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ウァンパイア物語2  作者: 衣月美優
7/8

決意


「女王様、どこへ行かれるのです?その人間、始末するのではなかったのですか?それに、これから人間を襲うのではなかったのですか?女王様が命令してくださらないと、私たち下の者は何もできないのですが」

 俺と由美がウァンパイアの巣を出るために走っていると、目の前にウァンパイアが現れた。

 そのウァンパイアは由美に詰め寄る。

「人間は襲わない。彼も殺すつもりはない」

 由美はきっぱりと言い放った。

「女王様、まさかとは思いますが・・・我々を裏切るおつもりですか?」

 ウァンパイアは由美を睨みつけて言う。

「あんなにMのことを目の敵にしていたのに、ご自分も同じことをなさるこですか?いや、女王様の場合、M以上の罪になりますよ、立場上」

「F、私はどんな罰でもうける。だから、今はここを通して」

 Fと呼ばれたウァンパイアは大きく息を吐き出し、言った。

「そういうわけにはいきません。それに、たとえ私が通しても、ここにいる他の者たちが通しませんよ」

 その言葉通り、ウァンパイアたちが次々に姿を現した。

 俺たちはすっかりウァンパイアに囲まれてしまった。

 由美は小さく舌打ちをして俺に言った。

「一気に抜けるよ。私がウァンパイアたちを引き付けるから」

 そして、俺と由美は駆け出した。

「その道、まっすぐ。次の角を右に曲がって」

 俺はうしろでウァンパイアの相手をしながら俺のあとを追い、指示する。

「その先まっすぐ行ったら人間界への出口よ」

 俺は言われた通りに進んでいく。

 出口に近づいた頃、目の前にウァンパイアが現れ、俺の首筋に噛みついた。

「うわっ!?」

 俺の悲鳴に由美は急いでおれのそばにやって来た。

「まさとくん!」

 由美は俺に噛みついてきたウァンパイアを突き飛ばし、倒れた俺を受け止めた。

 俺は一気に血を大量に吸われたせいで貧血を起こしたようで、気を失ってしまった。

「まさとくん!しっかりして!まさとくん!」

 由美の声は俺には届かなかった。




 私は研究所でまさとたちが帰ってくるのを待っていた。

 すると、突如まさとを抱えたYが現れて言った。

「彼、血を吸われて気を失ったの。休ませてあげて。私は巣に戻る」

 私はYの姿を見て、彼女を止めた。

「ちょっと待って!あなた、傷だらけじゃない・・・!何も巣に戻らなくったって────・・・」

「戻らなくちゃ、ウァンパイアたちがすぐにここにやって来る。あなたたちに迷惑はかけられないわ」

 Yは躊躇いもなく言った。

「まさとくんには、悪いことをしたわ・・・あなたにも。これは、あなたの胸の中だけに留めておいてほしいのだけど・・・いつか必ず、私はここに戻ってくるわ。あとは頼んだわよ、M」

 そうYは言うと、消え去ってしまった。ウァンパイアの巣へと消えていったのだろう。

「Y・・・絶対に、戻ってきてよ」

 私は祈りを込めて、呟いた。


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