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ACT.33 ”青冠”は嗤う(Ⅰ)


▽▲▽


「“予兆”!? それに名前が変わって――!?」


 いまだに状況の理解ができていないカイトを他所に、天から地を貫く雷がやむ。

 先ほどまで【“砲弾”の鉛兎】が立っていた場所に立っていたのは、奴とは似ても似つかない姿の妖魔だった。

 顔や足と言った部分は兎だが、全体のシルエットは限りなく人間に近い怪人のようないでたち。

 体長は2m以下で、やや猫背。そしてその両腕は異様に長く、地面にむけてだらんと力なく垂れ下がっている。

 体毛は翡翠色でその瞳は深紅、そしてどこから持ってきたのか、その手には巨大な包丁のような大剣があった。


 そしてカイトは目の前の妖魔から、プレッシャーのようなものをひしひしと感じた。

 カイトは思った。

 アレはまずい、あれは現段階では対処できないやべー奴だと。


「いったん引――」


 カイトが二人にそう言いかけたその時だった。

 一瞬にして奴――【“青冠”の嶺兎】の姿が掻き消えた。

 そして背後に殺気。

 咄嗟に振りむこうとしたとき、横殴りの衝撃を受けてカイトは吹き飛ばされた。

 背後に瞬時に移動した【“青冠”の嶺兎】が、その長い腕で殴りつけたのだ。


「がはっ!」


 地面を一回もバウンドせずに飛ばされたその先。

 その先にも、奴がいた。


「な、なにがっ!?」


 【土遁:空蝉】のような瞬間移動の類ではない。

 瞬間移動の術を組んでいる仕草は一切なかったからだ。

 ならばこれは、このカラクリは一つしかない。

 奴は、素のステータスで、瞬間移動と思えるほどに素早く移動しているのだ。


 そして奴は、迎えた先でその大包丁を大きく振り上げる。

 まずいとカイトが思ったのもつかの間、瞬時にカイトの身体は、上半身と下半身に両断された。


「――【奥義:黄泉ノ凱旋者(イザナギ)】!!」


 致命傷を受けたカイトは瞬時に奥義を発動させ、自らの身体を修復させる。


「カイト!? こんのぉおおおおお!!」


 その様子を見たレナが、力任せに【“青冠”の嶺兎】に向けて持っていた大盾をブーメランのように投擲する。

 しかし、それも遅いというように、奴はまた掻き消えるような動きでそれを躱す。


「――カイト! 一瞬でもいいから、奴の動き止めて!!」


「了解だ!!――【火遁:多重分身】!!」


 レナの声にこたえるように、カイトは術を唱えた。

 瞬間、十二人に分身したカイトが、順に【“青冠”の嶺兎】に襲い掛かる。


「ナギ! 攻撃術式を組んでおいてくれ!!」


「は、はい!」


 次々に、【“青冠”の嶺兎】に襲い掛かりながらも、ナギにそう指示を飛ばすカイトは、とうとう奴の右腕を捕まえた。


「――捉えた!」


「こっちも!」


 カイトがその右手を掴み、一瞬奴の動きが止まった隙に、レナは鎖鎌で【暗器術:銀蛇鎖縛】を仕掛け、【“青冠”の嶺兎】の左腕を拘束した。


『―――――。』


 こうして、二人の連携によって【“青冠”の嶺兎】の動きを捉えることに成功した。 

 あとは――。


「ナギ、今だ! ぶちかませ!!」


 ナギが、火力技をぶちかますだけになった。


 ――だが、ナギの様子がおかしい。


「あっ、あ、あああああっ!」


 ナギの顔からはあっという間に血の気が失せ、口からは嗚咽が漏れ、その手は震えていた。

 

「どうした!?」



「ご、ごめんなさい」


 心配したカイトの問いに、彼女は謝罪で答える。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」


 その口からは、濁流の如く謝罪の言葉が――「ごめんなさい」が溢れ出す。


「な、ナギちゃん?」



()わたしには(・・・・・)無理です(・・・・)――」


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