリークエストからの撤退申請を開始しようとする。
その瞬間だった。
『RRRRRRGYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!!!』
三人のもとに、耳を劈く大咆哮が響いた。
「な、なんスカ今の!?」
そのあまりの迫力に少年は怯えた声を出す。
「わからん! 俺は少し様子を見に行ってくるから、お前たちは先に撤退してくれ!」
そう言って、リーダーはその咆哮がした方へ走り出した。
「あ、ちょ、リーダー!?」
慌てる少年の横で、無口でおとなしい少女がその顔をのぞき込む。
「な、なんスカ?」
「――ついていかないの?」
「い、今リーダー撤退しろっていったじゃないスカ!」
「――そう、私は行く」
そう言って少女は、リーダーが去っていった方向に向かって走り出す。
ここで困ったのは、残された少年だ。
「えぇー、あぁもうわかったスよ!! ジブンも行きまス!!」
結局、三人はそろって咆哮のした方角へ向かう。
そこで、彼らはあるモノを目撃する。
「な、なんだあれは――!?」
リーダーがその言葉を発した直後、彼らのパーティーは即座に消滅した。
これは、彼らがそのあまりの恐ろしさに即時撤退をしたとか、そういうものでは無論ない。
全員が漏れなく一瞬で、デスペナルティになったのだ。
そして、彼等を瞬く間にひき肉にしたソレは再び走りだす。
方角は、東。
向う先は、三国の中立地帯“影の国”。
□■□
その数時間後、運営からある告知が、全世界のシノビたちのもとに届けられた。
『一週間後、史上五回目のクロニクル・クエストが発令される。その内容は、中立地帯“影の国”にて発生するレイドボス討伐クエスト。その名は――』
しかして、そのシノビ世界の命運をわけるクエストの名が発表された。
『――【“極青冠”セイリュウ】討伐戦。』
本日から、しばらく試験的に1日2話投稿をしてみます。
投稿時間は、8時と16時を予定してます。




