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ACT.26 気難しき銀光(Ⅴ)


▽▲▽



「――は、初めまして、ナギといいます。あ、あのもしよろしければ、条件付きではありますが、狐系妖魔の手懐け方お教えしましょうか?」



「え! いいの!?」


 その言葉に喜ぶレナだが、一方カイトは訝し気な表情を浮かべる。

 彼としては、彼女が前置きした、条件というものが引っ掛かっていた。


「――なぁ、その条件ってのを先に聞かせてもらえないか? 話を受けるか否かは、それを聞いてから決めたい」


 この純朴そうな少女が、何かしら法外な報酬を要求するとは思えないが、一応確認を取る。

 すると少女――ナギは、はっとした表情を浮かべてこういった。


「す、すいません! まずそこを言うべきでしたね、ごめんなさい!」


 そういってぺこぺこと頭を下げる少女。

 悪意のある条件を出す気が無いのは、もうこの段階で分かったような気がするし、なんなら幼気な少女にここまで頭下げられるというのは、カイト自身が悪者になった気がして居心地が悪かった。

 しかしながら、その条件とやらを口に出すのが恥ずかしいのか、口をもごもごさせて言い出せないナギ。

 だが、意を決したという表情で、顔を真っ赤にしながらこう言った。


「じょ、条件というのはですね、その――わ、わたしを仲間に入れてほしいんです!」


「「え?」」


 あまりにも想定外な条件にカイトとレナの声が重なる。

 その二人のリアクションをどう受取ったのか、ナギは続けて理由を話す。


「じ、実は私まだちゃんとパーティープレイができてなくて、いつかキチンとしたいなって思っていたんですけど、なかなか声をかけるきっかけが掴めなくて――」


「あー、なるほど。それで困っている俺たちに、交換条件というきっかけで仲間に入れてもらいたい――と?」


「――はい」


 俯きながら、消え入りそうな声で答えるナギ。


「わ、我ながらこんな弱みに付け込むようなことをして申し訳ないんですが――」


「――え、全然いいよね? カイトもそう思うでしょ?」


 消え入りそうなその贖罪の言葉をレナの声が打消す。


「あぁ、むしろウェルカムだ」


「え、え?」


 戸惑うナギに、こうカイトは続ける。


「俺はまだこの世界に詳しくないから、分かる人が身近にいれば安心だ。うちのポンコツ(レナ)が、俺よりやってるはずなのにちょっとアレだから、むしろ、こちらからお願いしたい」


「――ん? ちょっと待って、今変なルビ振られなかった? ポンコツの上に私の名前振られなかった?」


「自覚あるんじゃないか、ポンコツ(レナ)


「あーまた言った!!」


「――ふふっ」


 そんないつもの二人のやり取りに、いつしか笑顔になるナ。


「――やっと笑ったな」


「え?」


「いや、ずっと緊張してるのか、顔がこわばっていたからさ」


「もしかして、今のはわざと――?」


 今のコントのような会話は、自分の緊張をほぐすためのモノだったのかと問うナギ。


「いや、本心」


「ちょ、カイト!?」


「ふふふっ」


 その問いをバッサリと斬るカイトにまた自然と笑みがこぼれるナギ。


「むしろ、こんな俺たちでいいのか?」


 こんなことをして、逆に幻滅されないかと不意に心配になったカイトが聞く。

 するとナギは、満面の笑みでこう答えた。


「はい! よろしくお願いします!!」


▽▲▽


「――じゃあ、まずナギちゃんがなにをどこまで出来るか見せて? ソレによって、どう私たちが連携できるか考えるから」


 話が落ち着いた所で、仲間としてまず連携を取るのに必要な実力の把握をしなければということになった。

 その場をしばらく離れ、三人で歩いていくと、遠くに妖魔の群れが見えた。

 これ幸いと、レナの話をカイトが引き継ぐ。


「じゃあ、試しにあそこにいる妖魔――緑黄猿の群れがあるから、俺とレナで一匹残して他を片づけるから、その一匹を倒してみてくれ」


 そういって、クナイを構えて走りだそうとするカイトを、ナギが止める。


「あ、このままで大丈夫です!」


「――ん?」


 困惑するカイトとレナをよそに、ナギはいつも道理という手慣れた様子で印を結んで準備を始めた。


「【口寄せ:カナタ&コナタ】」


 彼女がそう唱えると、彼女の両隣に光が発生し、そこから二匹の狐型妖魔が現れた。

 右隣には金の体毛の赤目の狐、左隣には同じく金の体毛の緑目の狐。


 そして彼女は、自身の愛用の武器である錫杖を装備しながら、自身の使い魔に的確な指示を送る。


「カナタ、コナタ、【呼声強化ストレングスハウル】。」


『『KOOOONKOOOOON――』』


 妖狐たちは、その指示通りに妖魔独自の術式、妖術を唱え始める。

 右手で錫杖を構え、先を緑黄猿の群れに向けながらも、空いた左手は正確にかつ高速で複雑な印を結んでいく。

 その横顔には、先ほどまでの気弱そうな少女の面影はない。

 凛々しく前を向いた堂々たるその姿は、歴戦のツワモノといっても過言ではなかった。

 そして、その印の構成、そして妖狐たちの妖術による強化が終わり、敵を見据えた錫杖の先端が青白い雷が纏う。



「――行きます、【木遁:雷神戦域・白夜行】!!」



 次の瞬間、周囲の景色が消失するほどの激しい光が錫杖から放たれる。


 その光は、瞬く間という言葉すらおこがましいほどの速さで、緑黄猿の群れを飲み込み、跡形もなく消し去った。


 後に残ったのは、放射状に焼けただれた草原の跡だけであった。


「「――――――――。」」


 絶句するカイトとレナ。

 しかし当の本人であるナギは、その惨状をさも当たり前のように受け流している。


「あ、そういえば、フレンドコードの交換がまだでしたね」


 今だ衝撃から立ち直れていないカイトたちの様子には気づいていない彼女は、何気ない感じで、ポンとフレンドコードをカイトたちに送る。


 そこにはこう書いてあった。



『プレイヤー名:ナギ ランク:上忍ノ三(・・・・) 職業:高位青忍ハイ・サンダー 副業:口寄士サモナー




風や雷はこのゲームでは、木遁に含まれます。

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