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閑話休題その3 レナのお見舞い(後編)


□■□


 整った顔立ちに切れ長の瞳、夜のような黒く長い髪、ビジネススーツを着こなしたすらっとした体形の美女がそこにはいた。

 瞬間、玲奈の表情と身体は硬直する。

 無論、予想外の衝撃に思考だって止まっている。

 そんな玲奈を不審に思った美女が、麗奈に問いかける。


「もしかして、しーくんのお友達?」


「――しーくん!?」


 ここでまた、かわいらしい名前が出た。

 文脈からして、この女性のいう“しーくん”とやらは慎二のことを指すようだ。

 え、この二人どういう関係?っといった特大の疑問符が玲奈の頭に浮かぶ。

 ここは、探りを入れねば、と玲奈は一歩前に出る。


「わ、わたしは凧谷君の友達の天神玲奈です、貴方は――」


「え、貴女が天神さん!?」


 玲奈のその言葉は、女性の驚いた言葉に遮られた。

 言葉のニュアンスは、何故か喜んでいる風だった。


「あ、もしかしてお見舞いに来てくれたの? ありがとう、荷物は私が持つからさぁ、あがってあがって!」


「え、あ、その!?」


 突然の良反応に困惑する玲奈。

 その玲奈の反応に何かを察したらしい女性は、慌ててこう自己紹介した。


「私は凧谷一姫カイタニカズキ、慎二の姉よ。彼女とかじゃないから安心しなさい」



□■□


 そうやって案内された室内は、あまり物のない部屋で会った。

 肝心の慎二は、奥の寝室で寝ているらしい。


「ソファーにでも座ってて、今お茶出すから!」


「あ、はい」


 そういって一姫はパタパタと台所へ向かう。

 彼女のそんな後ろ姿を見て、玲奈は小さく嘆息する。


「まぁ、普通に考えればそうだよね」


 そう、一人暮らしの慎二が風邪を引けば家族がお見舞いに来るのは必然。

 つまるところ、玲奈の野望は最初から成立していなかったのだ。


「いやー、わざわざありがとうね」


「あ、いえいえ」


 そうやって二人分のお茶を運んできた一姫は、ソファーの前のテーブルにソレを置き、自分は椅子を向かい側にもってきて座った。


「まさか、しーくんがいつだったか話してくれた天神さんとやらが、こんなかわいい女の子だったとは――」


「え、私のことなんか言ってたんですか!?」


「うん、ほぼ悪態だったけど」


 そのことを聞いた玲奈はがっくりと肩を落とした。


「でも、しーくんって普段自分や周りのことを話さない子だから、それってすごいことだよ」


「そう、なんですか?」


「うん、多分口には出さないだけで、天神さんのこと大事に思ってるよ」


 その言葉を聞いた玲奈は、危うくにやけそうになる口元を必死でこらえた。

 多分、帰り道はスキップして帰るのだろう、そのくらい内心でうれしがった。


「それじゃ、あとは天神さんに任せて私は帰るね?」


「――え!?」


「仕事抜け出してきたから、どちらにしろ、そろそろ戻らなきゃって思ってたし。それに――」


 そういって一姫は、意味深な笑顔を浮かべる。


「そっちのほうが、お互いのため(・・・・・・)かなって」


「え、いやそれってどういう!?」


「まぁまぁ、それじゃね!」


 言うが早いと言わんばかりにさっさと帰り支度を済ませた一姫は、そそくさと部屋を出て行ってしまった。


「どうしよう」


 その場に残された玲奈は、しばらくの間立ち尽くした。



□■□


 しかし、その後の玲奈は欲望に身を任せるようなことは当然せず、まじめに慎二の看病をした。

 何故なら、所詮は玲奈。

 いたずらするような度胸なんてはじめからなかったのである。

 起きたら食べられるようにおかゆを作り、枕元にスポーツドリンクを置き、額の濡れタオルを交換したり。


「――一通りは終わったかな?」


 そういって、眠る慎二の額に手を置く。

 そこから伝わる体温は、いくらか下がってきているように思えた。


「これなら大丈夫かな」


 慎二の体調の回復を感じ取った玲奈は、そそくさと帰りじたくを始める。


「流石にいつまでもいたら迷惑だよね」


 そんなことをいって、最後に一目、眠る慎二を見つめる玲奈。

 眠る慎二の頭を優しくなでる。


「じゃあね、早く元気になりなさい」


 そういって、今度こそ玲奈はこの部屋を去っていった。










「――別に、いてくれてもよかったのにな」


 そして、明かりのない部屋にこんな声が響いたことは、誰も知らない。



次回より、コラボ番外編が始まります!


コラボ先は、俊郎先生の『ゲームで第二の人生を!~最強?チート?ユニークスキル無双で自由に楽しく生きていく!スローライフ風味のまったりのんびりハチャメチャライフ!?~』です‼︎


コロウのキャラクターたちもあちらの世界にお邪魔していますので、是非ご覧ください!


俊郎先生の作品は、軽快かつコミカルで非常に面白いので、これを機に俊郎先生のファンにもなってくれると嬉しいです‼︎


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