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ウァンパイア物語2  作者: 衣月美優
2/8

実力


「ここが俺の家だ」

 そう言って、俺は玄関の扉を開けた。

「ただいま」

「あら、おかえり。・・・そちらは?」

 出てきたのは母さんだ。

「こいつは小野寺 由美。えっと・・・俺の友達の従姉妹なんだ」

 俺は由美のことを怪しまれないように説明した。

 母さんは笑って

「はじめまして、まさとの母です。今日はどうしたの?」

 と、訊いてきた。

 すると、由美が切羽詰まった様子で話した。

「実は私、ウァンパイアに命を狙われていて・・・そしたら、まさとくんのお母さんがウァンパイアの研究をしているって聞いて、それで・・・力になってもらいたくて!」

 母さんは驚いた様子で目を見開いた。

「それは大変ね。でももう大丈夫よ。私も協力するわ。とりあえず、上がってちょうだい。しばらくうちにいる方がいいわ。部屋も用意しておくわね」

 その母さんの言葉に、由美は嬉しそうに

「ほ、本当ですか?ありがとうございます!」

 と、お礼を言っていた。

 だが、由美が母さんの横を通ったとき、ニヤリと笑っていたことに俺は気付かなかった。

 母さんがその顔を見逃さず、あることに気付いたということにも────・・・




 夕食を食べたあと。

「由美ちゃん、お部屋の準備ができたからちょっと来てくれる?」

 母さんが由美を呼んだ。

「あ、はい」

 由美は返事をして母さんのあとについていった。

「そういえば、父さんはまだ帰らないの?」

 俺はリビングを出ようとしている母さんに尋ねた。

「仕事仲間と飲んでくるから遅くなるって」

 と母さんは答えて、リビングを出ていった。


「ここがあなたの部屋よ」

 と言って、母さんは玄関のすぐそばの部屋のドアを開けた。

 母さんと由美は部屋の中に入り、そして母さんがドアを閉めた。

 バタン・・・

 ドアの閉まる音が合図となり、母さんは顔を強ばらせ、由美はニヤリと笑った。

「────・・・それで?何の用なの?ウァンパイアに狙われているなんて嘘なんでしょう、Y」

 母さんは厳しい口調で訊いた。

 由美はクスりと笑って

「たったあれだけで私がYだと気づくなんてさすがね、M。今は奏井 海花だったかしら?」

 と、言った。

 母さんは冷静に

「姿、形は変えられても、ウァンパイアとしての波動は変えられない・・・そんなこと、エリートウァンパイアのあなたなら知っているでしょう?」

 と、答えた。

「えぇ、そうね。私は今、ウァンパイアの女王だし当然よね。“氷の女王”・・・今の私はそう呼ばれているわ。それより、何の用かですって?そんなの考えればわかるでしょう?」

 由美は挑発的な口調で言った。

 母さんは眉を寄せ、少しの沈黙のあと口を開いた。

「────・・・狙いは私?」

 その瞬間、由美の目の色が変わった。

「いいえ、あなたとあなたの家族全員よ!ウァンパイアだったくせに、人間に恋をするなんてありえないわ!────・・・まぁ、自分のやったことがどれだけ愚かだったか、よーく考えることね。さぁ、もうこの話しはいいでしょう?しばらく世話になるわよ。せいぜい自分の回りの人を守れるように努力したら?無理だろうけど・・・」

 そう言って、由美は母さんを部屋から追い出した。

 母さんは何も言い返すことができなかった。

 そして俺は、そんな二人のやりとりを聞くことも知ることもなかった。




 次の日。俺は由美の服を買うために、由美と出かけることにした。

「まさと、ちょっと・・・」

 出掛けようとしている俺を母さんが引き止めた。

 俺は黙って母さんの方へ行った。

「何?母さん。」

 俺は母さんの正面に立ち、訊いた。

「由美ちゃんにはあまり関わらないほうがいいわ。ウァンパイアに狙われているようだし・・・彼女のことは母さんに任せて、まさとはあまり関わらないでちょうだい」

 母さんは、最初は躊躇うように言ったが、最後には厳しく言った。

 俺は母さんの言っている意味がわからなかった。

 あとで考えたら忠告だったのかもしれない。

 だけど、両親を快く思っていなかったこの頃の俺は、母さんを睨みつけ

「そんなこと、母さんに関係ないだろ。母さんに俺の交友関係をとやかく言われる筋合いはない!」

 と言って、家を出ていった。

「まさと・・・!」

 母さんが引き止めようとしたが、俺は無視した。


「どうした?まさとが何か怒ってたみたいだけど・・・」

 リビングにいた父さんが母さんに訊いた。

「実は、あの由美って子はウァンパイアの現女王“Y”なの。あまり関わってほしくなくてまさとに声をかけたんだけど・・・怒ってその子と出かけていったのよ」

 母さんは困ったように言った。

「そうか・・・確かにそれは危なそうだな。でも、まさとは反抗期だしなぁ。様子を見るしかないな」

 父さんの言葉に母さんは、そうね、と言うように頷いた。

 当然、俺はそんなやり取りを知ることはなかった。




 しばらくは奏井 海花も黙っているだろう。私と奏井 海花では、実力の差がありすぎる。

 ウァンパイアの力を持っているならまだしも、ただの人間がウァンパイアに勝てるわけがないのだから────・・・


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