ACT.19 凡人の牙(Ⅱ)
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それはジライヤ杯開幕前の控室でのことだ。
「――ねぇ、カイト。私、もしかしたらスズハヤの攻略法わかったかもしれない」
「は!?」
レナの突然の発言に驚くカイト。
それもそのはず。
ここしばらくカイトが考え続けてもわからなかったその答えに、まさかレナがたどり着くとは。
「彼の攻撃ってさ、おそらく二枚の手裏剣の操作じゃん? じゃあさ、三回目の攻撃ってどうするんだろうね?」
「そりゃ、一位枚目の手裏剣を再度操作して――」
そこまで言って、カイトははたと気が付く。
「そう、そこまですぐに切り返して操作できるのかなって」
あの絡繰を屠った時もそうだ。
同じ手裏剣で二撃目を与えるとき、大きく弧を描いて戻ってきた。
つまり、操作できる軌道にも限度があるのだ。
それを踏まえて考えるならば――
「一枚目と二枚目を躱したあとが、隙になる」
確かに、これは攻略の明確な糸口にほかならない。
カイトが感謝の言葉を口にしようとしたその時だ。
「あと、もう一つ案があるんだけど――」
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「はぁ、はぁ。僕の奥義に弱点だって――?」
スズハヤは、自身の肩からクナイを引き抜きながらそう言う。
その顔からは、早くも余裕が薄れつつあった。
「そんなわけがない。僕は最強なんだ!」
そう叫んで再び二枚の手裏剣をカイトに差し向ける。
高速で迫るそれらを、AGIと自前の動体視力に任せて一枚目を避ける。
それと同時に走り出し、二枚目と床の隙間に滑り込むようにして躱し、更に接敵する。
右手のクナイでスズハヤを切りつけようとした瞬間、スズハヤが抜刀した小刀がソレを防ぐ。
「そして、これもお前の弱点だ」
「な、にを?」
鍔迫り合いをしながら、至近距離でにらみあう2人。
「お前の得物がデカすぎる故に、自分も傷つけるこの至近距離じゃ使えねぇだろ!!」
「か、【火遁:狐火】!」
即座にその超至近距離で空いていた左手で火遁:狐火をスズハヤは放つ。
だが、カイトはそれを避けない。
腹部に火球を喰らうものの、それでも鍔迫り合いを止めなかった。
それは、スズハヤが距離を開けようとして牽制で放ったモノだとわかっていたから。
だからこそ、カイトはあえて受けてその絶好の距離を保ち続けることを選んだ。
そして左手にもクナイを持ったカイトが攻撃を再開する。
両手のクナイを合わせた攻撃に加え、蹴撃を混ぜ合わせて連続攻撃を仕掛ける。
「ぐ、ぅ!?」
その攻撃を小刀でなんとか防ぐスズハヤだが、一瞬の隙がカイトの目についた。
「――そこだ」
カイトはすかさず体術:掌破を、小刀を持つ右手に叩き込む。
「しまっ!」
予想外の攻撃を受け、スズハヤは小刀を落とす。
「今!」
その瞬間をカイトは見逃さない。
クナイをスズハヤの首元に振り下ろそうと、右手を振り上げた。
小刀を落としたスズハヤに防御は不能、この距離で回避は不可能。
カイトは勝利を確信した。
――だが、この時点でカイトは甘く見すぎていた。
スズハヤ自身のことも、彼の勝利への執着がどれほどのものかも。
次の瞬間だった。
「――な?」
カイトの背後から飛来した手裏剣が、スズハヤの左肩ごと――カイトの右腕を切断した。
「っぁああああああ!!」
そしてあろうことか、スズハヤは使い物にならなくなった左腕を残った右腕で引きちぎり、その左腕でカイトの顔面を思いっきり殴りつけた。
スズハヤは思い知る。
自身が求めていたのは好敵手であって、敗北ではないことに。
そして、ソレを掴み取るために手段なんて選んでいられないということに。
「――!?」
突然のことに頭が追いつかないカイトをしり目に殴打は続く。
「僕は! 負ける! なんて! 許されないんだぁぁああああああ!!!!」
その気迫、剣幕に圧倒されるカイト。
「【土遁:土破槌】!!」
そして最後に地面から現れた巨大な破城槌がカイトの腹部を殴りつけ、吹き飛ばす。
「――がはっ」
そして吹き飛ばされた先に待ち受けるのは、二枚の凶刃。
その凶刃が、カイトの身体に容赦なく襲い掛かった――。
感想評価等されると作者は、ゼロシステム発動したように我を失って執筆ができるので、やってもいーよって方はお願いします!
作中の疑問質問などがあれば答えますので、よろしくお願いします!




