ACT.23 気難しき銀光(Ⅱ)
「――いくぞ、【口寄せ:ギンコ】!」
カイトがそう唱えて、術を発動させる。
すると、カイトの目の前に光が集まり、その光の中から一匹の獣が姿を現した。
月光を束ねた様な白銀の体毛、目元に朱い隈取、そして紫水晶のような瞳を持った――白狐だった。
「わー、キレイ! かわいい!」
醜いガマガエルを想像していたレナは、予想外のその姿に歓声を上げる。
カイト自身も、少々面食らった。
「あのおっさん、意外とセンスはあるんだな」
そういっておもむろに白狐――ギンコに近づいたカイトは、その場でしゃがみ込み、頭を撫でようと手を伸ばした。
だが、その瞬間、バシッという音と共に、その手は叩き落される。
その手を叩き落としたのはほかでもない、ギンコの前足だった。
「――ん?」
そしてギンコは、ジトっとした視線をカイトに送る。
その目はどこか見下しているかのようだった。
しかし、カイトはその視線の意味を全く理解できずに困惑し、結局さっきと同じように頭に手を伸ばす。
そしてまたもやバシッとはじかれる手。
今度のギンコは、顎をやや上にあげ、それでいて目線は下げて前を見るという完全な侮蔑、蔑みの表情を浮かべる。
ここにきて、ようやくカイトも気が付いた。
――コイツ、舐めていやがる。
そう気が付いた瞬間、ムカッと来たが、すぐに自分に言い聞かせて落ち着ける。
――大丈夫、コイツはAI。機械がなにしようともソレに怒るのは無意味だ。そんなのむしゃくしゃしてコントローラーぶん投げる小学生と同じだ。
「いや、何が気に食わないかわかんないけどさ、これから仲良くやろうぜ?」
カイトがそうやってギンコに話しかけながら、その頭に触れようとする――その時。
がぶっ!
「いってぇ!?」
ギンコは思いっきりカイトに噛みついた。
そして飛びのいたカイトを見て、前足で口元を抑えてくっくっくと嗤うおまけ付きで。
その姿に、カイトは切れた。
「野郎! ぶっ殺してやる!!」
クナイ片手に襲い掛かろうとするカイトを、レナが羽交い絞めにして止める。
「待ってカイト、ねぇ待って落ち着いて!」
「落ち着けるか! アイツ俺のことコケにしやがって!」
「して無いよ!? 動物相手なんだから落ち着いて!」
「動物じゃねぇ、あれはAIだ!!」
「なら尚更だよ!? 今のカイトはむしゃくしゃしてコントローラーぶん投げる小学生と同じだよ!?」
「うがぁあああああ!!」
▽▲▽
数分後、ようやく冷静さを取り戻したカイト。
「――で、そもそもコイツは何ができるんだ?」
そして本来、このギンコはどういうことのできる妖魔なのかと考え始めた。
妖魔だって一概に戦闘一辺倒な種類だけではない。
忍術に類似した独自の術【妖術】を使ってサポートをこなすタイプだって存在するのだ。
ギンコだって、未だ直接戦闘型なのかサポート型なのかがわからないから、運用法がわからない。
「――まぁ、それ以前に言うこと聞くかもわからないんだが」
「うーん、流石にソレは聞くと思うけどな?」
カイトの疑問にレナが異を唱える。
「その心は?」
「だって、そもそもこれってゲームだよ? 言うこと聞かない味方NPCとかありえなくない?」
「確かに」
リアルすぎる感覚で、最早ゲームという感覚が半分抜けていたが、そうこれはあくまでゲーム――娯楽品だ。
意図してプレイヤーを極端に困らせるような仕様は、存在しない筈。
「よし、わかった。じゃあ命令してみよう」
そう言って、ギンコに近づいたカイトは、この草原エリアの遠くに見える自動ポップした妖魔を指さしながら、こう命令した。
「あそこにいる妖魔を倒してみてくれ、ただし無理そうなら無理せず帰ってくること」
カイトのその命令に、一瞬嫌そうな顔をしたギンコは、それでも渋々といった体で駆け出した。
「じゃあ、お手並み拝見っと」
そういって高みの見物を決め込むカイトとレナだが、事態は思わぬ方向へ突き進むこととなる。
まず、一体の樹木型妖魔に飛び掛かって攻撃を仕掛けたギンコ。
その攻撃によってターゲットをギンコに定めたその妖魔がギンコに襲い掛かる。
――するとギンコは、一目散に逃げだした。
「ん?」
そして逃げて逃げてカイトの可視範囲外まで逃げて、妖魔と共に姿を消した。
すぐにまた戻ってくるかと考えたカイトたちはそのまま待つが、そのまま十分が経過した。
「ねぇカイト、ちょっと様子おかしくない?」
「あぁ、なんかまずいことが起こって――ん?」
助けに行くべきかと考え出したその時、ギンコが再び可視範囲に戻ってきた。
――大量の妖魔を引きつれて。
「モンスタートレイン!?」
そう、ギンコは他の大量の妖魔のターゲットになった状態でこちらに向かって帰ってきたのだ。
そして、そのギンコの顔はこころなしか嗤っているようにも見える。
「アイツ、ワザとやりやがったな!?」
ギンコは、カイトの命令“あそこにいる妖魔を倒してみてくれ、ただし無理そうなら無理せず帰ってくること”の解釈をゆがめて悪用したのだ。
「か、カイトどうしよう!」
「逃げるに決まってるだろ!? 幸い距離があるから逃げ切れる筈!!」
しかし、ここでカイトたちはあることを失念していた。
それは、ギンコの知能の高さである。
実はその時、ギンコはただ闇雲に妖魔を引き連れてきたのではない。
ギンコが意図的に引き連れて来たのは、全てカイトたちよりAGIの高い妖魔たちなのだ。
そしてまた、ギンコのAGIもカイトより上である。
――そのあとに、どんな悲劇が待っているかなんて、火を見るより明らかだった。
今回の投稿日で、ちょうど連載開始一カ月になりました。
本日累計PV一万超えて、一時ではありましたが日間ランキング(VR部門)でも最高順位29位とか行ったりして、自分でもこの一カ月は凄く心に残る素晴らしい日々でした。
これからもより一層精進していきますので、応援よろしくお願いします!
あ、あと、これを記念にとある企画をゆるーくはじめました。
詳しくは下記を参照下さい。
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