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CO-ROU・THE・CHRONICLE〜虎狼忍術史伝〜  作者: 宇奈木 ユラ
第一章”虎狼”の世界
19/81

ACT.17 戦の幕開け、十五の爪牙(Ⅴ)


▽▲▽


「くっ」


 大鎌による斬撃が放たれる刹那、カイトはとっさに後ろへ飛ぶ。

 その結果、大鎌による攻撃はカイトの身体を浅く切りつけるだけにとどまった。


「ちっ、勘のいい奴!」


 当たれば一撃必殺であったその攻撃を間一髪で避けられたことに舌打ちをするプレイヤー。


「じゃあ、次の手だ、隠遁:影住!」


 そういうと、そのプレイヤーは術を発動させ再び影の中に飛び込んだ。


「拙僧さん、影だ! 影から出てくるぞ!」


 先ほどのダメージから吹き飛ばされ、起き上がるクロスにカイトは注意を促す。

 隠遁:影住は、たしか影の中を自由に移動する術。

 一見強力であるが、しかし影からしか入出ができないという弱点がある。

 つまり、出現場所がある程度絞り込める。


「ようはもぐら叩きだ! 影の場所をマークして出て着次第、瞬発力で潰せ!」


「御意!」


 そうして構える2人――だが、事はそう易々と運ばなかった。


『――“奥義:空ニ黒点地上ニ闇(クウボウ)”』



 どこからか奴の声がしたその瞬間、水面に波紋が広がるようにして、その部屋の床全てが影に沈んだ。

 それが意味するものとは――


「まずい、全方位からくるぞ!」


「なん――がっ!?」


 カイトが注意を促した瞬間、死角から現れた奴が、クロスを切りつけた。


「そこ!」


 クロス攻撃と共に出現した奴に向かって、カイトはクナイを投擲するが、その攻撃が届くより先に影の海に消える。


「大丈夫か!」


 そういってクロスに駆け寄るカイト。


「えぇ、拙僧はカイト殿とは違いEDN型なのでまだ平気です」


 クロスはそう言って態勢を立て直す。


「それならいいが――くっ」


 その会話の隙を狙ってまたも奴は攻撃を仕掛けるが、今度はカイトがクナイではじき返す。

 そしてカウンターを仕掛けようとした瞬間のに、また影に潜られた。


「くそ、埒が明かない」


「まるで鮫か鯱の狩りみたいですな」


「違いない」


 背中合わせで周囲を警戒する2人。

 そこでクロスは少し考え込むと、カイトに向けてこういった。


「カイト殿、拙僧なら何とかでできるやもしれません――ですから、貴殿はこの隙に天守閣へ」


「い、いやしかし!」


「拙僧なら大丈夫です。ですので、奴が次に攻撃してきたタイミングで、階段へ走ってください」


 そういってクロスは胸を叩く。

 頼りがいのあるその姿に、カイトは思わずうなずく。


「――なにをごちゃごちゃと!!」


 会話の隙をついて、例のプレイヤーが影の海からカイトに襲い掛かる。


「させませぬぞ!」


 カイトに向かって振るわれたその凶刃を、寸前のところでクロスが柄を掴み取り防ぐ。


「カイト殿、今です!」


「あぁ!」


 そういってカイトは一気に走り出す。

 影の海を疾走し、階段までたどり着いたカイトは背後を一瞬だけ振り返る。


「――。」


 しかし、ここで言葉をかけるのは無粋かとカイトは思った。

 信頼に言葉は不要――だから、カイトは無言で階段を駆け上っていった。


▽▲▽


「よし、カイト殿は無事上階へ進んだか」


「こ、この離せこのデカブツ!」


 カイトが去ったことを見届けたクロスは、目の前のプレイヤーに再度向き直る。

 そして、大鎌を離させようともがく彼の動きを右手一本で防ぐ。

 高いSTRを持つクロスだからこその技だ。


「ならば、こちらもやるべきことを為すまで――ふん!」


 そういって彼は、捕まえていたその凶刃を、自分の右肩に深々と差し込んだ。


「な!?」


「――これで容易には逃げられまい」


 差し込んだままの凶刃は、そのまま断続的にクロスのHPを削っていく。

 ただでさえ先の戦闘で壁をやり、HPが少なかったクロスにとってはそれは、自殺行為に等しい。

 何故、彼はカイトを逃がすのに此処までしたのか?

 クロスがここまでする理由が2つあった。

 一つが、見ず知らずの自分に手を差し伸べてくれたお礼。

 それは、カイトとスズハヤが対等の勝負ができる場所を整えることだと彼は思ってた。

 この大会に出場を決めたのも、ひとえに彼を手助けするため。

 その目的は、この段階で果たされた。

 そして最後の一つは――


「――すみません、カイト殿。貴殿には、拙僧の奥義を知らせたくなかった」


 そう、カイトの目から、自身の奥義を隠す為。

 未だに奥義を発現していないカイトへの配慮――というわけではない。

 その理由は、プレイヤーなら、この世界ゲームに生きるシノビならば当然の理由。


「いつか貴殿とも全力で戦ってみたい――! 故に今回は隠させていただく!」


「お、お前何をひとりで!」


 そこで、彼は今一度目の前のプレイヤーに目を向ける。


「すまない、無視してたわけではないのだが」


 クロスは彼にむかって一言侘びをする。

 そして、こう言い放った。



「それでは、共に地獄へ参ろうぞ――奥義:“■■■□■■□■□□(オオタケマル)“!」



 その瞬間、その階層からは、二つのアイコンが消滅した。


▽▲▽



 早くも、この大会で残る参加者は2人。

 片や、強力な奥義をもって、嵐のごとく猛威を振るうシノビ・スズハヤ。

 片や、奥義を持たず、センスと知略で立ち向かうシノビ・カイト。

 ――決戦は、もうすぐである。




感想評価等されると作者はハシュマル戦の時のバルバトス並に暴走した執筆ができるので、やってもいーよって方はお願いします!

作中の疑問質問などがあれば答えますので、よろしくお願いします!

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